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嘘つきのレッテル
友達と遊ぶには、いつどこで誰と何時から何をして遊ぶのかを、1週間前にはいいなさいと母親にいわれていた。
母親の許可をとってから約束をしなさいと。
友達は、学校帰りに当日どこで何時から遊ぶかを決める。そして、明日の登校の約束をする。
そして、無断で家に他人をあげてはならないと、きつく言われていた。
自宅に1人でいるときは、来訪者の対応をしてはならない。
厳しい決まりだった。
だから私は、ノラ猫といつも遊んでいた。
ある時、近所のみなえちゃんが、こんなことを言い出した。
「今日は家にいるの?私が迎えに行ったら、おばちゃん、絶対いいっていうよ!」
「いや、お母さんの機嫌が悪くなるから、無理だよ。ごめんね。」
みなえちゃんのお母さんはとても心が広い。誰でも歓迎してくれる。
みなえちゃんは、いつも人の輪の中心にいてニコニコしている。
うちの母は、いつもみなえちゃんを褒めていた。
帰宅してしばらくすると、インターフォンが鳴った。嫌な予感がした。
みなえちゃんだった。
「お母さんが、ぽんちゃんちにお裾分けをもっていきなさいっていうから来ました。
私これから遊びにいくんだけど、ぽんちゃんと遊びたいから連れていっていい?」
みなえちゃんの、下手くそな棒読みが聞こえた。私はドキドキして廊下から覗いていた。
母は、私の方を睨みつけると、みなえちゃんに優しく
「ごめんね。これからおばあちゃんのお見舞いに車ででかけないといけないの。」
みなえちゃんは食い下がる
「ぽんちゃんと遊びたいな。ぽんちゃん、一緒にいかないとだめ?」
母は
「おばあちゃん、手術をして大変なの。だからおばあちゃんもぽんちゃんに会いたいのよ。ごめんね。」
そう言ってみなえちゃんを返した。
その後は、母はいつものように般若になった。
「子供の癖に友達に嘘をつかせて、親を騙そうとするなんて、なんて末恐ろしい。嘘つきは泥棒の始まりなんだ。」
殴られて、ひたすら罵詈雑言を浴びた。
次の日、みなえちゃんには、
「ぽんちゃん、昨日、用事があったんじゃん。」
と冷たく言われた。
それから、みなえちゃんとは学校でも遊ばなくなった。
私は何も頼んでいない。
嘘もついていない。
なんで嘘つきになってしまうんだろう。
私が悪いんだ。
私はこの血を受け継いでいるから、嘘つきにされるんだ。
私の存在が悪いんだ。
そう理解するしかなかった。
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