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事業育成の実際14

●黒いイナゴは山を喰い尽くす

巨大化し肥大した組織は、自らの体を維持するために膨大なエネルギーを必要とします。自らの中に膨大な人材を内包してしまった企業もまた、その内部の人間は組織の中から飛び出すためにさまざまな手法を身につけて、その過程で企業の持つ資本を喰い尽くそうとします。
イナゴに快適な環境を与え、同じ空間に同種の仲間を大量に投入するとその環境から外に飛び出すための羽を発達させ、体は黒く染まり、正確は凶暴化し、周囲の自然を破壊するほどの群衆となって移動をはじめ、共食いさえ始めます。
企業の中でも同じような現象が始まっているのではないでしょうか?
同じ教育を受け、独自性を失い、個性を失った人材を大量に抱え込んだ企業の中では内圧が高まり、弾けて外に飛び出そうとする人々によって資本を喰い尽くされ、やがて壊滅的な環境の中で群れ全てが死滅します。

●資本が食い尽くされた企業には目の前の利益が必要

資本を蓄えることが出来ないいちばんの理由は人の多様性を失ってしまうからです。本来多様性の中から次の事業の種を見出し、じっくりと次の利益を生み出す事業に育て上げるべきなのでしょう。
しかし、資本が枯渇した企業がその巨体を動かし続けるには目の前の種を育てる余裕はありません。ようやく芽生えたその芽をすぐに食べてしまい、結局はせっかく蒔いた種を枯らしてしまうのです。
今の巨大企業にはパートナー企業を育て、共に成長できる環境を作り上げる余裕はありません。まだ若木でもう少し育たなければ実をつけることができない下請け企業に、すぐに実をつけて渡しなさいと無理を押し付けます。
もうすでに大きく育った老獪な巨木だけを残し、これから成長する若木を伐採してしまいます。
森は多様性を失い、やがて森自体が枯れはじめてしまいます。

●森が生き残るための地下茎

企業が山だとすれば、同じ木ばかりが生え黒いイナゴを発生させてしまえば、その山に未来はなくなります。
問題は荒廃した野山をどうして再生させるかです。
既存のシステムのほとんどが崩壊し、それまでの手法が通用しなくなった土壌の中から芽を出す方法を考えなくてはなりません。
現在は日本の文化やホスピタリティーが見直され多くのインバウンド需要が生まれています。特にサービス業や飲食業にとっては最後の成長のチャンスとなっています。しかし観光需要を取り込むことで経済の状況を改善できるのはわずかな期間となるでしょう。
以前、車や家電などの製造拠点として新しい商品を生み出し、欧米の商品に引けを取らない品質と性能を持って低価格で提供していた需要が次第に後進国に奪われ、今ではシェアが逆転しているのと同じように、いずれはグローバルサウスのような後進国は私たちのサービスやホスピタリティーを真似し、学習しシェアは逆転してしまうかも知れません。それを防ぐためにはさらに品質と精度を向上したサービスの提供が必要になるでしょう。
そして資本が充足する短い間に次の産業の目を育てるために資本を蓄え、投下する必要があります。
焼け尽くされた野原から筍のように新しい芽を吹き出し、大きく育てるには今のうちに事業体を連携し資本を蓄え、どこに芽を吹き育てるかを今から考えておかなくてはなりません。
今は地下茎で身を守り、資本を溜め込み、成長のタイミングを伺う時期なのかも知れません。

●巨大化した企業は小さな事業体に学び分化するべき

巨大化した企業は組織を維持するために多くのエネルギーロスを起こしています。
エンドユーザーの論理よりも組織維持の論理が優先され、小さな事業体を食べ尽くす黒いイナゴになりつつあります。
エンドユーザーに目が行かないためにそのニーズを見誤り、さらには自分たちが守べきユーザーが誰なのかも分からなくなっています。
ユーザーコミュニティーをどのように作るべきなのかに迷走し、すでにコミュニティーを持っている個人や組織を取り込むことがコミュニティーを育てることだと勘違いしたりします。
企業の持つカルチャーのどの部分をユーザーが認め共感しているのかを巨大で複雑化した組織に対して固定して考えること自体に無理があります。
ニーズは細分化し、衰退型の企業カルチャーと成長型のカルチャー、あるいは移行しつつあるニーズを正確に見るのであれば、それぞれのカルチャー自体とそこに集まるユーザーを現場で見なくてはなりません。
巨大化することによって情報と分析を優先しすぎることによって全体像は見ることができても個別の現象に関しては理解できなくなっているのではないでしょうか?
「総論」ではなく「各論」の重要性を考えるべきでしょう。
コンテンツマーケティングの各コンテンツは総論を表現するものではなく、多角的なユーザーのニーズに対して各論で表現するべきでしょう。
画一的な方法論で大量のユーザーを獲得できた時代は去りました。
多角的にそれぞれのユーザーに対してアプローチすることでその周辺のユーザーのコミュニティーの核を作ることができます。その核自体も一つではないのです。

●巨体は崩壊し小さく強い変異種が生き残る

恐竜がどんどん巨大化し世界を席巻した時代に、まだネズミのように小さな哺乳類は高い体温を保ち、氷河期を乗り越え、その後恐竜は滅び、哺乳類は進化を遂げ繁栄を極めました。
事業体もまず生き残る防衛力を高め、その防衛力そのものを武器として次の範囲のチャンスを伺うべきでしょう。
哺乳類の中から草食でも肉食でもない雑食生の種類が生まれます。
ハイブリッドな種は生き残る可能性が強くなります。
事業体も一つの事業ではなく「工業」も「プログラミング」も「農業」も「食品」も「エンジニアリング」も様々な可能性を探るべきでしょう。
これからの時代は「変異種」が支配するのですから。

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