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事業再生のこと−39

●コミュニティが企業を支える

これからの企業経営で大切なものは、一つはファンコミュニティだと考えます。
企業の信頼度の指標を企業側がいくら数値やグラフで示したとしても、
その数値をユーザーが実感できるわけではありません。
本当にユーザーが実感できるのはそこに「体験」が伴った時ではないでしょうか?
企業ブランディングは短期間で成立してゆくものではありません。
現在のような投資型の成長を企業に求める風潮の中では出資者は短期間で投資した資本を回収する必要があってどうしても短期で多額の資本を注ぎ込んだブランディングに傾倒しがちですが、本当にそれで良いのでしょうか?
そうやって作ったコミュニティもまた短期間で崩壊する可能性が高いものです。

●信用を築くということ

信用を築くには時間がかかります。
ただ単に「人気者」になるのではなく、多くの人の信頼を勝ち得るには時間が必要です。
例えば日本のアニメでは最近では「鬼滅の刃」が大ヒットしたことが記憶に新しいですが、それ以前に宮崎駿さんのおられる「ジブリ」の作品が『日本のアニメーションは優秀である』という基礎を築いていることが大きいのではないでしょうか?
そして新海誠監督のように宮崎駿さんの影響を受けた次世代の監督が生まれつつあります。
でもそれより以前に東映動画のアニメーションや手塚治虫などの先駆者がいたことも確かです。
最初のヒントは海外の映画のカメラワークだったのかも知れません。しかしそれをオリジナルに成長させたのは先駆者たちの努力や閃きだったでしょう。
日本のアニメーションが生まれたばかりの頃は海外から見れば稚拙で完成度の低いものだったでしょう。
しかし研究を重ね、そして何よりも単なる娯楽ではなくストーリーを大切にし、それぞれにテーマを持ったアニメの作品群は欧米の娯楽に特化したアニメーションにはない独特の世界観を築き上げました。初期のアニメーションは海外への発信力も弱く認知されるには膨大な時間がかかったに違いありません。
しかし上質な作品はまず感度と文化度の高い人たちの間で少しづつ認知されてゆくものです。現在では日本のアニメーションの質は世界で高く評価されています。
そこには日本のアニメーションが「子供の娯楽」であるという考えから「誰もが楽しめる知的な文化」であるという視点の違いからなのかも知れません。
そこにはインターネットによる情報の拡散も寄与しているのも事実です。
それでも努力をして質の高いものを提供し続けることが大切であるといえます。

●ファンコミュニティーはファンの交流による相乗効果が生む。

ファンコミュニティを育てるためにはどのような方法があるのでしょうか?
まずは
●質の高い商品があること。
続いて
●情報発信を多岐にわたって展開していること。
もちろん様々なSNSを使って情報発信している方は多いと思いますが、
その情報そのものが
●幾つもの接点を持っていて蜘蛛の巣状に広がっていること。
それらがポイントになってやがてコミュニティーが広がり始めます。
さらに
●情報発信の核が企業側ではなくユーザー側にあること。
そして
●企業側の核となる情報と核となるユーザー側との間に同意があること。
ただし、
●情報の発信の表現に関してはユーザー側に委ねること。

これらの条件を網羅した上で情報発信をしていけば
そこに自分たちのファンコミュニティーが育ち始めます。
「企業とユーザーの間に同意があること」を商業的に契約として行ってしまうと
いわゆる「あざとい」情報発信になってしまいます。
情報の中のネガティブな要素を作為的に除外すると、それも「あざとい」情報となります。
ユーザーを甘くみて「気がつかないだろう」と考えるのは早計です。
自分たちのファンコミュニティー以外にも様々なコミュニティーがあるのです。
「企業を標的にするコミュニティー」や「反社会的なコミュニティー」も存在していることを念頭に置かなくてはなりません。

情報の中心はあくまでも「企業側」でなくてはなりません。
有名な俳優が自己のネガティブな面を発信しないように企業もそうあるべきでしょう。ただし、一見ネガティブに見える情報でも、ユーザーから見た時には「正直である」「隠し事がない」など好意的に取られることもあります。

「情報」とは常に「好意的」に取られることも「反好意的」に取られることもあるということは意識しておかなくてはなりません。もしも「反好意的」に解釈されたとしても、ユーザーから発信される多数の情報が「好意的」であるなら、いずれ「反好意的」な情報は総意の中でかき消されるでしょう。元々「反好意的」な情報に関しては強く反応しない方が良いと思います。「反好意的」な情報の発信者は概して「悪目立ち」したいという願望が強いと思われるからです。様々な「反社会的」な情報の中には法律を盾に迫ってくるものもありますが、それらに対応するために企業側も「法律を盾」にしておく必要はあります。

●コミュニティーの広がりが企業の強さにつながる

ファンコミュニティーは少しづつ拡大してゆきます。
ただ、ネット上で出来上がっているファンコミュニティーだけではなく、リアルにユーザーが繋がって出来ているファンコミュニティーも存在していることを忘れてはなりません。そしてその人たちは将来、企業や商品を根本から支えるコア・ユーザーになっていく可能性があります。
彼らはネット上のコミュニケーションよりも強いリアルなコミュニケーションを要求するので、例えば直接店舗に来店したり、企業が主催するイベントなどに参加したりします。
企業や商品と直接触れ合ってそこでの体験が上質なものであれば、そこで繋がってできたコミュニティーは「体験」という要素によってより強い結びつきを形作ります。
企業側がどんな上質な「体験」を作ることができるか、またその「体験」を継続的に提供し続けることが出来るかによってこのコミュニティーを育てて、自分たちにとっての強力なサポーターを手に入れることが出来るかによって企業の持つブランド力が決まります。

ユーザーコミュニティーこそが、現在のように社会情勢や変革の激しい時代において企業の強さや存在価値の要になることは確かなようです。

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