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高齢期リハビリのココロエ6 高齢者施設入所攻略法


 想像してみてください。何もせず一日ボーッと壁や眼の前にいる方を見ながら過ごす毎日。時間が来たら職員が呼びに来てトイレへ連れて行かれ、食事が目の前に運ばれてきます。時々、レクリエーションなるやたらとテンションの高い職員がゲームをし、日が暮れたら就寝。
 最初は「何かすることないですか?」と利用者さんも職員に尋ねてきますが「座っててくださいね。もうすぐご飯ですから。」と1時間先の昼食の予定を伝える職員。
 作業療法には「作業剥奪」という言葉があります。するべき作業(活動)が奪われることを指します。作業が奪われると人は元気を失います。
 「何かすることないですか?」と尋ねてきた方も環境に適応して、何もしなくなる。そして次第に目の光を失っていく。
 『何もすることがない』環境が『ここは何もすることがない』という思考を生み出し『あきらめ』という感情や『何もしない』という行動につながるわけですね。うそみたいな環境ですが、このような高齢者施設はまだあります。
 前回も書きましたが、高齢者施設では生活を自分で作れる方は時間を有効に使うための道具を持っていけばいいんです。スマホや本、俳句用の便箋や編み物、なんでもいいと思います。自分の健康や生活の質は自分でキープしていく、これは高齢者施設に入所しても同じです。
 では生活を自分で作れない方はどうなるか、これは職員と一緒に作り上げるしかないんですよね。職員からすれば、「え〜、人が足りないから無理です」となるかもしれません。しかし少し工夫すればできるんですよ。特に見守り無しで活動ができる方へは準備や声掛けだけを行いあとは遠くから見守りをする。提供する活動は家事でも趣味でもいいんです。職員が行っているおしぼり配りでも、配膳下膳などなんでもいいんです。
 作業療法士は効果があるかどうかわからず迷いながらとりあえず徒手でやっているストレッチや筋トレをやめて作業提供に努めればいいと思います。
 ご利用者からしましたら「なぜ、高齢者施設に来てまで洗い物や掃除など、職員がするべき仕事をさせるんや!」と立腹される方もおられるかもしれません。なぜ家事かといいますと身体で覚えている、馴染みのある毎日の仕事といえば家事が1番良いからなんです。新しいことを覚えられる、行える認知機能があればエコバッグつくりやボランティア、お仕事もありだと思います。
 高齢者施設に入所した際のポイントは2つ『自分で生活を作れる方は自分で有意義に過ごす準備をしていく、無為に過ごさないこと』『職員が提供する作業や活動は余程、嫌でもない限り参加すること』です。

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