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事業育成の実際20

●幾重ものセーフティプロテクション

事業をしていると自分自身が予測できなほどの危機が何度も訪れます。
財務の手法を時代の変化に合わせて柔軟に変換してゆくこと。そしてその時代の変化をデーターに基づいて把握し予測してゆくことが大切ではないかと考えています。
財務上の危機防御の方法で重要なのは「資金繰り」をいかに成立させるかということだろうと考えています。
これまでの経営で突然資金がショートしそうになったことが何度かあります。いわゆる仕入れや人件費などが焦付きを起こしそうな局面が、お恥ずかしながら何度か起こったということです。
これらの事象は成長企業にとっては必ず直面する問題だとも言えます。
成長の度合いが大きければ大きいほど資金の焦付きは起こしやすくなります。
つまり毎月のように成長を続けるわけですから、前月の仕入額や人件費よりも今月の金額が大きくなり、今月の仕入額や人件費よりも来月の方がさらに大きくなるということです。
予定していた仕入れや人件費が毎月のように大きくなり、また売上金の入金は1ヶ月遅くなるということが続くとどこかで資金の焦付きを起こします。
これを防ぐ手立ては「融資」「補助金」「資金ストック」などになります。

●資金繰りの方法として考えるべきことー1.補助金

「補助金」は現在すでに慢性的な赤字に陥っている場合。
この先事業を変革したり強化するために補助金を活用して売上を上げるために活用するものです。
「補助金」で気をつけなくてはならないのは「補助金」そのものを運転資金として消費してしまうことが多いということです。
補助金が採択された経験のある企業主の方は理解されていると思いますが、補助金を得るためには先に「自己資金」を用意して「補助事業」を行なってしまう必要があります。「補助金」はすでに実行された事業に対して「補填」されるものであって、補助事業をするために先に投下してくれるものではないのです。「補助金」を申請する段階で企業経営が苦しいはずなのに先に補助事業を行うための資金があるわけがないのですが、それを実現するために「つなぎ融資」というものが存在します。つまり補助事業が採択され、今後補助金が支給されるという前提で「補助事業を実行するための資金」を金融機関に融資してもらうという方法です。補助事業終了後「補助金」が投下されると「融資」を補填、あるいは軽減します。
しかし、「補助金」の申請から補助事業の終了までには6ヶ月程度かかることもあり、さらにその後「補助事業実績報告書」を作成し全ての審査が終わって「補助金」が降りるまで半年〜1年を要することもあります。そのことを念頭に置いて、さらにこの「補助金」をどのように活用して事業の活性化を図るかが大切です。

●資金繰りの方法として考えるべきことー2.資金ストック

「資金ストック」は実はこの三つの中で最も重要で、毎月の売上の中から経営者自らが利益の一部を積み立ててゆくのですが、多くの事業主が「今はお金を積み立てるだけの余裕がない」と言って全ての利益を仕入れと人件費などの運転資金に回してしまいます。
しかし並行して行わなくてはならないことが「資金ストック」であると言えます。
事業が「赤字」だから「資金ストック」を作るのは無理だとほとんどの経営者は考えるかも知れません。しかし赤字であっても黒字であっても「資金ストック」はやめないことが重要です。
経営者のほとんどは「資金ストック」が苦手です。もちろん税金対策で手元資金を貯蓄するにはリスクがあります。「資金ストック」はその名のように「ストック」することが目的ではありません。「資金ストック」には「使用目的」が必要です。
資金の焦付きなどの危機管理費の側面以外に「使用目的」を目標としてストックできたならその資金を使い「利益幅を押し上げるための施策」あるいは企業財産となる「設備などの固定資産への投資」をするべきでしょう。
その「利益幅を押し上げるための施策」「設備などの固定資産への投資」という目標を達成したならば、次の目標への「資金ストック」を継続しましょう。
このように目標を実現したならばその後の利益幅が上がり「資金ストック」を加速させることが出来るはずです。

●資金繰りの方法として考えるべきことー3.融資

「融資」は企業体力のある成長企業においては有効な方法ですが、
「融資を受ける=債務を増やす」ことであり、際限なく融資を受け続ける事はできず、融資される額の増大は債務超過につながります。それでも成長企業にとって「融資」はうまく付き合っていかなくてはならない宿命でもあります。
「融資」をスムーズに受けるためには日常的な財務管理が必要になります。
そのために有効なのが「月次決済」と「資金繰り表」の作成です。これまでの事業成績の推移と今後の指針、事業の推移から適正な事業計画を作るための情報の読み取りを行い、財務を健全に整えていることを証明します。
このことにより金融機関との信頼関係を築いてゆき、融資を受けやすい環境を構築してゆきます。
ただし忘れてはならないのは「金融機関」も「事業者」であるということです。
つまり自社にとって「利益」を優先しリスクを排除するという点では普通の事業者と同じであるということです。状況により必ずしも正義の味方ではないということです。
これまでの数年間新型コロナウイルスの蔓延により景気は低迷し、どの金融機関も多くの不良債権を抱えています。やや景気に回復の兆しが見え始めた現在は金融機関にとっては「回収期」であるということです。
確実にこれまでの赤字を回収し金融機関にとっての収益である「利息」を多く得ることに金融機関のベクトルが向いています。
借換の融資などに関してより利息の高い商品に乗り換えるように促されるかも知れません。1ヶ月あたりの返済額ではなくトータルとしての返済総額、企業体力を査定するための期間を低迷している期間だけをピックアップして指摘されることのないように自社にとってどういう金融商品が適正であるかを正しく検討する必要があります。これからしばらく金融機関は優良企業には積極的に融資を行い、今後は利上げを行うでしょう。
全てのものがインフレによる価格高騰が始まりますが、それは短期間で終わる可能性があります。融資の返済期間が長引くとその間に景気が低迷し経営に重くのしかかる可能性があります。
これまで積極的に融資していた金融機関は手のひらを返すように融資を回収しようとするかも知れません。
現在の自分たちの状況と数年先までを見越して上手に金融機関と付き合っていく必要があるでしょう。

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