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市井の人々のリーダーシップを育む

僕はNPOで働いている。何かの課題に直面する人を支えるというよりは、支援に携わる人を支援するような仕事をしている。いわば支援者の支援だ。

先日、ある地域で子どもたちの居場所がないことが話題となり、その地域にいる6名の方に子どもたちの居場所をつくることを提案した。

喧々諤々、様々な声が体験として語られ、大切にしたいことなどが共有されていく。僕はその様子を見守りながらいつ果てるともないおしゃべりのようなやり取りに介入する。

その日はあまりうまくいかず、何も決まらないまま2時間が終了した。

みんな子どもたちのことを大切に想う気持ちはあるものの心のどこかで「自分がやるのはちょっと…」と感じているようだ。

2回目の冒頭、僕は「皆さんにとって負担が大きいことを提案したのかもしれない。もし、続けるのが苦しいのであれば、今回は情報交換ということで居場所づくりに向けた会議を一区切りにしてもいいと思っています。」と伝えた。

すると不思議なことに、地域の皆さんは居場所を実施することを前提にコミュニケーションを初めてくださり、結果的に近々その居場所が始まる。

何が人を「リーダー」にするのか?

上で述べたような事例は世の中にはたくさんあると思う。

最初は誰がそれを始めるのかが問題だったのが、いつしかみんなでそれを始めることに合意している。こういう個人が集団になり、集団がチームになっていくプロセスというのは対話の醍醐味だと思う。

世の中には様々なリーダーシップ論があり、経営をされる方なんかはその辺りのことを学んでいるのではないかなと思う。

リーダーといえば「とても凄い人・できる人」のような漠然としたイメージがつきまとう。そして、そういう人を育てるための研修を受けるために何十万も何百万も支払う人もいる。

確かにリーダーとして何らかのスキルは必要なのだろうと思う。

一方で僕はリーダーというのは関係性の中で取る立ち位置のことで、男女関係における彼氏とか彼女、学校における先生と生徒みたいなもので、チームの中でリーダーとフォロワーという関係として捉えている。

だから、僕は「リーダーシップをどう育てるか?」だけではなく、「何が人をリーダーにするのか?」も同じくらい重要だと考えている。

そして、僕はその方法論として対話を推奨したい。

「直言する」フォロワー

冒頭に述べた事例において僕が発した発言をもう一度掲載すると。

「皆さんにとって負担が大きいことを提案したのかもしれない。もし、続けるのが苦しいのであれば、今回は情報交換ということで居場所づくりに向けた会議を一区切りにしてもいいと思っています。」

割と失礼なことを言っているのだけど、これは僕が「あなたたちに従う」とフォロワーとしてのスタンスをはっきりさせたものだ。

自分がフォロワーの立ち位置をしっかりと取ることで相手はリーダーの立ち位置に入れる。だからこの発言のシーンは僕たちの主従がはっきりした瞬間だと僕は解釈している。

もちろん、これだけが会議の流れを動かしたとは思っていないのだけど、人にリーダーになってもらいたければ、自分自身がフォロワーとして「従う」という立ち位置を表明することは案外大事なんじゃないかと思う。

リーダーになった経験がリーダーシップを育む

以上のように考えると他者の中にあるリーダーシップを育てるための1つの方法論として次のようなステップがあるかなと思う。

1、自分自身がフォロワーになり、他者がリーダーという立ち位置に入ることを促す

2、リーダーとフォロワーとして共に挑戦する

3、その挑戦した体験を振り返り、個人の中にあるリーダーシップを育てる

ここでいうフォロワーはただ付き従うのではなく、目的を共有し、そこに一緒に歩んでいく責任を分かち合ったフォロワーである。

だからリーダーに対して遠慮したりはしない。間違っていれば間違っているといい、素晴らしければ素晴らしいという。そんな目的達成にコミットメントのあるフォロワーが人をリーダーに変えると思う。そのために必要なのは耳を傾け、感じたことをフィードバックする対話のスキルだと思う。

以前、別の場所で立ち上げに関わった子どもの居場所でも同じようなことがあった。その運営者はこれまで地域の中で様々な役を担ってはいたが、リーダーになって何かをしたことはなかった。

その居場所は現在、立ち上がってから2年ほどになるが、そのおばちゃんは先日、地域の子どもの居場所に関するシンポジウムで登壇し、これから居場所を始めたい人々に向けてメッセージを送ったらしい。

これは、生まれつきリーダーシップを持つ人がいるのではなく、リーダーになり、挑戦する過程の中でスキルとしてのリーダーシップが育まれていった好例かなと思う。

僕自身も直言するフォロワーとして自分自身のフォロワーシップを磨き、地域における市井の人々の中にあるリーダーシップを育んでいきたい。なぜなら一度リーダーになり、そのスキルを身につけた人々が新たな活動を生み出していくと思うからだ。

さて、突然の告知になるけども、11/16 - 11/17にリーダーシップ合宿に参加させていただくことになった。

ここで紹介したのは僕自身のアプローチだけど、当日はいろんな現場で人々にリーダーシップをもたらしている実践者が集まるということで僕自身もとてもワクワクしている。

もしご都合合えばぜひご一緒しませんか?

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