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事業育成の実際2

●生存率7%と成功率15%

現在のようなデジタル系企業のスタートアップの実に70%は1年以内に廃業すると言われています。3年後も企業を維持している確率は7%以下。
デジタル系以外の起業した会社であっても同じく三年以内にそのほとんどは姿を消します。
デジタル系のスタートアップが目指すのはどこでしょうか?「有用な情報の共有」「より精度の高い情報交換のプラットフォーム作り」「収益または成功の確率のより高いシステムの構築」「より効率性の高い収益の確保が可能なコミュニティーの構築」「ニーズに対する速度の速い供給」「人を介さずに低コストで実現するサービスの提供」。
多くの場合は
確保する市場が広範囲であること。
作業コスト、生産コストの低下。
顧客囲い込みを行うこと。
商品の提供から収益の確保までが短時間であること。

などを目的とした事業が多いでしょう。
それゆえに作り上げたシステムよりも優れたシステムが市場を独占してしまったなら減収減益に至るまでが短期間で回復は難しいと言えます。
逆に最初に高い水準のシステムを構築できたなら市場を独占することが出来ます。
社会情勢が大幅に変わらない限り、最初に作った市場が変化せず高い収益を上げることができるでしょう。
ただし、社会情勢や人の価値観が大幅に変わるような時代背景では独占したマーケットが急激に変化し、システムそのものが意味を失う危機もあります。

以前のような「製造」「生産」「消費」型の事業はどうでしょうか?
例えば移動手段としての「車」。確かにエネルギー消費などの社会情勢の影響は受けやすいと言えますが、化石燃料がソーラーシステムに変わったとしても「移動手段」という位置付けでは「車」そのものは変化したとしても無くならないかもしれません。
例えば「食糧」「食品」に関しても畜産で得られていた肉が大豆ミートや昆虫由来のタンパク質に変わったとしても人は「食べる」ことはやめず、味覚を追求するでしょう。
事業に必要な上記の4つの条件はこれらの実業でも同じことが言えます。
ただし、これらの事業にはより多くのコストと時間が必要なのは否めません。
そしてこれらの実業の効率化にはシステムの構築は大きく関わってきます。
つまりデジタル系事業と実業系事業は結び付けて考えるべきだと言うことです。
それがうまく組み合えば簡単にはマーケットやシステムの意味を失うことはなくなると言えます。

つまり、「必要不可欠な必需商品」と「デジタルによる効率化」を結びつけることによって企業価値は高まり、その企業や事業の生存率も成功率も上げることが出来ると言えます。

●時代の転換期と事業形態の変化

現在はまさしく時代の転換期に来ていると言えます。
ただし、人の視点があまりにもデジタルに向きすぎているように思えます。
例えばよく似たプラットフォームが乱立したとしても、人が選ぶのはその中の一つか二つのみになるかもしれません。
システムを構築してしばらくは市場は拡大したとしてもそのほとんどはやがては淘汰され平均化していくか吸収されて消えて行きます。
デジタル系事業と実業系事業の併用が企業の成長や生き残りに不可欠なものになりつつあります。少子高齢化など全体のマーケットが縮小し、資源が枯渇し、産業の成長が鈍化していく中で事業の効率化は避けられません。
「国」と言う単位では産業を支えられないのであれば、もっと小さな単位での経済の循環を考えた方が良いかも知れません。自治体や市町村単位でのシステムの構築が必要な時代がやってきます。もちろんそれらの自治体同志を結びつける循環システムも必要になるでしょう。

私たちの会社も現在の事業形態になる以前から「サテライト型事業システム」を目指しています。
巨大事業を巨大化した生産工場や巨大な流通ネットワーク、巨大な生産体制、巨大供給、巨大販売網を構築する時代は終わったと考えています。
仕組みが巨大であればあるほどロスも大きいのです。
例えば巨大な上場企業の社内を見回してみてください。
最も大きな企業と言える都道府県の自治体の役所の中はどうでしょう?
誰かほとんど働いていない人員はいませんか?
社員数わずか十数名の零細企業を見てください。誰か暇にしている人はいますか?
ピラミッド型の企業は本来ピラミッド型ではありません。
裾野はラッパのように広がり頂点に向かって先細っていく円錐形のはずなのに、無理矢理人の配置をピラミッド型に整えています。
その直線と曲線のたるみの隙間に無駄な人材が多く隠れています。
組織は小さく分解すると無駄が少なくなります。
そして一つの小さな組織が網羅できるマーケットの大きさは限られています。
その小さなマーケットをコントロールする小さな組織を繋いでゆけば網目状に広がる大きなマーケットを網羅する組織を作ることが出来ます。
網目状の組織は大きな変化にも弾力的に対応が可能で、突発的な変化で網目の一部が破れたとしても修復が容易で、他の部分が構造全体を代替えすることが出来ます。まさしくこれからの時代に有効な組織形態と言えます。

●生き残りをかけた数年になる

世界中の経済が苦境に立たされています。
中国、米国、EU諸国、そしてもちろん日本もこれから数年は不況の時代を迎えるでしょう。
これまでの資本主義のように巨大企業が経済を支配する時代が終わり、特徴のある方向性をしっかり持った中堅企業が台頭し、ユーザーの支持を得るでしょう。
また巨大なシステムそのものが維持することが難しい時代になります。そのシステムを支える根幹であった「化石燃料」をはじめとする資源の確保が困難になるからです。「再生可能エネルギー」と以前から言われてきましたが、経済全体が「化石エネルギー」の支配が経済そのものの支配につながっている力関係をこれまで築いてきた巨大企業が簡単に手放すとは思えず、しばらくは旧資本主義と新資本主義との間で軋轢が続くでしょう。
新規事業を開拓できるスタートアップ企業にはチャンスでもあると言えます。これから3~5年先を見越して成長分野の事業に力を入れていけば現在の苦境を乗り越えた時に大きな成長をすることが出来るかも知れません。
そしてその間にスタートアップ事業者が取り組まなくてはならないことは「経営力」をつけてゆくことでしょう。
スタートアップだから勢いで成長できるだけ成長させるという考え方はちょっとした状況やバランスの変化で簡単に崩壊する巨大な赤ん坊のようになってしまいます。「経営力」は企業の背骨であり「財務」という血液を流すことで成長することが出来ます。これらの企業の骨格をしっかり作り上げることが企業や事業を成長させ、維持する要になって行きます。
事業を大きくすることだけに注力せずバランスの良い企業体をこれから数年をかけて作り上げることに集中する時期に来ていると考えます。

●これまでとは違った社会構造

自治体や中堅企業による小さな経済圏の出現とそれらの経済圏同士の連携には「国」という括りが取り払われます。本当の意味でのグローバリゼーションが起こり始めます。
今ある言語の壁が問題ではなくなるのもそう遠くはないでしょう。
また「教育格差」という問題は別の格差にすり替わるかも知れません。
どの教育機関で学習したかということは格差を生み出す要因ではなくなるでしょう。先進国で育った、後進国で育ったということも大きな問題ではなくなる可能性があります。子供たちも若者も老人も同じく「端末」を手にすることで平等に学習する機会を得られます。教育にとって問題になるのは「学習」に触れることの出来る「時間格差」だけになるでしょう。
世界における貧富の差の一番大きな問題が教育格差であるとすると、貧富の差も少しずつですが縮まると考えられます。
ただし貧富の差が縮まると困るのは現在すでに財産を手に入れた富裕層が自己の利益を生み出す労働力を容易に使えなくなることでしょう。

私たちの社会構造が「雇用者」と「被雇用者」というもので成り立っているのならば、その二つの格差はどんどん縮まってゆくでしょう。ただそれを望まない富裕層は紛争を起こしてでもその関係を維持しようとするかも知れません。
現在ある世界の各地の紛争も「教育格差」と「経済格差」が生み出していると言っても過言ではありません。
世界はこの「教育」と「経済」のバランスが「平均化」することと「崩壊」することの繰り返しで歴史を形作っています。現在がバランスの崩壊を起こしているのなら、次には「平均化」の時代が来るのでしょう。
ただし「化石エネルギー」を失いつつある現在、そのエネルギーに依存した経済は成り立たなくなり、新しい別の「エネルギー」を見出すことで再びバランスの崩壊に向かって経済は動き出します。
エネルギーに関するヒントは宇宙開発にあると考えられます。そして「宇宙開発」の周辺のあらゆる産業が成長する時代が来るでしょう。
しかし、そのバランスの崩壊の時代こそ「経済の拡張」の時代でもあるのです。
人は無限に「快楽」を追求するのをやめないのであれば、まだ時代は繰り返し続けるでしょう。


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