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猫被り系パワハラ上司を打ち倒せ3

物語の中で中田も言っていますが、
・パワハラ上司には1対1で戦ってはいけない。余計不利になるだけだ。
このことを頭に入れた上で今回の物語を読んでみてください。

「ああ、そうか、君がそう言うのなら」そう言って課長が取り出したのはメモ帳だった。
そこには今まで俺が課長に話した愚痴、自分の弱みがずらりとある。
「脅す気ですか…」
「別に脅す気はない、君の仕事に精が出るように後押ししているだけだよ」
この時俺は悟った、こいつはパワハラ上司、しかも最初は猫を被って自分が支配できるかどうかを探った上で仕掛けてくる、パワハラ上司の中でもタチの悪いやつなのだと。
俺は思いつく限りの反論をした。しかし弱みを振りかざされては勝てるはずもない。課長は俺を言い負かした後、上機嫌で帰っていった。奴隷が1人できたのだと思っているのだろう。課長の手に俺の弱みがある限り、俺は会社を迂闊に辞めることもできない。

俺は途方に暮れていた。どうすればいい。
ふとオフィスを見渡すとまた中田がいた。中田がこっちを見た。
「お前、あの課長にやられたんだな」
「中田さんもですか?あなたも弱みでも握られたんですか?」
「いや、俺は入社した時から目をつけられていたよ。昇進の話が出てから余計あたりがきつくなったかな。何かと仕事を押し付けてきやがる。」
そして一呼吸おいて中田はこう続けた。「お前と課長の話聞いていたが、あの課長はDV男のようなものだ。要はアメを与えて弱みを握り、半永久的に支配する。」

「僕はその手にハマってしまったのかもしれませんが、中田さんは違うんですよね?弱みを見せてのに…」
「上司ってものは自分が上に立ってたい生き物なんだよ。特にああいうタイプはな、自分より仕事ができる後輩があらわれてもそれを認めたくない。」
「だけど、仕事ができても可愛がられる奴もいるじゃないですか?」
「それは処世術だったり、上司に甘えるのが上手いやつだ。俺のように無口でクール気取ってる奴は、上司から嫌われるってのが定石なんだ。」
「そこまでわかっていてなんで、無愛想貫くんですか?もっと上手い生き方もあるのに…」
「俺はお前が思ってるほど凄くはない。周りから見れば仕事は多少出来るかもしれないが、愛想も人付き合いも悪い。あの上司に媚びるのが嫌い…というよりは生理的にできないって感じだな。だから、頭でわかっていてもそういう生き方はできない。俺は俺のやり方でのし上がろうと思っている。」

「頭でわかっていても…ですか…」
俺は初めて中田という人物を知った気がした。こんなにも不器用な人がいるのだなと。完璧な人だと思っていた。世の中目に見えるものが全てではないとはよく言ったものだ。

「それと…」
俺が会社を出ようとすると、中田は最後にこう言った。
「これも頭でわかっていても、俺には実践できないことだが、公の場であの課長と勝負することを勧める。DV男を想像してみろ、1対1で勝負して勝てないだろ。それにあの課長から嫌がらせを受けているのは俺達だけとは考えづらい。公の場で、そして細かく攻撃すれば自然とバックアップを得れるんじゃないか?公の場で攻撃しながら、味方を増やして、あの課長の化けの皮を剥がすんだ」
思わぬ提案に度肝を抜かれた。
「でもどうやって…」
「俺は糸を垂らしただけだ、それを登るか登らないかは君次第だろ。それに全部他人から答えを教えてもらおうという姿勢だから、あの課長に弱みを握られるんじゃないか?」
俺はムッとなった。今の言い方は気にくわない、ただこいつの言ってることは正しい。
俺は一晩、課長に一矢報いる方法を考えた。
これしかない…

「この納期で間に合うのか…」
「次の商品の企画ですが…」
会社のおよそ半数が参加する月に一度の会議の場に今俺はいる。さあ作戦開始だ。


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