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ブランディングのメモ帳-1

「ブランドの意味」

ブランディングって何だろう?「ブランドを作ること」それは正論で正しいけれど間違っている。なぜなら「ブランド」の定義づけも「作る」の意味も曖昧だからだ。

では「ブランドとは何か?説明してみてください」と問われたらどう答えるだろう?

歴史を紐解けば「ブランド」とは牧場の牛の臀部に付けられた焼印のことである。確かに起源としてはかつて牧場から逃げた牛がどこの牧場の所有物か示すために付けられた焼印のことを「ブランド」と呼んでいた。そしてその慣習は現在も続いている。でも現在では「商品」が帰属するメーカー名であったり、そのメーカーが特定のターゲット層に対して嗜好性を絞り込んだ商品群を分けるための名称だったりする。ずいぶん汎用性が広くなっている。「何に属するか?」「嗜好はどこに向いているか」「示すグレードの高さはどこにあるか?」「与えることで価値を高める」現在のブランドには多くの位置付けがある。

総じて「ブランド」の立ち上げが必要な理由としては「ユーザーの囲い込み」や「商品の格付け」などが考えられるが、主体となっている目的は「販売促進」だと言える。

単に販売促進という言葉だけを取り上げるなら「ブランディング」しなくても売る方法はある。多額の広報宣伝費を使って商品のPRを矢継ぎ早に行えば、その商品は売れるだろう。でもPR活動の手を緩めれば商品はユーザーから忘れられ、売上は下がってしまう。ではどうすれば多額の広報宣伝費を使わずに恒久的にに売上を維持できるのだろう?

「ブランドの起源」

おそらく最初の「ブランド」は自然発生的に生まれたと思う。例えばこんな話はどうだろうか?

「村のチーズ店」

遠い昔、フランスの片田舎にあるチーズ工房。そのころは各農家や家庭で自分たちでチーズを作っていた。その家でも先祖代々家主がチーズを作っていたのだろう。ある日隣人が訪れチーズを分けてもらった。そしたら、そのチーズは自分の家のチーズよりも美味しくって、隣人はその後も時折チーズをもらいにきた。隣人の家でパーティーが開かれ近隣の村からも人々が訪れた。彼らもそのチーズの美味しさに驚き、どこで手に入れたのかを尋ねた。噂を聞きつけ、チーズを作っている家に「私たちにもチーズを分けてくれないか?」と尋ねた。「分けてあげたいけど、そんなに沢山のチーズを作るのなら牛舎の牛の数を増やさなきゃならないし、そうなればタダで分けてあげることは出来ない」と言われ、隣人たちはお金を払うことにした。その家の牧場は大きくなり、沢山のチーズを作るために人を雇い、その美味しさは国じゅうで噂になった。でも家主は決してチーズの製造方法は明かさず、門外不出となった。その家には国じゅうからチーズを求める人々で賑わうようになった。(創作)

この物語の中には「ブランド」に必要な幾つものポイントが含まれている。

「差別化」「品質」「ターゲットユーザー」「商圏」「拡散」「認知」「安定」。

それらは「ブランド」が確立する過程で必要な要素だと思う。

一般にブランドを確立するには大きな資本が必要だと言われているけれど、実際はどうだろうか?

多くのファッションブランドを生み出したヨーロッパでのブランドの成立の過程を考えてみよう。そこには前述した「差別化」「品質」「ターゲットユーザー」「商圏」「拡散」「認知」「安定」が深く関わっていることがわかる。

例えば皆んなが知っているルイ・ヴィトンの変遷を見ればそのことがわかる。

「ルイ・ヴィトンの沿革(抜粋)」

1954年にフランスで生まれたルイ・ヴィトンは旅行鞄の専門店として出発した。そして薄い木の板の上に革を貼ることで強度を上げ他社の製品と「差別化」をするため軽量化を図った。こうして旅行ではなくてはならないカバンとして噂は「拡散」し「商圏」を全国に拡大。でも彼らの鞄は粗雑に扱われる旅行鞄なので修理を施しやすく作られていて、それが裏目となって製造をしやすく、模倣品が出てしまいやすかった。そこで革の表面にあの有名なVLの印刷を加え人々にルイ・ヴィトンの名前を「認知」させた。ファッション性アップしさらに「差別化」を進め、ロシアの皇族が購入することで、貴族や皇族などを中心に富裕層の「ターゲットユーザー」を獲得し高級カバンとして「認知」され、地位を獲得したことで平民層の憧れの鞄となって現在では世界中で「安定」した販売力を有するブランドとなった。

このルイ・ヴィトンの沿革と先程の「村のチーズ店」の話には多くの共通点があることをお分かりだろうか?

ただし、この二つの物語には1つだけ大きな違いがある。

それは、「自然発生型のブランド」と「人の意思で立ち上げたブランド」という違いである。そこに「ブランディング」の奥深さと極意が隠されている。

これから、それを紐解いてゆこうと思う。


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