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事業育成の実際3

●企業努力では買い控えは止まらない

ユーザーの心理は景気の動向に敏感に反応します。
物価が上昇すれば買い控えが始まるのです。
買い控えが始まれば中小事業者の商品は売上が落ちます。
給与が上がるか景気が上向かない限り消費者の買い控えは簡単にはとまりません。
中小事業者はそれに対してどう対応すれば良いのでしょう?

●売上が上がらないなら利益を上げる

まず、もう一度原価率を見直してみましょう。
原価率を下げることが出来れば損益分岐点も下り商品の販売価格の利益額を上げることが出来ます。
材料費はもちろんですが生産の効率化も見直しましょう。
同じ量の商品を人件費を増やさず半分の期間で生産できれば原価は下がります。
よく「人件費」を下げるため人員を減らす企業がありますが、
むしろ人員の生産性を上げるためには長い期間働いているベテラン人員を増やした方が作業の熟練度を上げて作業効率を上げることが出来ます。
●原材料費の仕入れ金額を下げる。(商品の品質を落とさない)
●人件費を削減する。(解雇するのではなく時給額を見直す)
●生産効率を上げる。(熟練工を育成する/オートメーション化を図る)
●マーケットを見直す。(購買率の高いマーケットを探す)

事業者としてはこれらは最低限行わなければならないと考えます。

●IT系企業の躍進は止まる

アメリカの経済を席巻した大手IT系企業は軒並み人員削減を行なっています。
TwitterをはじめGAFAMのほとんどが人員削減を余儀なくされていると同時に半導体不足によって端末製品の生産もおぼつかない状況になっています。
景気全体はまだ化石燃料を中心とした経済体系が根幹にあって、デジタル技術そのものは生産性の向上やエネルギーの削減に貢献しているものの、それが何かを生産しているわけではなく、生産するためには工作機械やそれを動かすためのエネルギー、鉱物資源と半導体などは切り離すことが出来ないために本当に生活に必要でないものから人は離れていってしまいます。デジタル系企業の弱点を曝け出しているに過ぎません。
新しい端末機器が開発されたとしてもしばらくは過去の製品のバージョンアップが優先されてゆくでしょう。
ただし、2024年に向けて各企業とも経営回復に向けての布石として急激に新商品の開発を進めると考えられます。
各国とも地上の資源の確保に向けていた視線は上空、つまり宇宙開発へと向けられることでしょう。

●環境の変化に耐えられる事業の構築

感染症にせよ砂漠化にせよ、元々の元凶は地球温暖化という環境の変化。
今後、温暖化の現象は収束に向かうとしてもまだしばらくは不安定な気候変動は続くと思われます。
気流の変化による急激な寒波や熱波の来襲。水温の上昇による大型台風の発生。それに伴う海洋生物資源の激減。農作地の荒廃。
そしてそれらを見越した新しい産業の息吹もあるでしょう。
過酷な環境や都市部での農業、緑化事業。水没した都市に替わるメガフロート構想。深層海底での魚類などの養殖事業。可動型ソーラーシステムの開発。小型大出力の発電システムの開発。建造物の壁面を活用した発電システムの利用。など。
中小事業者は巨大プロジェクトを行うのは難しいと考えるのが普通ですが中小事業者の集合体や自治体との連携チームを作ることによって可能な事業も考えられます。

●マーケットの見極め

現在起こっているマーケットの変化に注目しましょう。
一つは消費者が商品に対して投下できる金額の変化です。
事業者の業績が落ち込んでいるのに給与だけアップしなさいという政府からの通達は、これまでの国からの補助金や支援金、非常時のために資金をプールしている大企業や海外進出を果たし、海内ではすでに高い雇用賃金を支払っている企業にだけ可能なことです。
海外への進出に資本を投下することは国内の中小事業者にはとても難しいことでしょう。
雇用者の7割が中小企業に勤めている中で賃金をアップすればその半数以上は経営が悪化してしまします。
その半数以上の雇用者は給与額は以前と比べて物価の上昇から見ても減給になります。その家庭で使うことのできる金額は2割以上減ることになるでしょう。
まずは化粧品やブランド品などの高価な商品からユーザー離れが起こるでしょう。
さらに必要性の低い商品から買い控えが始まります。
生活必需品であるインフラに対する支払いと食料などの生活必需品は需要がなくなることはありませんが、それらも節約するために利用を控えできるだけ価格の安いものを選ぶようになるでしょう。
例えば私たちが扱っている菓子類に関しても大手メーカーでも値上がりが進んでいますが、以前は大袋で販売していた商品は小袋の商品を開発し、単価を下げながら販売を維持しようとしています。

見極めなくてはならないのは、高額商品と安価な商品では販売するマーケットが変化するということです。
自分たちにとっての新しいマーケットを国内・外を問わずに見つけ、そのマーケットに相応しい商品を開発することが現状を打開する最も近道であるといえます。
例えば販売価格1,000円の商品の原価率(人件費・ランニングコストを含む)が800円かかっていたとして純利益が20%だったとすれば、販売価格330円の低価格商品を開発して販路を広げ、原価率230円に抑えられたなら同じ1,000円の売上で330円の商品は純利益30%に引き上げることができます。
低価格帯の商品の方が購買率を上げることができるなら、企業そのものの利益幅を引き上げる原動力になります。
しかし前述のように価格帯が違えば販売するマーケットも替えなくてはなりません。販売価格1,000円の商品は百貨店などで販売する方が売れるかもしれませんが330円の商品はスーパーマーケットやコンビニで売れるかもしれません。
また1,000円の商品と330円の商品を同じブランド名で販売すると高価なブランドは「高級な品質である」というユーザーの認識が外れてしまうかも知れません。
価格帯の違う商品は別のブランドで売り出すのが良いでしょう。

●価格帯の低いブランドを開発する注意点

ここで最初の「原価率を見直す」に話を戻しましょう。
低価格帯の新しい商品を開発すれば、その原価率をさらに引き下げるために商品製造に関わる経費を全て見直してゆきます。
●原材料費の仕入れ金額を下げる。……品質を落とさずに原材料の内容を見直す。
●人件費を削減する。……少人数で短時間で製造する方法を考える。
●生産効率を上げる。……機械化できる部分は機械化を図る。
●資材費を見直す。……パッケージ類の単価を下げる。
「マーケットを見直す」……に関しては
●取引のマージン率を上げずに販売できるマーケットを探す。
●自社で制御できるマーケットを増やす。(直営店など)
●低価格帯商品のターゲット層が購買するマーケットに出店する。
などの点に注目しながら事業のシステムを組んで展開をする必要があります。

●いずれ景気は回復するが…

世界の経済が安定すれば景気も回復傾向に向かうでしょう。
しかし間違ってはいけないのは、以前の経済システムとこれからの経済ステムは違っているということです。
しばらくはエネルギー資源の枯渇や食料不足、気候変動などの問題は残り続けます。感染症などの疾病に関しても次々と襲いかかってくることでしょう。
これからの事業は環境の変化に対して強いものでなくてはなりません。
そして日本は海外の事業体にとって安定した経営ができる優良な環境であるといえます。であるとすれば、いずれは海外からの企業進出はこれからも増えてゆくといえますし、今回の円安の状況というのは国政による海外事業者の呼び込み効果を狙ったものであるかも知れません。
中小事業者にとって自己防衛の準備は必要でしょう。また場合によってはこれらの海外事業者との提携も選択肢の一つかも知れません。以前のように国内だけの競争を考えれば良い時代ではなくなります。
時間は急速にスピードを上げて決断を迫ります。
私たちも組織のシステム作りに向けてスピードを上げてゆきます。


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