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事業育成の実際27

●マーケットの変化は事業の形態を変える

この一年間は目まぐるしくマーケットが変化し続けました。
実際には変化が起こり始めたのはコロナ感染症の蔓延からですが、最初は「人が動かない」という現象から始まりました。動くことによってウイルスに感染することのリスクの高さを思い知らされたからです。
世界中でこれだけの人口がウイルスに感染し死亡したことは近年ではありません。これが「地球温暖化」がもたらした最初の大きなリスクとなりました。
人が動かなくなるということはマーケットが動かなくなるということで、さらに人が人の動きに多くの制限をかけるということでした。一気に市場の規模は縮小し、それが全世界で起きたということです。
世界大恐慌のような経済的な理由ではない最初の経済危機でした。
ただしこの感染症の蔓延は小規模の企業機能への細分化やリモート、デジタル導入を促進させました。

次に起こったのは世界各地での「紛争」です。
今回の紛争の原因は「エネルギー資源」と「人的資源」の奪い合いです。
他国より優位に立つために自国の資源を他社から奪うという前近代的な理由と、次世代の事業を支える人材を奪おうという近未来的な理由が混在していました。
「エネルギー資源」は次世代のエネルギー開発が進めば沈静化するでしょう。人的資源に関しては奪うことよりも育成するための環境を整えることのできた国が優位に立つでしょう。
しかし、変化する時代の流れは変える事ができません。かつての栄光の時代を夢見て戻ろうとしても戻れないのです。しかしそれを発端にして起こったこれらの「紛争」はインフラや次世代の都市開発を遅らせることになりました。
順調にいけば老朽化した都市機能を新しい都市機能とインフラに引き継ぐべき期間、それらが生み出す経済効果をストップさせてしまいました。

コロナの蔓延は終焉に向かい、紛争は長期化していますが
新たな問題としてグローバルサウスの台頭と、世界の経済圏の地図の塗り替えがあります。経済的な力関係が変化し、経済の中心はアジアとアフリカに移動しつつあります。
しかし気になっているのは、これまでの先進国の工業中心の資源を浪費する発展の仕方を真似すれば一時的な経済の発展を享受できても、その後に起こる揺り戻しは恐ろしい事態を招きます。今、中国が置かれている状況がそれに近いと感じています。先進国の成熟期が終わり、衰退期に入っている今、次の経済を回す新たな方法が模索されていますが、それは「IT」や「デジタル」ではなくそれらも複合的に組み込んだかつてのコミュニティ文化なのではないだろうかと考えます。

小さな成長と度を越さない小さな経済をいかに持続させ、人が「幸せ」だと感じることの出来るサークルを描く事が次の経済の要になると考えます。
「発展」はこのサークルを大きくすることではなく、幾つもの小さなサークルを組み合わせて繋いでいくことではないでしょうか?
人が暮らしてゆくのに必要な年収は1,000万円ではなく500万円になるべきだし、月収が1,000万円なのだとしたら、その人が純粋に労働して得られた報酬以上の収入はどこから生まれているのでしょうか?

●新時代の事業展開

私たちの事業は大きく拡大するのではなく、横に輪をつなげるように育てたいと考えています。
その結果として事業規模とマーケットが拡大します。また現在のように環境も経済も不安定な中で最良のリスクヘッジは独立した生産事業体をたくさん持つことではないかと考えています。
例えば奈良、大阪、神戸にそれぞれ製造拠点があれば大阪店に津波が押し寄せても奈良店は製造を継続できます。神戸店が地震で被害を受けても大阪店と奈良店は製造と営業を支えます。
これまでの企業であれば一箇所に大きな工場を構え、そこから各地に向けて商品を送り出していましたが、その方法ではその大型工場が何らかの被害を受けた場合に立て直しに労力がかかり、営業再開まで時間を必要とします。
多拠点での生産が可能であればリスクは分散され、さまざまな社会や環境の変化にも対応できます。
私たちは大企業ではなくどちらかというと零細企業です。
大企業では業務の内容が多岐に渡り、企業のカルチャーやカラーを一つのイメージに統一することは難しいかもしれません。
また時代の流れの中で方向性を時代に合わせていると自分たちの方向性を見失うかもしれません。これはどの企業でも成長過程で陥るジレンマともいえます。
小規模でいる間は企業の方向性を統一しやすく、企業のカルチャーを育てる過程で企業のカラーも統一されていきますし、また、カラーやカルチャーを統一するということが企業の成長の要となります。
それができれば、そのカルチャーやカラーに共感できるユーザーが顧客となりファンコミュニティーが形成されます。
以前のように大企業に成長するためには自らのカラーをシーズンごとに変化させ、巨大なマーケットに広範囲に訴求することでコアなファンでない顧客層も巻き込んで売上を拡大し、利益を伸ばすことが大切で巨大資本で大規模な宣伝活動をすることが必要でした。
しかし、現在ではインターネットの普及によって広範囲な訴求は可能ですが、全ての顧客層に大規模に希薄な訴求をするのではなく、同じカルチャーやカラーを持った顧客に対して集中的に訴求することが大事で、またマーケット全体に広げるのではなく自社のそれぞれの地域の基幹店舗から周辺のターゲット層に対して地域性も考慮しながら訴求をし、それぞれの地域に強いコミュニティーを作ることが大切だと考えます。自分たちのカルチャーを伝えるためには広範囲な情報を盛り込むことのできる動画配信は重要になると思われます。
そして、情報を受けて私たちのコミュニティに入るための入り口が重要になります。
企業カルチャーはブレるとファン層を失います。もしもカルチャーを広げてファン層を拡大したいのならブランド自体を区分けしなくてはなりません。
自分たちのターゲットとなる顧客に関して明確なブレない軸を持つことが重要だと考えます。

●二つのブランドの意味

私たちは現在もう一つのブランドをデビューさせようとしています。
基本の大きなカルチャーは同じですが、その延長線上に「顧客の年齢層」と「商品の価格」を変化させています。
世の中の動きの中で今変化しつつある要素を考慮しています。
一つは「国内の経済の成長の鈍化」。
二つ目は「ターゲットユーザーの生活習慣の変化」。
三つ目は今後の展開に関係しますが「グローバル化の急拡大」。
この三つの要素を考えたときに、まずはブランドを二つに分割必要があるということ。そして続いてさらにもう一つのブランドが必要となることを予測しています。

まずは二つ目のブランドをデビューさせます。
コロナ前の安定した経済状況から目まぐるしく変化する経済状況になり、ユーザーの財布の紐は以前より固く縛られています。費用をかける部分を限定し、自分たちが本当に好きなもの、自分たちにとって必要なものにだけお金を投下するようになりました。ただし、もう一つの変化は「自分たちの暮らしを大切にする」ということでしょう。例えば「家族との暮らしを大切にする」「家族との対話を大悦にする」というようなことです。
この変化は「仕事の方法や体勢が変わったことによる部分も大きいと思います。
「リモートなど自宅でできる業務が増えた」
「同じ時刻に満員電車には乗りたくない(フレックスタイムの導入)」
「終業後大人数で飲み歩いたりしない」
「仕事が終わればすぐに帰宅する」
といった生活習慣の変化と生活費の配分の変化から
例えばクリスマスに「大きなホールのケーキを買って帰る」のではなく
「小さなスイーツをたくさん買って家族で分ける」に変化
し、
つまり3,000円のホールケーキではなく300円のミニスイーツをたくさん買う方が現実的であるということです。
この変化を捉えたブランドを現在開発し販売を始める段階にきています。
若い世代は経済的に謳歌した経験が少なく、今の中高年層よりも現実的であるといえます。彼らが家庭を持ちニューファミリー層となって生活を続けていくための知恵が現在の「生活パターン」そのものを変えているといえます。

現実として現在売れているスイーツ商品を見ると、
「ミニカヌレ」「フルーツ大福」「ワッフル」「シュークリーム」「ドーナツ」などの小型のスイーツで、単価は250円〜350円。これを箱売りで4〜6個買うことが多いようです。
友達同士で食べるのではなく家族で食べます。
なので購買行動に関しても、以前のように仕事帰りに会社のある都心部でモールや百貨店に立ち寄って購買するのではなく、自宅のあるベッドタウン近隣で購買することが多くなっているようです。

スイーツの販売店で都心部でも売るためには充実したイートインスペースが必要になります。都心部の顧客はいわゆる「3rd place」の使い方が変化しています。
「仲間との交流」は昼間に都心部の職場の近くで済ませ、「自分へのご褒美」は自宅に帰ってからゆっくり楽しむ、というように変化しています。
都心部のユーザーは仕事の合間、あるいは終業後短時間のみその場でスイーツを楽しみ、主体は自宅で楽しむ時間となっています。

スイーツに限らず商品を購買するとき「自分」「家族」「自宅」で使用したり楽しむことが判断基準になってきています。
「家族」や「仲間」の単位は小さくなり、いわゆる「パーティパック」のような大容量の購買は減り購買単位は小さくなりつつあります。
このような生活と密着した商品はいわゆるインバウンド需要には当てはまらず、区別して考えなくてはなりません。
そのブランドの「コアターゲット」が誰なのか?をきちんと把握することはブランディングの基本であり、現在のように変化の激しい状況で自分たちの「顧客」を見失わず、正確にその行動や購買のパターンを把握することが大切です。

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