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初恋


一生覚えてるもの
だれしも必ず

それは

初恋

くらいしかないと思う。


遡ること13年前、2007年の4月
あたしはグレることなく無事中学に入学。
一番仲の良かった子が受験をして
女子校に入ってしまったのは少し悲しかったけど
それ以上に、自分の所属していた小学校と
あと2校一緒になるため、マンネリ化した
あっという間に過ぎ去った5年間から
抜け出せるという嬉しさでわくついていた。
(小学校2年からここに越してきたため。)

満を辞して初めて手を通したセーラー服
スカートが大嫌いだった少女は
伸ばしていた髪もバッサリ切って
まさしく心機一転という気持ちで
新しいクラス、新しい椅子や机、クラスメイトと
やんわり仲良くなっていった。

新入生が必ずと言っていいほど悩むのは
そう、部活動やサークルだ。
中学は部活しかなかったのと
あたしの人生史上最も大きな影響を与えた
映画
に小学校5年生で出会ったため
問答無用で吹奏楽部に入った。

蓋を開けたら第一希望のサックスは
完全なる定員オーバー、
女の先輩がかっこよすぎてああなりたい!!
と思って適当に書いた第二希望である
パーカッションに配属された。

そこに彼はいた。

やたら背が高く、おぼっちゃま風の気の弱そうな表情。
常に女子にいじられているが、人気者かそうではないかと言ったら人気者だっただろう。

入部当初彼は別の彼女がいた。
この女、あたしが本当に好かないタイプで
女の子女の子してるガチ天然
肌も真っ白で大して顔は可愛くないくせに、
なぜか男が切れない。
まさしくあたしとほぼ正反対。
人は無い物ねだりだから。

吹奏楽部で同じパートが何を意味するか、
強豪校や週6で練習があるような吹奏楽部だと
多分家族か兄弟くらい長い時間を3年間
共に過ごす練習のライバルであり、仲間
というイメージが良いかもしれない。

そんな中彼はあたしと長い時間を
共に過ごしていたにもかかわらず、
どうしていいかわからないあたしは
ただ彼を見つめて、彼女と仲良さげに帰る後ろ姿を見ながら

あたしってなんてかわいそうなのっ!
と勘違いしてるだけのただの痛子ちゃんだった。

だが紆余曲折を経て、
彼ら二人が別れたと聞きつけた。

これはチャンス…?
とぼんやりしているうちに
同じ部活で違うパート、彼と同じクラスの
今では親友になった女と付き合い始めた。
最初はうそだろ、あの二人…?
という印象だったがまあもう良い。

そんなこんなで1年の夏に差し掛かろうとする時

あたしの家は路頭に迷うことになった。
父が会社をクビになったのだ。

詳細は別の文に書くつもりなので
ここでは端折ることとするが
とにかく母は精神的にやられて毎日号泣、
父はなぜかずっと家にいる、
そして社宅に住んでいたので
引っ越さなければならない。

この3コンボの状況を踏まえ
あたしはとりあえず母に
やらなきゃしゃーないやろ
と言いながら荷造りをした。
今思えばサイコパスか?と思うくらい
悲しさも悔しさも何もなく
ただ引っ越さなければならない
くらいにしか感じていなかった。

むしろ大人になってしまった今
まさしくそのたくましさと
メンタルが欲しいのに
10年以上前のあたしは果たして
どこに行ってしまったのだろう。

引っ越した先は坂の真ん中の、
良く言えば古めかしい
悪く言えばオンボロ2LDKだった。
プライベートがほぼない間取りで、
前の社宅と比べたら当たり前に狭かった。

なぜ引っ越さなければならないかは
その時はよくわからなかったが、
引っ越した先は悪いことばかりではなかった。

なんと、たまたまあたしは彼と家が近くなったのだ。
いや、近いというか彼の家までの通り道にあたしの家があったのだ。

それからはほぼ毎日
あたしと彼と、もう一人同じパートの女の子と
3人で帰ることに自然になった。
最高すぎる。

もう一人の同じパートの子も、
あたしと正反対な子だった。

長い髪、好きな食べ物はお米、大人しい雰囲気で心を開くまではあまり話さない、限りなく変態だがとても心の優しい子だった。

そうして1年生の夏、秋、冬と過ぎた頃

あたしの好きだった彼が、
引っ越すことになった。
転校してしまうのだ。

あぁ、何ということだろう。

一緒に下校していた日常も
もう一緒にドラムを叩くことも
他のパートの愚痴を言うことも
テスト期間に焦って一緒に勉強することも
できなくなってしまうんだ。

そうして彼は去っていった。
引っ越す直前、確か最後に一緒に帰れるチャンスの別れ際
彼は泣いていた、気がする。
ただ単に、日常が恋しくなることに対して。
あたしに対しては、仲の良い女子の一人と
普通に遊べなくなるのが寂しくて
くらいの気持ちだと思ってたと思う。

かくしてあたしの初恋は
実らなかった。

だが、ここで終わらないのがこの女。

この恋の歯車は
4年後の2011年
7年後の2014年
また回り始めることとなる。

続きはまた今度。


2020.06.26
この曲を聴いて不意に思い出したジーナ小鳥遊

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