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大好きな昔の映画の話(大映…そして江波さん)

古い日本の映画を観るのが好きです。確か6~7年ぐらい前になるかと思いますが、あるきっかけで昔の日本映画ばかりを好んで観るようになりました。

中学生の頃 (1980年) 、『若き日の北條早雲』という時代劇のドラマが放送されていて、「東雲之助」という、男の役を演じている女優さんがいました。2018年に亡くなってしまいましたが、晩年は『ちりとてちん』や『カーネーション』など、NHKの朝ドラにも進出した江波杏子さんです。

1970年代に撮られたと思われる写真

江波さんのちょっと変わった個性に惹かれてファンになり、中学から高校生ぐらいの時期に出演作品を追うようになりました。江波さんは「野平香純のひらかすみ」という素敵なご本名をお持ちで、そのエキゾチックな魅力は、他に類の無いものだったと思います。

その江波さんの若い頃の作品を纏めて観てみよう…と思ったのが、古い日本映画を観るようになったきっかけです。

江波さんは「大映」という会社の女優でしたから、当然 大映の映画を観る…ということになります。

自分にとってラッキーだったのは、大映の「カラー」が自分の趣味にマッチしていたことです。大映の特徴って何だろう…って考えると、もしかしたらちょっと “暗め” な雰囲気が何処かあるかもしれません。よく言えば真面目で重厚で、もしかしたらちょっとしつこかったり、コッテリしていたりもするかもしれません。合っているかどうか分かりませんが、「テーマとして扱う題材にタブーは無い」というような印象も個人的には持っています。

今と違って映画は「娯楽の王様」みたいな存在であり、作品には力が漲っていました。その会社その会社の個性なり特徴なりが作品に色濃く出ていたと思います。

 きっかけは江波さんでしたが、そのうち大映の映画そのものにハマるようになり、ひいては古い日本映画の虜となっていきました。

古い映画を観ていて楽しいのは、昔の日本の風景が見られることです。のっぽのビルばかりが建ち並び、何処も彼処も似たような印象の街の様子に僕は魅力を感じられません。いきおい、その不満を昔の映画を観ることによって埋めていくことになります。そして素敵だな…と思うのは、映画に出てくる人間の様々な個性だったり、綺麗な言葉遣いだったり、俳優の科白セリフの言い回しだったりします。

大映の俳優は今となっては好きな人ばかりで、京マチ子さん、若尾文子さん、市川雷蔵さん、川口浩さん、川崎敬三さん、野添ひとみさん、菅原謙二さん、叶順子さん、小林勝彦さん、浜田雄史さん・・・挙げていったらキリがありません。

大映の面白い作品…というのは沢山あると思いますが、自分の好みとしてはどうも「家庭劇」というのか「ホームドラマ」というのか…そういうのに惹かれるみたいです (ただのホームドラマでなく、大映らしい一種の「毒」のようなものも含まれているかもしれません) 。それとラブコメ的要素のあるものも大好きです。スリルに充ちた刺激の強いものも勿論面白いのですが、何回も観たいな…って思ったりするのは、自分の場合はそういうのに落ち着くようです。

タイトルだけ挙げていくと・・・『家庭の事情』『有楽町で逢いましょう』『私は二歳』『婚期』『くちづけ』『青空娘』『東京おにぎり娘』『古都憂愁  姉いもうと』『女系家族』『夜の蝶』『閉店時間』『濡れ髪牡丹』『たそがれの東京タワー』・・・ 別格として『女は二度生まれる』『浮草』・・・ そんな辺りでしょうか。


江波さんは大映時代、印象的な脇役で目立った存在ではあったと思いますが、主演作品というのには中々恵まれず、ようやくスターとしての輝きを得たのは、若尾文子さんのピンチヒッターで出た『女の賭場』という勝負師ものでした。これがヒットして “女賭博師” シリーズというものが延々と作られることになり、1966年~1971年に至るまでの、全17作というロングヒット作品となりました。一見任侠ものの様でいて、実際には形を変えた “スポ根もの” と言って差し支えないような内容で、丁半や手本引きによる緊張感に溢れた賭場のシーンが売り物の一大娯楽作品でした。

江波さんは映画作品に限って言うと、主演作として「これ」と言うものに中々恵まれなかった方のように思えてなりません。以前記事にも書きましたが、僕が一番好きな江波さんの映画は、大映が倒産して数年後の1975年に公開された、松竹の『再会』です。それと作品として素晴らしいのは、やはり『津軽じょんがら節』(1973年 ATG) ということになるのではないかな…と思います。


※『津軽じょんがら節』と『再会』を撮った斎藤耕一監督の作品の中で、江波さんが出演した映画がもう一本あります。三島由紀夫原作の『幸福号出帆』(1980年) 。この作品をいつかは観てみたいものだな…って思っています。




『ガメラ対バルゴン』


『閉店時間』


『女賭博師乗り込む』

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