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事業再生のこと−25

突然思いもよらない不況がやってきて全く売り上げの目処が立たなくなった。
売上が3割も減って、このままじゃ会社が潰れてしまう。
周りの店も次々と閉店してゆく。どうすれば良いのだろう?
途方に暮れてどう手をつけて良いのかわからない。

●「売上」に気を取られて肝心なものが何かわからなくなる

好調だった時に資産を残せていたならそこまで焦らなくて済んだかもしれない。
でも時に不況は突然やってくる。
不況になれば、その原因にもよるがほとんどの企業は売上が落ち込んでしまう。
会社の財政状態が良くない状況で売上が下がると、すぐには業績は回復しない。
でも、慌てていろんな手を打って売り上げを上げようとすると、大切な資産を無駄に投下してしまう。
危機に陥った時には冷静に「経営」とは何かと言う原点に戻って考えなくてはならない。

●会社を回しているのは「売上」ではなく「利益」である

売上が下がると売上を上げようといろんな手を打とうとする。
卸先を探したり、人件費を削ったり、チラシを刷って配ったり。
でも、会社を維持するのに必要なのは「利益」が残るかどうかであって、売上が上がることではない。売上がいくら上がっても利益が上がらないのであれば、負債がどんどん増えていくだけである。
しかし、売上が下がったとしても利益が上がっているのであればやりようはある。
売上額に応じて経費を節減する。
例えば人件費がかかっていて、いきなり大きなリストラをする企業があるが、
人件費を削る方法は「リストラ」だけではない。
優秀な人を解雇するのではなく、労働時間を減らし、その分効率を上げることが出来ればその人を解雇する必要はない。
まず売上が上がらなくなっているのであれば生産量を減らす事ができるはずで、仕入れを減らし、まず生産調整をする。その中で就労者の就業時間を減らす。
もちろん、就労者の給与は減少するだろう。それを最低限に抑えるために仕事の効率化を図って売上の減少を最低限に抑える。仕入れ、人件費、ランニングコストなどの原価率を下げて、もう一度損益分岐点を計算し直す。
様々な節約が出来ていれば損益分岐点は下がっているはずなので、利益が出る売上額も減少しているはず。そうすれば売上が減少していても利益が出るはず。
思った以上の利益が出ているのであれば給与が下がっている就労者に還元する。
「どうすれば利益が残るのか?」に集中する。
利益さえ確保出来ていれば、いずれ景気が回復した時に再び業績は回復する。

●売上が下がっている原因は何なのだろう?

情勢によって世界的に物価が上昇している中、円安がそれに拍車をかけた。日本は多くのものを世界中から輸入している。特に米国からは政治的な側面からあらゆる資材を輸入している。そのアメリカがインフレになり、輸入物のほとんどが値上がりすれば当然日本も影響を受ける。
ただしある程度日本では値上がりをしているものも海外に持ってゆけば価格の安い手頃な商品ということになる。
でも小規模な事業者のほとんどは国内に向けて商品を販売していて、売上が下がっている大きな原因は国内消費が冷え込んでいるからに他ならない。
これまでの不況と同じで、物価が上昇しているにもかかわらず人々の給与は上がっていない。買い控えが始まるのは当然だから売上は低迷する。
この社会構造は簡単に変わるものではない。しかも今回は国内の原因よりも国外の原因が大きく、改善には時間を要する。
企業の中での原因であれば企業努力である程度は改善できる。しかし社会構造や世界情勢が原因である売上の低迷は簡単には改善できない。

●マーケットの変容を感じ取り柔軟な対応で乗り切る

もうすでに全国規模で認知されている商品であれば海外へ、今はまだローカルな認知の商品ならば全国へ認知度を拡大する。
その企業を支えていた100人のユーザーが買い控えをして現在は60%のユーザーしか商品を買う事が出来なくなっているなら、ユーザーを170人に増やすことが出来れば、実質100人のユーザーに商品を買ってもらえることになる。

人々が節約してできる限り安い商品を買おうとしているのなら、600円で販売していた商品が300円になれば誰もが買うだろう。
ただし、利益率は確保した上でこれまで600円で商品を1つ買っていたユーザーが300円の商品を二つ買ってくれたなら、同じ利益率であれば以前と同じ利益を得られる。
ただし気をつけなくてはならない事は、600円の商品と300円の商品は同じブランドで販売してはならない。
人はブランドの価格帯を低い方の商品で判断する。価格は下がったけれど製品の原材料の質や加工の精度が下がっていたならば、それがそのブランドの質だと認識する。そうすると、同じブランド名で販売してしまうと景気が回復して600円の商品が再び売れるようになっても、その600円の質の良い商品は300円の商品と同等の質に見られてしまい、ブランド力を落としてしまう。
だから、価格帯の違う商品を出す時には別のブランド名を使い、景気の動向によって二つのブランドのどちらを主力にするかを調整する必要がある。

●未来のニーズを読み取って種を植える

販売するマーケットで最も大きな変化は、国内マーケットが縮小し、海外マーケットが拡大してゆく事だろう。大きな理由はインターネットの普及。
しかも、インターネットは新たな進化を遂げてWeb3が主流になろうとしている。Web3は商品流通よりも社会形態や営利組織を変容させる。
今のところ恩恵を受けているのはデザインやアートなどの文化的な資産価値の保持と流通になっているが、これが現物商品に今後どのような変化をもたらすか注視しなくてはならない。少なくとも流動資産は仮想通貨などデジタル化することは間違いない。
いち早くWeb3を取り入れ流通そのものを変化させることができた企業が次の勝者になるだろう。


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