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事業再生のこと−40

どうして苦境に立たされているのか?
まずはその理由について考えてみましょう?
事業が苦行になる理由は幾つかありますが、そのほとんどは収益が上がらないことだといえます。
では収益が上がらない理由は何でしょうか?
現在のような状況では単に「不況」のせいにしてしまう人は多いと思いますが、ならば「不況」とはどういう状況を指すのでしょうか?

●時代の変化のリスクはいつでも存在する

不況は10年に一度やってくると言われています。
しかし、その10年に一度やってくる不況の内容は少しずつ違っています。
オイルショック、バブル崩壊、リーマンショック、新型コロナ感染症、ウクライナ侵攻・・・。
一つは不動産の高騰。高騰とは言っているけれど、その前に不動産価格の暴落があります。手頃な価格だった不動産が高騰しそれで稼ぐ人がいる。その後不動産価格が暴落し大きな負債だけが残ります。
この不動産の値上がりを見込んで不動産投資を勧める金融機関が不動産暴落とともに巨額の負債を抱え、最終的に金融機関が倒産してしまいます。
不動産だけでなく石油や電気などのインフラが高騰し生活や企業経営を圧迫。
企業活動が停滞し収益を上げることが出来なくなります。資材が高騰しやはり企業活動を圧迫するのです。

●景気の動向によってマーケットは変化する

景気の良い時と、景気の悪い時ではマーケットが変化します。
当たり前のことですが、倒産する企業の多くはこのマーケットの変化について行けていないことが多いようです。
景気の良い時は何もせずとも商品やサービスは売れます。それでも高額商品が売れるのはこういった景気の良い時でしょう。
景気が良くなれば「にわか成金」が多く生まれ、それまで買わなかった高額商品を買うようになります。景気の良い時にその傾向が強く現れるのは「不動産業」「建設業」「アパレル業」「金融業」などでしょう。
しかし、これらの業種は景気の悪化とともにその影響を強く受けるとも言えます。
「にわか成金」は没落し、モノを買わなくなります。
では景気が悪くなると何もモノが売れなくなるのかというとそうではありません。「建設業」に関してはインフラ系の建設業は生き残り、投資型の建設業は衰退するでしょう。商品は生活必需品、例えば「医薬品」「食品」「紙類」などは価格帯にもよりますが購買されます。ほとんどの商品に関して価格帯の安い商品が主体になります。

●マーケットに応じたブランド設計をあらかじめしておく

高級ブランドは景気が悪くなっても価格を落としません。
もちろん原価調整などをして利益幅を維持できるように企業努力はしているでしょう。でももし高級ブランドが価格を落としてしまったら、その商品は「高級ブランド」ではなくなってしまします。
高級ブランドを製造しているメーカーは何もしないのかというとそうでははりません。服でも食品でも景気が悪くなってしばらく経つと見慣れないブランドの商品が置かれるようになる事がよくあります。そういう商品は手頃な価格で品質も悪くない。
でもタグや貼られているシールをよく見ると「製造元」や「販売元」はとても有名な高級ブランドの企業だったりします。
景気の状況に関わらず最初からブランドを区分けしている企業もあります。
「(株)ファーストリテイリング」が出しているブランド「ユニクロ」と「gu」などは良い例です。
元々「ユニクロ」は低価格帯ブランドとして発売されましたが、その後少しずつ価格帯を上げてゆき高級ブランドのデザイナーとのコラボなどを通して高価格帯の商品も取り入れるようになりました。しかしそのことで低価格帯商品を好むユーザーや若年層のユーザーを失いそうになります。それに対して別のブランドとして低価格帯の「gu」を発売し、その両方の層を取り込んできました。
現在のように不況感の強い時期には「gu」の販売が伸びます。
マーケットが世界に拡大し、今後景況感が良くなれば富裕層が購買する「ユニクロ」の高価格帯化の芽は勢いを増して成長するでしょう。
このように別のランクの商品として購買層の好む価格帯によってブランドを切り分ける手法は多くなってゆくでしょう。それにより、景況感によって企業の収益を支えるブランド群を立ててゆく事ができます。

●利益幅を上げる努力をする

不況時には大抵の場合高額商品が売れなくなります。
それでも全ての商品が売れなくなるわけではありません。
アメリカやEU諸国が不況であっても世界中全てが不況ではないのです。
この記事を書いている間に日銀が利上げの(実際には利幅の拡大だが実質的には利上げ)発表を行いました。円高が進み株価は下落しました。
利上げによっての減益と増収のギリギリのバランスを保つことのできる大企業だけが生き残る事ができる、中小事業者と消費者を見捨てるような動きに思えます。
商品を製造するための原価はさらに上がり、それらを販売できるマーケットはさらに縮小します。
利上げして得られる収益の恩恵を受けるのは銀行と不動産、建築業者でしょう。一般消費者向けの商品を製造している企業は軒並み経営が苦しくなります。
商品価格はもう一段引き上げなくてはならなくなるでしょう。
その高価な商品を買うことのできるユーザーは中流階級には存在しなくなります。
アッパー層に対してピンポイントに販売するか、原価率をさらに引き下げるか?それにやはり海外マーケットを視野に入れざるおえなくなると考えます。
小規模な事業者にはハードルの高い選択となるでしょう。
そのまま受け身の状態で利幅が減るのを指を加えて見ていては事業が崩壊します。
全体のマーケットが引き上がるにはまだ2~3年を要します。
利幅をどのようにして確保するかはそれぞれの企業努力に頼るしかなくなります。

これからの利上げは景気が上昇している時代の利上げではない。景気が上昇しているバブル期などは金利もぐんぐんと伸びました。
しかしそれを補えるだけのインフレーションや賃金の上昇があったから成立したことであって、現在のように企業が内部留保している資産を解放しなければ、一般消費者に皺寄せが行くのは目に見えていて、結果としてさらに景気は冷え込むでしょう。人々の財布はさらに固く閉じられ同時に企業も設備投資できなくなります。
あまりに長い不況は打開策を打ち出せず社会の成長を低迷させます。

●DAOに注目が集まりそのバリエーションが生まれる

これから数年はまず「大きくしない」という選択肢が選ばれ、続いて新しいマーケットの創造をデジタルを通じて始めるでしょう。
しかし、情報の錯綜や共有は「均一化」という現象を引き起こします。
小さなマーケットでそのマーケット内の需要を小さく引き受ける事業体のネットワークが次の時代の主役かもしれません。すなわちDAOという組織形態は地域ごとに形を変えて乱立を始めるのだと考えます。
その後は効率化と親和化を進めたDAO型組織の時代が来るのでしょう。
問題は「孤立化」をどうやって防ぐかということでしょう。デジタル化や仮想通貨に対して抵抗感のある事業者や経営者は取り残され、新しい経営や組織に移行できない恐れがあります。企業内でのリスキリンが盛んに叫ばれていますが、それらも企業体力のある大企業内で可能な話であって教育に対して資本を投下する余裕のない中小事業者には難しい話です。

●相互教育の仕組みが必要になる

デジタルに関する知識やDAOの構築、仮想通貨を中心とした企業資本の導入などを進めるためには「お互いに学び合う」ための相互教育システムが必要になります。
企業同士や経営者同士の勉強会や教育コミュニティー、それらの受け皿となるプラットフォームの構築が急がれます。
人的な交流を促進してお互いの課題を解決する取り組みを行うことで「企業教育」のコストは随分と軽減されることでしょう。
リアル、デジタル両方のプラットフォーム作りが今後急がれる課題です。
DAOは分散型と言われていますが、いずれは全体を飲み込むような巨大なDAOも生まれ、またそのDAOを統率するための核となるDAOも構築されるようになります。その頃にはいわゆるDAOとは異なった複合型の企業が生まれることでしょう。
ハイブリッドな経営形態はすなわち、現在のリアル資本型製造事業とデジタルトランスフォーム(DX)を進めた事業形態の融合と言えます。しかしそれを進めるためには「相互教育システム」の中にデジタルを小規模事業者によりわかりやすく伝えることのできる人材を取り込んでいく事が必要です。
「相互教育」のプラットフォームが出来上がるまでの間、そのノウハウを高額に販売する教育系企業が乱立するでしょうが、プラットフォームそのものが機能することによって、それらの企業は存在価値を無くし消えてゆくでしょう。
またこのプラットフォームは日本の中小企業が海外市場に拡散することのできるきっかけにもなると考えられます。

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