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事業育成の実際9

大きな企業になるほど方向性を見誤ることがある。
それはあまりに全体だけを見過ぎていて、小さな見落としをしてしまうから。
大局を見ながら大きな流れに乗ろうとするのは大企業の性だけれど、実は大局自体は数多くの小局の集まりだということを見落としてしまう。

●大企業が全体の流れを作る時代は終わった

私たちの仕事ではマーケットの動きはとても大切だけれど、
以前のようにどのマーケットでも同じような傾向があると考えるのは危険。
例えば私たちが販売エリアとして持っているマーケットの駅ナカも、同じように見える環境であってもすぐ隣の駅では全く違うマーケットになっていることが多くなっています。
しかもそれぞれのマーケットもわずか2〜3ヶ月で変貌してしまうのです。
これまでのようなマクロなマーケットの見方をしていては商品を売ることはできません。状況は刻々と変化しているのです。
コロナ感染症などの人の繋がりを分断させる状況が3年も続くと、人の嗜好性や行動に大きな影響を与えます。
各商圏にあった人のコミュニティーは分断され、同じ価値観で行動していたグループは細分化しました。
例えば、いつも集まって行動していた6〜8人のママ友のグループは今は2~3人までの小さなグループになっていますし、幼稚園や保育所、学校で親同士が会う機会やイベントも激減しました。
私たちはこの分断したコミュニティーを再生させる努力をする必要があります。
大切なのはカルチャーカラーが明確であるコミュニティーに働きかけることです。

●変化を拒む不合理な差別

それぞれに努力をしている中小事業者にも限界があります。
もちろん現在大手になっている企業も最初は中小事業者だったのでしょう。
スタートが恵まれている事業者、親会社が規模や知名度があった事業者。
世の中の基本が資本主義である限り、資本が大きな事業者が有利なのは仕方がないことですが、体力のない中小事業者に大手と同じような動きをするように要望しても限界があることも確かです。
元々の知名度がある大手と、まだ知名度が低い中小事業者に同じ規模の集客をしてほしいと要望することは無理があります。
中小事業者には中小事業者なりの集客方法がありますが、そこに無理やり大資本を投入すれば中小事業者の経営を圧迫することになり、
早くにスタートを切って知名度をすでに獲得している事業者とこれから知名度を獲得するために頑張っている事業者では方法も投下できる資本も全く違います。
これまで性急に利益を確保しようとしているクライアントは中小事業者をどのように共に育とうと考えているか?あるいは無理に利益を確保するために中小事業者の経営を圧迫するか?を天秤にかけていて、現在のような不況下においては後者の状況が多いと考えます。
それはかつて先進国が後進国に対して労働力を提供させ、ギリギリまで投下する資本を縮小して利益を得ようとしていた少し前の時代に似ています。
円安、先進技術の低下はこの国をかつての後進国の立場にまで蔑めました。
そしてそれは国内でも同じ力関係を生み出し始めています。

●クライアントのために死ぬことはできない

私たちは大切なお客様のために働いているのであって、それはクライアントも同じはずですが、力関係を上位に持っていこうとするクライアントは本来パートナーであるはずの下請け事業者の経営を苦しめることになります。
下請け事業者の成功が自分の利益になるべきものが、クライアントの成功のみが目的になってしまうと私たちのようにBtoBの仕事では下請け事業者の経営が難しくなります。
基本利益を出すためには販売価格に対して原価率、つまり卸値が安ければ安いほど利益が出るので下請け業者に無理な値引き交渉が始まってしまいます。
あるいは値引きをしないのであれば、大手の知名度が高い事業者と同じように売上を上げなくては市場に商品を置いてもらえないというようなことが起こります。

私たちがしなくてはならないのは商品はもともとエンドユーザーのためにある、という認識を取り戻すことです。
市場が必要としているのは必ずしも大手の商品であるとは限りません。
小さな事業者であってもエンドユーザーがその購買できるマーケットを強く要望すれば販売力をアップすることができます。

●クライアントの要求が市場の要求とは限らない

業績を上げることが必ずしもお客様の希望に沿うことだとは限りません。
お客様が最後に選択するものは自分たちに有用で必要な商品です。もちろん価格も関係はしていますが、
「価格が手頃であまり品質が良くない商品」と
「価格はやや高めだが品質の良い商品」のいずれがお客様が最終的選ぶ商品になるのでしょうか?
景気が悪化する初期段階ではお客様の警戒感は高くなり前者を選ぶことが多くなります。
しかし景況感が安定し始めるとどのメーカーでも怨嗟のような商品を作り、市場には「価格が手頃であまり品質が良くない商品」が溢れかえります。
さらにその状況が進むとお客様は他のユーザーとの差別化を考えはじめ、品質の悪い商品は耐久性が低く自分たちにもたらす利点も薄いことに気づき始めます。
その頃からお客様が選ぶ商品は「価格はやや高めだが品質の良い商品」へと移り始めます。
ただし、顧客層がそういった商品を選ぶようになるまで事業者は根気強く体力を温存しながら待ち続けなくてはなりません。

●ブランドの階層化

ユーザー層の要求が変化するまでの間に売り上げを下げて事業を破綻させるわけにはいきません。
ですから、「価格が手頃であまり品質が良くない商品」と「価格はやや高めだが品質の良い商品」を共存させる必要があります。
その方法として有効なのがユーザーの階層によるブランド分けです。
価格帯もユーザー層も違う別のブランドを並列して持つことができれば、市場の環境に変化にも事業者として順応することができます。
時代がどちらかのブランドを選んだとしても、もう片方のブランドを維持しておくことによって時代や景況感が変化したときに事業のウエイトを時代が求めるブランドの方に傾けることによって事業を維持することができます。
もしも片方のブランドの生産をやめて見切りをつけてしまうと、一旦無くしたブランドを再生させるのは並大抵なことではありません。
ブランドを立ち上げる時に二つから三つの階層に対して別々のブランドを立てておく事はこれほど変化の多い時代には必要な事だと言えます。
ブランドを階層分けした時に大切なのは、それぞれのブランドはマーケットが全く異なるという事です。

●ユーザーコミュニティの育成に必要なもの

自分たちのブランドに熱心なファンコミュニティはどうすれば育てられるのでしょう?
ある一定の企業やブランドそのものやその活動に対して賛同したり、情熱を持って応援するのはなぜなのでしょうか?
その企業やブランドに賛同・応援するためには、まず最初にその企業やブランドが取り組んでいることが「何なのか」を知らなければなりません。
そういった情報はユーザ側が調べに行くよりも企業側が発信しなければならない事だと考えます。
つまり、ユーザーコミュニティーを作るためには最初に企業やブランド側からの「情報発信」が重要であると言えます。
そしてその情報発信の内容はその企業やブランドが「どこに向かおうとしているか?」「そのためにどんな活動をしているか?」「社会に対してどのように貢献しようとしているか?」といった内容でなければなりません。
例えば私たちが発信している情報では、
「私たちが使用している食品は安全安心である」ということ、
「そのために無農薬あるいは低農薬、有機農法に取り組んでいる生産者と取引をしている」こと、
「社会の中で持続可能な食品の提供、さらには安全で安心な暮らしづくりに貢献しようとしている」こと。
これらを様々な方法で情報発信しています。
そういった情報に触れることでユーザーは企業やブランドに信頼感を持って、
その考え方や活動に共感していただけるユーザーが集まり始めます。
そうして集まったユーザーは同じ、あるいはよく似た価値観を持った人たちであり、そこにユーザー同士が交流できる「場」を提供できれば、そこで情報提供や共通の話題で交流が始まり「コミュニティ」が形成され始めると考えています。
それでは次回、実際に提供する情報とその発信について書いてみたいと思います。


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