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事業育成の実際23

●ベッドタウンはもはや「ベッド」タウンではない


私たちは様々な街の商圏に出店をしています。
全て合わせると25箇所以上の出店場所を確保しており、安定した経営を出来る環境を整えつつありました。
しかし、現在その25箇所の約半分の催事出店場所で異変が起きています。
●場所によって顧客層そのものが変化していること。
●顧客層の生活パターンが変化していること。
●街の機能が変化していること。
●ハブ駅の機能と導線が変化していること。
●駅周辺での顧客の行動パターンが変化していること。

これらが異変の原因であると考えています。

●顧客層の変化

出店場所によって性格は異なりますが、
●都市中央ハブターミナル型
●都市中央地下街型
●都市中央生活密着特化型
●遠隔小分岐ハブステーション型
●居住地到着ステーション型
●地域ショッピングモール型

などに分けられると考えています。
かつて市場を支えてきた「団塊の世代」は高齢化を迎え購買力を失っています。
今、市場を支えているユーザー層はどういった人たちなのでしょうか?
これまではより多くのユーザー層がいる都市中央へと目指し多くの事業者が出店してきました。
でも、現在ではどうでしょう?
例えば都市の中央部にある地下街。
最近地下街を歩いたことがあるでしょうか?
雨が降って地下街に逃げ込んでも地下街には居酒屋が並び、その居酒屋街も20時を過ぎると人気がなくなる。地下街を歩くとシャッターが閉まった開きテナントが目立ち、人々は移動通路として使っている。そう感じたことはありませんか?

次に郊外に広大な土地を使って造られた大型ショッピングモール。
テントは大型化し1階には雑貨やインテリア用品の同業者が何件も並び、2階で唯一人影が見られるのはフードコート。
しかしこのフードコートに入っている店舗はほとんどのフードコートで同じ店舗構成にはなっていませんか?
3階にある映画館では満席になることはなく、ほとんどのユーザーはネット配信を観ているのではないでしょうか?

かつて溢れるほどいた人々はどこに消えてしまったのでしょうか?
良く業績不振の原因をこの国の少子高齢化のせいにしている事業者がいますが、現在でも購買意欲のある顧客層は一定数以上はいると考えています。
かつての都市中央部や大型ショッピングモールで高い売り上げを経験し成長してきた企業は、その頃の経験にとらわれ以前のマーケットを梃入れすれば顧客が戻ってくると考えているようです。しかしそれらの購買層の行動パターンが変化し以前マーケットであった場所がマーケットでは無くなっていることに気づかなくては現在の顧客層をとらえることはできません。

多くの人々の行動パターンが変化したのはやはり「新型コロナウイルス感染症」の蔓延によるところが多いと考えます。
一つは都市中央に集まって仕事をしなくては生産性が上がらない、という呪縛から解き放たれたこと。分散していてもインターネットを使うことによって充分に生産性を維持できる職種があることに気づいたこと。
このことによりいわゆる「仕事場」の選択肢は大きく広がりました。
満員電車に揺られて都心を目指す必要がなくなりつつあります。
人として効率性を望むのならば「生活圏」と「就業エリア」は近い方が良い。
もっと言えば「生活圏」と「仕事場」は同じ場所でも良い。とも言えます。
ただし個人で様々な仕事に必要なインフラや機器を揃えるのは難しく、それらの設備を配置したサテライトオフィスがあれば事足りるということになります。
現在はまだサテライトオフィス機能は自宅にはなく近隣の施設に行く必要があります。今、それらの機能を持ったサテライトオフィスは駅ナカや使われていない地下街の空きテナントなどに移設されています。
しかし、都心部のサテライトオフィスやコワーキングオフィスはレンタル費用が高額で、ワンルームマンションを借りるのとそう大差ない費用が必要となります。
このようなことからビジネスピープルの活動拠点は自宅あるいは自宅の近隣に集中することとなっています。
そして彼らが購買行動する場所も、わざわざ都心に出て行くのではなく生活圏の周辺、つまりベッドタウンや新興住宅地周辺になり、その場所に購買層の商圏も移動していると考えられます。

●商圏によるニーズの分化

購買層が購買行動をする商圏が変化していることによって「商圏」の地域性によって顧客層のニーズも変化していると考えられます。
前章では購買層の購買行動は自宅の近隣に移動していると書きましたが、都心部の商圏は死んでしまったのでしょうか?
都心部の商圏には以前に変わらず多くのユーザーが存在しています。しかし、以前よりも滞留時間は短くなり、ユーザーが購買する商品アイテムも限定されているように感じます。また現在においては購入商品の単価や一人当たりの購入金額が落ちているように感じています。
経済ニュースを見ると各個人の所得が上がりインフレが進み、原材料費の値上げによって購入商品の単価も購入金額も上がらなくてはならないはずですが、見る限りは買い控えが進んでいるように感じます。
これが一時的なものであるのか?それとも状況は継続するのかは難しい判断です。
日銀や円安、円高の移行、政権の状況、増税の状況などが影響を与えているように感じますが「バラマキ」政策に見るように、どれもが行き当たりばったりの付け焼き刃の政策に思え、10年先を見越した政策にはなっていないことが気になります。
政権が現状のままであれば長期にわたっての衰退。政権が劇的に変わったとして痛烈な経済の痛みを伴うことは確かですが、私たちは「痛烈な痛み」の方に10年後の再生があるように思います。
ただしその「痛烈な痛み」を乗り越えるための準備は必要だということです。

●気候の変動と購買行動、町の構造の連動

今年2023年は世界の平均気温が過去最高となりました。
連日35℃を超える猛暑が続き、これによってもユーザー層の購買行動が変化しています。
昼間の移動時間は就業時間が終わった17時〜20時。
この時間帯が最もユーザーが購買行動を起こす時間帯だと言えます。
この時間帯もコロナ前はもう少し遅い時間帯18時〜21時でしたが、リモート作業の普及や帰宅前の集団での飲酒が控えられるようになって時間帯は前倒しになっています。
ここに前述の気候変動が加わり、購買行動を行う時間帯は短縮され家庭内でのネットでの購買時間が主要な購買行動の時間になっています。
ショッピングモール内での快適な購買行動を促すために商業施設内の環境の整備は整えられ、また購買スペースから帰宅までの交通のコンコースや動線が整備され、モール内でのユーザーの滞留時間はますます短縮されるでしょう。
本来帰宅行動をとる時間帯である17時前後はまだ気温が高く、これまで主な購買活動の場であった都心のハブ駅付近のモールでの購買活動は減少する可能性がああります。
かつてスターバックスが提唱した「3rd place」がこれまでとは違った意味で必要になるのかも知れません。
仕事場と自宅の間にある第三の場所。
そこが過酷な気候から逃れ、唯一の休息の場所としての存在価値を発揮するかも知れません。
そして公共交通を使って移動するのではなく、快適な車での移動、あるいはその「3rd place」同士を繋ぐ「トラム」のような交通網が整備されるかも知れません。
いずれにせよ町の在り方や様相は今後劇的に変化する可能性があります。
かつて日本の街のあちこちに見られた路面電車が網目状に結ぶ街並み。現在必要とされているのはそういう街の構造なのかも知れません。
そのことを自覚しながら今後は店舗の配置や規模を考える必要があります。

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