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事業育成の実際6

●整理し方法論を固める

今置かれている状況で最も問題なのは何なのでしょうか?
●ロシアとウクライナの紛争がいつ終わるかわからないこと。
●紛争と関連し、さらに利上げによって原材料の仕入れ価格が高騰していること。
●上記に関連し建築資材や設備投資費が高騰していること。
●物価の高騰によって消費者マインドが冷え込み買い控えが始まっていること。
●大企業では社員の所得が上昇しているのに中小企業では給与が上がらないこと。
●少子高齢化が進み高齢者層が貯蓄を溜め込んで資本が流通しないこと。
●マーケットが変容し、これまで商品が売れていたマーケットで商品が売れなくなったこと。
●新しい事業に投下する資本が枯渇している。

これらの中には自己で解決可能なものと自己ではどうにもならないものがあります。
例えば「紛争」や「利上げ」「物価高騰」などは事故や一つの企業だけでは解決できず、いわゆる「経営を取り巻く環境」の悪化だと言えます。
次にこれらの自己では解決できないものの中にも工夫することで緩和できるものがあります。
例えば仕入れ価格の高騰に対してはしれ先を変更したり商品の質を落とさない範囲で代替え材料を探すなどでコストを下げる努力はできます。
「紛争」や「利上げ」などの状況がいつまで続くか期間のわからないものに対しては「悪い条件下」での対応を継続して行うべきで、どのように利益を落とさず経営を持続させるかがテーマとなります。

●同じやり方は通用しない

「利益を落とさず」とは言いましたが実際には「売上は落ちる」ことになります。同じやり方で同じマーケットで販売を試みても消費者マインドが冷え込み購買されなければ確実に売上は落ちるでしょう。
無理に売り上げを上げるためにマーケットを広げるために1店舗だったものを2店舗や3店舗に増やしたとしても、それぞれの店舗に対してかかる人件費などの経費を差し引けば「利益の率」はどの店舗も同じように経営が苦しくなります。

例えば以前は1ヶ月あたり100万円の売り上げがあった店舗が利益を減らし、10万円の赤字を出していたとして、それを3店舗に増やしても赤字額が30万円に増えるだけということです。
「マーケットの冷え込み」が原因である限りは同じマーケットで同じやり方を続けても無駄ということです。

●マーケットに応じた商品開発

冷え込んだマーケットとはいえ、人は何も買わなくなるわけではありません。
これまで2,000円使っていたのが1,500円になるということです。景気が悪くなれば人は節約に走ります。自由に使える小遣いは1ヶ月8万円だったものが6万円になります。それでも食品や必需品、消耗品は買わなければなりません。ただし、できる限り安い商品を手に入れようとするでしょう。かつて、どの不況時にも「買いだめ」が起こり、また「デフレ」が起こりました。
あの時代との大きな差は「原材料の高騰」によって商品の価格を落とせなくなったことです。でも落とせない原因は「商品の大きさ」や「量」「質」を変えなかった場合で、大きさを変えたり、量を減らしたり質を落とせば価格を抑えることができます。
現在はどの製菓会社も商品の内容量を減らしたり、商品の質を変えて対応しているようです。
材料の調達先も変化してきています。
アジアからの輸入はアフリカに変化し、オーストラリアに変わってきています。どお企業も世界情勢の影響を受けにくい国々からの原材料の調達を進めています。

百貨店の地下食料品売り場を覗いてみましょう。
相変わらず商品が溢れ多くの主婦が訪れています。まるでここだけは不況の影響を受けていないように見えます。
ところが歩いていると所々に聞いたことにないブランドの商品が置かれています。手にとって裏に貼られたシールを覗いてみると「製造元」の欄には有名店の名前が書かれていたりします。しかし、その商品の価格は以前のそのブランドが提供していた商品よりもずいぶん安くなっています。
これはどういうカラクリなのでしょうか?
買って持ち帰り食べてみると確かに美味しいのですが以前の商品とは風味が違ったりします。もう一度貼られていたシールの原材料名を確認すると、以前は「発酵バター」を使っていたものが「マーガリン」になっていたりします。
このメーカーは「質」を落とすことで現在の不況を乗り越えようとしています。
ただし「質」は落としていますが「品質」を落としているのではないということに注目しなくてはなりません。
「おいしさ」を落とさず材料の質を変えることで原価を抑えているのです。高級品を作っているメーカーはそれなりの高い技術力を持っています。
確かに最高品質の原材料を使えば良い商品が作れますが、代替えの材料を使っても企業努力や技術力でできる限り商品の質を維持することができます。
お客様にどこまでの品質ならば買っていただけるか?が判断の基準になります。

●ブランドの棲み分け

新しい安価な商品を作るときに気をつけなくてはならないのは、先発の努力して作り上げた高級ブランドのイメージを壊さないことです。
アッパー層の顧客層に向けて販売しながら、それよりも低い所得層に向けて別の商品をブランド名を変えず販売してしまうと、元々のアッパー層の顧客層からそっぽを向かれる可能性があります。
「私たちが高いお金を払って信用してきたブランドが、質の良くない別の商品を他の客に売るのか?」ということです。
購買層のマーケットを広げるつもりが自分たちのブランドを支えてきた高所得層のユーザーを失ってしまうことになります。
ですからターゲットのユーザーやマーケットの違う商品を発売する場合はブランド名を変えて販売する必要があります。
前述の百貨店の食料品売り場の状況がそれを表しています。
メーカー名は同じであっても商品のブランド名を変え、売り方も変えてゆく。
現在のようにどの商品も高くなって販売力が落ちる時には製造原価を下げた低価格帯商品を開発することは有効な手段ではありますが、新しいブランドが既存のブランドを壊さないように心がけることは重要だと言えます。

●高級ブランドのマーケット

原価率を下げて価格帯の安いブランドを作る話をしてきましたが、その逆の方法についてお話ししましょう。
つまり原価率は高いままで、さらに価格帯を引き上げて利益を確保する方法です。
商品は高額な価格帯となるので販売するマーケットもアッパー層のユーザーが主なターゲットになります。
低価格帯の商品のマーケットが裾野が広がっているのに対して、高価格帯の商品のマーケットはピラミッドの上方にあり狭小なマーケットをピンポイントに狙うことになります。
世界の富裕層の地図は大きく書き換えられています。
富裕層は東から西へと変化し、シンガポールやドバイ、インドなどデジタル教育や技術を持った人材が豊富な国へと富は集中しています。
もちろんアメリカや中国などにも富裕層は存在していますが、やはり注目すべきは西アジア、東ヨーロッパ、ニュージーランド、中立国家であるスイスなど大きな紛争がなく安定して国民が教育を受けることができ、人や物流が安全に行き来できる国々でしょう。
現実にデジタル人材の多くはこれらの国々を拠点に流入し、スタートアップ企業が生まれる土壌となっています。
この富裕層が多く住むマーケットに対してどのようなアプローチをしてゆくかがこれからの課題となることは確かなようです。
これらの国々の多くの富裕層はEU諸国のように長い歴史の中で培われ育った富裕層ではなく、短期間に急成長した富裕層であると考えられます。
またさまざまな国の多様な文化を背景に持った人々が混在していると考えられます。
彼らの嗜好性を読み取って、これまでの高級ブランドのブランディングとは違った展開をする必要があるでしょう。
そしてもう一つ考えなくてはならないのは「デジタル興国」の勢いがいつまで続くか?ということです。現在の半導体不足のように「デジタル」といえどもその背景には物質文明があります。各国がデジタル教育に力を入れてその能力が拮抗するようになると、各国の勢力は再び機械開発などの技術力が重要になります。

●ソフトコンテンツ力の台頭

世界の勢力図をもっと先まで思い描きながらビジネスは考えるべきでしょう。以前全盛を極めたハリウッドが衰退し日本の音楽やアニメーションといったソフトコンテンツが脚光を浴びているように、これから世界の勢力図の中心は「ソフトコンテンツ」の発想力ではないかとも考えられます。
人々のライフスタイルが変われば必要な商品も様変わりします。
アメリカが国力を持ち、経済の中心がホワイトカラーが経済を回すようになると、食事の内容よりも手軽で短時間で食事のできる「ハンバーガー」がもてはやされました。家族や友人たちと一緒に食事をすることが少なくなると「個食」が増え、冷凍食品が大きな市場となっています。
次に何が起こるかを推測するにも「ソフトコンテンツ」力が必要になります。
どんな新しいライフスタイルが生まれ、その新しいライフスタイルの中でどんな商品が必要になるのか?
インスタントラーメンを産んだ日本の土壌はこれからも新しい需要を掘り起こす力を持っていると信じています。

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