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事業育成の実際12

●ビジネスコンテンツについて

web上で様々なビジネスコンテンツの動画が見れるようになりました。
最初の頃は自分自身とあまりにかけ離れた世界の話のような気がしていました。
まず、使っている専門用語が全く理解できません。まるで日本語を聞いている気がしません。
自分自身の教養の無さを嘆いていても仕方ないので、聞いていて分からない言葉を片っ端から調べて、自分専用の用語辞典を自作しました。
最近はようやく何を話しているか分かるようになってきた。でも1ヶ月もするといつの間にか新しい用語が出現して、辞書の中身はどんどん膨れ上がってゆきます。

ところが1年も経つ頃から急激にこれらのビジネスコンテンツから興味が萎え始めました。内容はどんどん専門家してゆき、何よりも楽しくなかったのは出演している彼らの話が「どんどん現実から遠のいて行った」ことが理由に思えます。

●夢を実現した話よりも今現実に起こっていること

番組に主演している人たちは何らかの形で「成功」した人たち。
経歴の中で「某有名大学を卒業」とか「某有名企業で活躍の後独立」とか「何十億円を調達」とか現実離れした一部の人たちばかりが現れては消えてゆきます。
日本からユニコーンは現れるのか?とか
GAFAMを超える企業は生まれるのか?とか
スタートアップが巨額の投資を受けるためにはどうすれば良いのか?とか
今だったらAIが人々の仕事を奪うのか?とか

ウクライナではいまだに紛争が続き、コロナは終息したように言われ始めたけれどアフリカや諸外国での感染症の状況には誰もが興味を失いかけているし、南海トラフ大地震もまるでブームのように忘れ去られようとしています。

web上のビジネス動画を見ていると、つい自分たちが今生きている状況を忘れそうになるのです。
起業すること=スタートアップとして巨額の投資を受けること 
それはごく一部の話であって、大多数の人はわずかな貯蓄や借金をして最初の事業資金を投下するのが普通です。
まるでそのことが間違っているかのように主張している彼らの姿は虚構のようにさえ感じ始めました。

それは多分自分自身が「実業」としての事業を毎日汗をかきながら始めたのがきっかけだと思います。
彼らの主張はとても遠く感じると同時に、彼らに本当に「経営能力」があるのかという点において疑問を感じ始めたからに他なりません。

●デジタルを否定せず、実業を肯定し続ける

時代の変革が進んでいることは事実であり、それに乗り遅れることが危険であることも確かです。でも、それらの現象は新しい「言葉」によって起こっていることではなく、「デジタル」そのものが打ち出の小槌になっているわけでもありません。
「必要としているサービス」が本当に「必要」であるかということは、そのサービスやインフラがなくなっても暮らして行けるかという点にあります。
「スマホがなくなったら生きて行けない」という人々は大勢いますが、
何らかの理由でこの世界からスマホがなくなって本当に死んでしまう人はごく一部でしょう。
でも、「食べ物がなくなったら生きて行けない」人はこの世の中のほとんどの人がそうであると言えます。「デジタル」が暮らしの中のインフラとなった今ではデジタルに依存して生活している人は大勢います。
直接ではなくてもスマホが無くなれば「仕事を失う」「収入がなくなる」「生産力が低下する」「労力が増える」「時間を浪費する」人は増えるでしょう。
世の中の生産性は劇的に低くなるに違いありません。
もはや「デジタル」は世の中の「社会生活」にはなくてはならない存在になっています。
しかし、「食材を生産する」「家を作る」「服を着る」などと比べれば必要性は低くなります。つまり「衣」「食」「住」に関連する産業と比較すれば重要性は低くなるということです。

●デジタルがもたらすものは万能ではない

デジタルによる社会変革の中に「教育の均一化」があります。居住地、性別、年齢に関係なく平等に情報を入手でき、そこから学ぶことができる世界をデジタルを通じて実現できます。それはイデオロギーの世界では「支配者」が「情報を操作して人心をコントロール」することが難しくなっていることと繋がっています。
情報量が多くなればなるほど人は正しく判断するための基準を多く手に入れることが出来るということです。
それによってもしかすると「戦争がなくなる」かも知れません。
でもデジタルが追求できるのは「人間」にとっての利便性であり、「人間」の暮らしの改善であって、「人間以外の自然」への大きな変化をもたらすものではありません。むしろ「人間」が繁栄すればするほど現在起こっている気候変動や森林の破壊が進み環境の悪化が進むかも知れません。
デジタルが進歩するためにもエネルギーや資源が必要であり、それを最小限度に押さえ込む必要があります。「環境」の再生と「デジタル」の発展は正比例の関係でなくてはなりません。
それでもこれまでの化石燃料至上主義からデジタルへの変換は可能性を産むことも確かです。

●ビジネスコンテンツをもっと身近なものへ

人の暮らしに直接関係する物事とデジタルコンテンツ上に流れている新しい資本主義やトークンの発行によるスタートアップの投資の確保や成長と、世界中の多くの人々の暮らしとの関係をほとんどの人々は理解できません。
それはビジネスコンテンツの内容をショーアップさせたり視聴者を増やすために極端な事例を取り上げているからだと思います。
例えば町工場の経営者が実際にどの程度の費用をかけてWeb上のコンテンツを作り公開し、それによってどんな効果を得られたか?というような実際に事業を行っている私たちの立場でビジネスコンテンツが作られているのか?ということです。
現在のWeb上のビジネスコンテンツは地上波だった頃のカルマを引きずって、以前の製作方法を踏襲しているように見えます。
実際の実業の中にどのようにデジタルを組み込み、どのようにすることで皆が幸せになれるのか?という視点で、「成功例」だけをピックアップするのではなく、大きな資本など持たないほとんどの中小事業者や生活者に、より具体的に小さなことを基本に則って解説するべきでしょう。
皆が地味で楽しくないと思っている財務の話や金融機関との折衝の話、債務の返済の話、補助金の申請の話などはコンテンツ上では流れてきません。
怪しい(?)コンサルティングがらみのコンテンツばかりが流れ、犯罪に巻き込まれる状況を生み出しています。
ショーアップするのではなく、大きな成功例を取り上げることよりも、今目の前にある現実に対してどう対処するのかを大きな製作会社で取り上げるべきではないかと考えます。


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