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高齢期リハビリのココロエ17 転倒リスクと活動の天秤

「家族の間でも意見が分かれるんですよ。」と要介護高齢者(以下ご利用者)Aさんのご家族。お母さんに①転倒リスクはあるけど自由に家事や畑仕事をさせたい②転倒リスクがあるから動かないでほしい、この2つの意見が家族内であるようです。
わたしたちリハビリ職が「歩行レベルは自立です、家事もひとりでできますよ」と意見したとて、それを許容して実行に移すか否かの決定権はご家族にあることが多いわけでして。まあ、アクシデントがあり介護度が高くなった親をみるのはご家族であることが多いのでさもありなんですが…。
 高齢者本人の意見は、ですか?これが現場ではご本人のご意見が置き去りにされるケースが多いんです。たくさん理由が考えられるのですが例えば転倒リスクを自身で正確に把握できていないことがあったり、またはご利用者本人が「周りに迷惑をかけるから」「転倒したら寝たきりになるから」と考え生活に対して消極的になり周りに判断を委ねるパターンが多かったり、あるいはパワーバランス的に家族の意見が単純に強いことからご本人が決定することが少なかったりで、ご本人の意見は弱くなっていきます。
 さて話を戻しますとリスクと活動の天秤。どちらもメリット・デメリットはあります。リスク管理をとれば活動がない分、転倒の可能性は減ります。ただし身体は弱ります。活動をとると転倒リスクは増えますが心身が健康になり老化予防につながります。
 Aさんのご家族は「お母さんが畑仕事をしてて倒れていたならそれはそれ。本人も本望だと思います。」ときっぱり。リスクを許容しながら活動をとるわけですね、素敵です。わたしも賛成です。なんて素敵な親子なんでしょう。「最後まで好きなことしてね、なるようになったら私達がなんなりと手配するから」といった心意気です。
 願わくばAさん親子のような方たちがこれから増えるといいのですが。なんにせよご本人による自己決定、そして活動のある、いきがいのある生活は老化予防や生活満足ににつながるため作業療法士としてはおすすめなのですが、リスク管理をとるお気持ちもわかります。むずかしい!


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