嫉妬。それは深い愛情

今回のテーマは「SFで近親相姦している親子を見守る幽霊の共感できる話」です。

「嫉妬。それは深い愛情」
 太陽が地球に近づいたことで、地球の温度は急上昇し人類の大半が死滅した。生き残った者たちは地球外へ脱出し、生活できる星を探した。科学者の父と母を持つフィオナもその一人だった。宇宙空間に脱出し彷徨う中で、もともと身体が弱かった母親は死に、フィオナは父親と二人で暮らすようになった。

7年後――

 未だ宇宙区間を漂っている宇宙船の中に二人の人物。その二人を見守る実体を持たない一人の女性がいる。
「お父さん、大丈夫?」
 少女が父親に向かって問いかける。
「平気だよ」
 そう答える父親。彼は深い愛を注いでいた妻を失い、今もなお失意の淵を彷徨っていた。
『大きくなったのね、フィオナ』
 優しい眼差しで呟く女性。彼女は少女の死んだ母親だ。今は幽霊となって我が子と夫を見守っている。
「フィオナは、母さんに似てきたな」
 虚ろな目で少女を見つめる父親。
「娘だもの」
 父の目に映っているのは自分ではなく母親だ。少女はそう思うとうまく笑う事が出来なかった。その光景をただ見つめる事しか出来ない母親。
『何事もなければ良いけど……』
 その日の夜。父親の部屋を少女が訪れる。父親は規則正しい寝息を立てて眠っている。そんな父親に近づく少女。
「お父さん……」
 甘美な音を含む声で父親の耳元に顔を近づける少女。その気配で目を覚ます父親。だが起きたばかりで微睡んでいるのか少女を妻だと勘違いをする。
「ん……」
 口づけを交わす親子。それを見つめる母親。
『あなた、フィオナ。ごめんなさい』
 母親の一筋の涙を流し、その後現れる事はなかった。-fin-


※解釈は読者様にお任せいたします。

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