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事業再生のこと−11

事業を再生するときに最初に注力したのは認知の拡大だった。
最初の事業がローカルを対象にした商圏だったのに対して、もっと広範囲の商圏からユーザーを取り込んでいく必要があった。
事業再生に取り組む時点で視点はローカルの展開ではなく全国の展開へと変えなくてならなかった。

大規模な資本を持った企業ならば多店舗展開で勢力を拡大し、多方面の媒体で訴求を繰り返し認知度を上げれば良いのだろう。
でも私たちにはそういう活動を展開できるほどの資本はない。出来ることは限られている。

まず、低資本で出来るブログやSNSでの発信、チラシやショップカードのポスティング。それらはどんな小さなスタートアップの店舗でも最初に手がけることだろう。
そしてプレスリリース。
ローカルではなく全国展開をしている誌面での記事に掲載されるための活動。広告を出すには膨大な資本の投入が必要になる。プレスリリースは掲載される確証はないが、告知する内容によってはかなりの確率で掲載してもらえる。新聞などでは情報や活動の公共性が重視されるが、情報雑誌などでは読者に対してのインパクトや雑誌のコンセプトに沿った情報かどうかで判断されやすい。
あまり宣伝や広告的な情報の作り方ではなく、客観的な情報の書き方が要求される。プレスリリースは記事として掲載される分には無料だが、同じ内容を広告として出すには数十万円〜百万円以上のコストを覚悟した方が良い。
ちなみに新店オープンに関する情報はオープンしてから約3ヶ月が掲載価値が有効な期間で、さらにいうなら新刊発行の3ヶ月前から編集会議に入るので、オープン前からプレスリリースをかけた方が良い。

私たちは人の移動の「ハブステーション」となる駅ナカの市場での活動に注力した。「ハブステーション」は必ずしも鉄道会社の駅とは限らない。空港、新幹線、サービスエリア、様々なハブステーションが存在する。

ショッピングモールはかつて大規模な人の集積場だった。それは人の購買意欲が高く、その場所に行けばほとんどのものが手に入る場所だった。物価の高騰、景気の減退、円安、天変地異、様々な要因が重なり人々の購買意欲が低くなり、さらに居住地や就業地が分散するとショッピングモールの集客力は落ち、マーケットの規模は縮小する。

これから人は何を求めて移動し、どうすればそこにマーケットを創出できるのか?

私たちが駅ナカを選んだのは、現時点では駅ナカは人が交差し滞留する確実なマーケットだからだ。これまでメーカーや販売店は大型量販店に出店していたが、今は以前のような集客力を失っている。

彼らも駅ナカが重要なマーケットになっていることに気がつき、駅ナカでの店舗の増設に躍起になっている。私たちは早くに実績を積んでクライアントと信頼関係を作ってきたが、収益効率を重要視するようになったクライアントは確実に売り上げが上がる知名度の高い店舗との契約を優先するようになる。

私たち新興勢力の小規模事業者はこれまで以上に戦略的に集客を行い、収益をあげる必要がある。

これからの認知度の拡大は各エリアごとの市場での効率の良い訴求活動が重要になるのだろう。

サテライト型展開。以前から言ってきたこの手法はこれからますます重要になってゆく。多店舗展開の場合はそれぞれの店で店長が責任を持って利益を確保して、そのための基本的なシステムを本社で作り上げてコントロールするというやり方だけれど、サテライト型は基幹店を要所に作って、その基幹店がある一定のエリアにある販売店や催事の管理をする。基幹店を星に例えるなら「恒星」で、その周りを惑星が回っている。それをいくつも従えて銀河を構成する。そんな感じだ。

一極集中が限界に来ているのは国や都市レベルだけでなく、企業や事業レベルでも同じようなことが言える。

企業のコアを分散させてそれぞれがいくつかのサテライト店舗をコントロールし、一定の利益を上げることが出来るのなら、その方が巨大な企業体を一極集中させるよりもリスクを軽減できる。

天変地異などの物理的リスク、収益の増減に対するリスク、組織の決定速度が鈍るリスク、様々なリスクがサテライト型の組織作りによって軽減できる。もちろん判断の統一が出来づらい、物理的な距離感が拡がるなどの問題点があるが、それらは現在のデジタル技術を使えば解決できると考える。

またサテライト型では各サテライト周辺の商圏のみに認知度を上げる戦略を集中できる。全体の認知度を上げるには巨大な資本の投下が必要だが、サテライト型は周辺商圏への小さな資本投下で認知度を上げることができる。

オーナー企業はオーナーの利益を基準に考えがちで中央集権型になりやすいが、サテライト型は利益を滞留させ共有する考え方で運営しなくてはならない。巨大化し事業範囲が膨張した巨大企業は同じように資本の共有にいたるが、事業の発生と成長段階で最初からその形態をカタチ作ろうとする考え方だ。そのためには最初から3つ程度の事業分野を並行しながら育てる必要がある。一点集中型ではなく面で事業構築をすることは専門分野が多岐に渡り大変だが、成長を始めると相乗的に拡大を始める。

私たちはまだ入り口に立っただけだが、結果を出すにはまだ少し時間がかかる。まずはこれから5年以内に3つのサテライトをつくろう。


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