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高齢期リハビリのココロエ15 高齢者の役割ってなんだろう?

 昔は、人は狩りをして暮らしていました。若い男性の役割は獲物を仕留め、女性の役割は子育てと住居の管理やコミュニティに溶け込むことでした。いずれも集団で生きることで生存率を上げるための手段として、培われてきた生活スタイルだったと考えられます。ではその頃の高齢者の役割はどう変化したと考えられるでしょうか?狩りにもいけず、動きも制限されていたと考えられますが…。きっとその頃の高齢者は生存率を上げるための知恵を次世代に伝える役割があったと考えられます。
 現代においても思い当たるフシはあります。リハビリ場面で動く気力も体力もない方が、漬物の作り方や料理の味付け、野菜の育て方などを若い世代に伝えられるときはいきいきとされます。自身はそれを実際に行わなくても誰かに伝えているときは役割感と達成感を感じていらっしゃるのかもしれません。また、平均寿命が長い現代では孫の世話も大きな役割のひとつです。
 ただ、インターネットが普及した現代ではわからないことがあればネット検索をし、高齢者に聞くことがなくなりました。一方で嫁や娘と同居すれば家事は若い世代に移行していきます。そして孫もやがて大きくなり世話が不必要になります。衰えにより趣味もあきらめてしまいがちです。ともすれば高齢者の家庭内役割はなくなっていっているわけですね。そして役割がなくなれば頭手足を使うこともなくなります。つまり、老化が進み死が近づくこととなります。要介護状態になればなおさらです。
 この課題は高齢者本人と周囲の者が役割について意識しないことで知らず知らずのうちに家庭内役割喪失から要介護高齢者を生み出すサイクルを作り出してます。
 そのためこれからの高齢者は役割喪失を前提に、身体が弱っても自身で楽しむ、興味を満たせる、社会交流ができるような趣味をもつことが大切といえます。あるいはそれらが継続できる制度やサービスをあらかじめ勉強しておく必要があると考えます。まだ考えが柔軟なうちにです。役割を終えた高齢者になってからは遅いのです。
 要介護高齢者からよく聞く言葉「人に迷惑をかけるから○○はしない。」「車椅子になったらもう終わりや。」「わたしはこんな身体だから何もできない。」という考え方はもう古いです。どんな状態になっても家庭内役割がなくなったとしても、「自分で自分の健康と幸福をキープする努力をすること」がこれからの高齢者の役割ではないでしょうか。

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