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事業育成の実際4

●ネット販売の効果と盲点

あなたの商品はどのECサイトで販売をしていますか?
私は良く「ブランディング」について説明していますが、販売方法がどのような方法であっても「ブランディング」は購買層であるユーザーをどのようにして商品に結びつけるか、あるいは私たちのターゲットユーザーのいるマーケットに対してどのようにアプローチするかを考えるために必要なことだからです。
ネット販売においてもブランディングは重要な要素と言えます。
大手ショッピングモールであってもそれぞれ特徴がありユーザーの傾向が存在します。もちろんショッピングモール内である程度のゾーニングが行われていますが、ほとんどの場合、「雑貨」「食品」「文具」などのアイテムによって分けられています。
例えば「食品」の中には「精肉」「海鮮」「菓子」「野菜」「調味料」などとさらに細かく分類分けされて、私たちの商品はその多くの同類の商品の中に紛れてしまいます。
ユーザー層が商品を探すのに便利な分類ではありますが、商品の特徴を最初の段階では知ることが出来にくいのも確かです。

●ネット販売の強化が必要な理由

私たちのターゲットユーザーは私たちの商品のコンセプトとお客様が好む嗜好性がリンクしていることが前提になります。
つまり商品を開発販売するメーカーとお客様が相互に同じ方向を向いていることが大切です。最近ではAIによって顧客の嗜好性をこれまでの購買記録などから読み取り、個別の顧客の嗜好性に合った商品をお勧めするようなシステムが良く使われるようになりました。特に動画配信などで多用されている手法です。
しかし、その前に私たちが提供する商品やサービスを開発する時点で「私たちは商品をどのような方々に届けたいのか?」を考えた上で開発しなくてはそのお客様に商品を選んではいただけません。
それでは、私たちは本当にそう考えながら商品を作っているでしょうか?

今、再びネット販売が注目される理由はこの「嗜好性」と「広域性」、そして「利益率」からです。
嗜好性に関しては自分たちのファン層を顧客として取り込みコミュニティー化してゆくことが大切です。
2023年が不況に陥るというのが大方の予想ですが、でも実際には年の後半には景気が持ち直すというやや楽観的な意見も存在しています。
ロシアとウクライナの問題やそれに伴う建築資材や食料品の高騰は状況の変化に左右されるので、紛争が終結すれば落ち着きを取り戻す可能性が高いでしょう。
また円安に伴う輸入資材の高騰に関しても、円安が円高に推移すればやや価格が落ち着くかもしれません。
しかし、「紛争が終わる時期」や「円安が円高で安定する時期」に関しては現在の段階で確約できる人間はどこにもいません。それぞれの経済学者や識者の意見程度で状況はいまだに不安定であるということです。
「不安定」という状況では企業の判断としては「良い」状況ではなく「悪い」状況であるという前提で経営して行かなくてはなりません。

「悪い」経済状況という前提であれば「商品は売れない」「売上は低迷する」と考えなくてはなりません。
しかし経営上重要なのは「売上」よりも「利益」であり、その上で「商品を売る方法」を模索する必要があります。
ユーザーは「不況時にどんな動き方をするのか?」と考え予測することが大切です。
●買い控え/いつも買っている量を減らす
●単価の安いものを選ぶ/同じ商品なら安い方の所為品を選ぶ
●特別な場合のみ購入する/記念日や催事のみ商品を買う
これらのユーザーの行動の変化に対し
●マーケットを代える/不況の影響を受けにくいマーケットで販売する
●買う理由付けをする/人気があるから、流行しているからなどの購買理由を作る
●景況感に関係ない強い結びつき/商品に対する愛着のあるファン層を獲得する
などの方法で対処することで販売力を維持しながら、原価率を下げ利益幅を上げることで業績の悪化を食い止めます。

●利益の割合が事業の優秀性を物語る

例えば10億円の年商がある企業の利益が5%だとすると利益額は5,000万円。
年商1億の企業の利益が20%だとすると利益額は2,000万円。
どちらの事業が優秀であるかを考えると明らかです。
もちろん事業規模が大きくなるにつれ事業を維持するのに必要な経費はどんどん膨れ上がってゆきます。
年商が1000億円を超えるような中堅企業では従業員数は2000人以上。

以前、デザイン制作会社就職した頃に会社の売り上げの目安として
年商÷人数>1,000万円
を基準に就職先を選んでいました。
これはある意味間違っていないとも言えます。
正社員1名あたり1,000万円を年間で生み出すこと。
言い方を変えれば、一人当たり1,000万円の売上があればその従業員の給与を賄うことができる、とも言えます。
もちろん製造職と営業職では一人の人間が生み出す売上額にはとんでもない差があります。でもここで問題になるのは「売上」ではなく「利益」なのです。
売上が10倍に伸びて利益が1/5になった企業と、売上は伸びず利益は1.2倍に増えた企業ではどちらが高く評価されるのでしょうか?
事業を育てる時、積極的に投資を進める時期と、これまでの経営を振り返って無駄を省く時期が交互にやってくる。
本来は景気の悪い時に無駄を省いて、景気の良い時に投資を進めるものと思っているけれど、本当はその逆の方が良いのです。
景気の悪い時には積極的に投資をして、景気の良い時に無駄を省く理由は、
●景気の悪い時の投資……景気が回復するタイミングを見込んでその時の事業拡大の基盤を作る。
●景気の良い時に無駄を省く……事業の効率をアップし余裕資金を固定資産化して
次の景気後退期に投資する。

いずれにせよ、まずは次の事業の目を育てるための資産は必要になります。
企業の持つ固定資産を増やす努力は常にしなくてはならないでしょう。

●挽回する力は自分で作るものとは限らない

明らかに業績が落ちる気配がある時に、大抵の場合自分たちの資本が浪費されないように、ほとんどの企業は守りに入ってしまうけれど、それだけでは打開策は生まれてきません。
窮地に追い込まれれば追い込まれるほど、これまで出来ていなかったことを見直して、素早く行動しないと結果は生まれてこないものです。
もちろん無駄に資本を浪費するのは良い事ではありませんが、その資本の中から「行動するための資金」をあらかじめ決めて、「するべきこと」に合わせて割り振っておくことは必要です。
例えば新しい商圏の開拓のために「現地に行って調査すること」やこれまで出来ていなかった「広報宣伝の新しい取り組み」を手掛けること。
原材料の「仕入れの新しいルートを開拓」すること。
これまで出来ていなかった「顧客のコミュニティ形成のためのシステムを作る」こと。

これらに多額の投資をして効果をどの程度得られるか?を念頭に予算を割り振るべきですが、それが将来の自社事業に良い効果を与えるのであれば状況が苦しい時にこそやるべきことかも知れません。

●経営者が弱気になるのは禁物

不況に陥って経営者が弱気になってしまうのは会社に良い影響は与えません。
経営者のメンタルは従業員にも影響を与えるものです。
「会社の経営が上手くいっていない」のじゃないだろうかと考えると販売時の士気にも影響して本当に売上が落ちてしまいます。
確かに「最悪」の状況を考えることも経営者の仕事ですが、気持ちそのものを現場に持ち込むのではなく、あらゆる解決方法を口に出して従業員も巻き込んで意見を求める方がよっぽど良いでしょう。
どんな時であっても経営者は前向きであるべきです。
出来ないことでメソメソするより、「どうすれば出来るのか」を考えるのが経営者の仕事なのです。
そして考えるだけでなく、すぐに行動に移せるように計画を立て手を打ちましょう。


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