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【試し読み記事】「序文」(Life is like a Melody ―麻枝准トリビュート)

序文

 二〇一五年。それは麻枝准のファンにとって特別な一年だった。
 制作開始から五年の時を経て、満を持して迎えたゲーム版『Angel Beats!』(「-1st beat-」)の発売。そして突如発表された新アニメ『Charlotte』の放送。
 二〇一〇年の『Angel Beats!』以降、一枚のコンセプトアルバムのリリースと数曲の楽曲提供を除いて沈黙が続いてきただけに、それはファンにとって紛れも無く麻枝准の〝幾度めかの〟再始動、再々始動というべき出来事だった。
 こんな年はあと何度あるかわからない。いや、もう二度とないかもしれない。ならば、何かやらなくては――そのような思いに駆られて出来上がったのがこの合同誌である。

 巻頭を飾るのは、麻枝氏の学生時代の友人であり、「麻枝准の殺伐RADIO」第二期第二回のゲストである吉田信彦氏へのインタビュー。今回のインタビューではラジオで語られた内容をさらに掘り下げつつ、麻枝氏の旧知の友人でありながら麻枝作品の熱烈なファンであるという立場から、独特の視点を提供していただいた。
 評論では、サブカルチャー批評の場で商業出版/同人出版を問わず活躍してきた村上裕一氏・峰尾俊彦氏、そして美術批評家であり、芸術大学で教鞭を執る土屋誠一氏に登場していただいた。多賀宮氏、北出栞氏の論考にも注目である。
 エッセイはラッパー/トラックメイカーのワニウエイブ氏を始め、こるすとれいんす氏、あらい氏、yuyagirl氏と、多様なバックグラウンドを持った方が集まった。各氏がどのようにして麻枝准の作品に出会い、そしてどのようにして惹きつけられてきたのか。そのような各々の受容体験に焦点を当てた文章がそろっている。
 テキストでの語りと並行して、ビジュアルでも麻枝作品の魅力を表現したいという思いから、中腹にはイラストページを設けた。処女作の『MOON.』から最新作の『Charlotte』までのイラストを担当していただいた各氏は、皆作品への強い愛を持った方々である。
 巻末に掲載される小説を執筆いただいたのは井坂優介氏だ。ある作家へのトリビュート誌の中で創作を書くことの意味を、深く追究した力作を寄せていただいた。
 そのほかに、本誌には二本の座談会/共同討議が収録されている。一つは麻枝准の音楽に焦点を当てた座談会。これまで何かしらの形で音楽に関わってきた参加者が、作曲家・作詞家としての麻枝准とその作品について語り合った。またこの座談会には〝特典音源〟として、参加者制作による(アレンジまたはオリジナルの)トリビュート楽曲が付随しており、記事末尾に記載のURLからダウンロードが可能だ。そして二つ目は巻末の共同討議。こちらはより広く麻枝准の魅力をテーマとした。スタイルは違えど麻枝准やその作品について並々ならぬこだわりを抱いてきた参加者が、果たして麻枝作品の核心とは何か、そして最新作の『Charlotte』とはどのような作品であったのか、本気の議論を行った。
 
 このように、本誌はあらゆる方面から麻枝准の魅力に迫り、そしてそれを昇華し表現した合同誌を目指した。麻枝准が好きな読者はもちろん、これから麻枝准を知りたいと思う読者にも楽しんで読んでもらいたい。そしてより一層だーまえへの関心や理解を深めてもらえれば幸いである。

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