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SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種による自然免疫抑制。G-quadruplexes、エキソソーム、MicroRNAの役割について

久々の投稿になります。普段はコロナ関連の論文は読んで終わりなのですが、今回の論文は結構衝撃的だったのでnoteにまとめてみます。内容がめっちゃ難しいのですが、ワクチンによる自然免疫抑制がかなり詳しく書かれている論文です。Food and Chemical Toxicologyというインパクトファクター6程度の雑誌ですが、免疫学的示唆に富んでおり、説得力があると思います。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S027869152200206X



ハイライト
-mRNAワクチンは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の持続的な合成を促進する。
-スパイクタンパク質は神経毒性があり、DNA修復機構を障害する。
-I型インターフェロン反応の抑制により、自然免疫に障害をもたらす。
-mRNAワクチンは、感染症や癌のリスクを高める可能性がある。
-コドン最適化により、G-rich mRNAが生じ、予測できない複合作用をもたらす。

ハイライト

1. はじめに
2. インターフェロン:がんサーベイランスを中心とした概説
3. mRNA ワクチンの設計における考慮点
4. ワクチンmRNAにおけるGCエンリッチメントと潜在的なG4(pG4)構造
5. タイプI IFNとCOVID-19
6. 細胞内ハウスキーピングのためのメチル化戦略は、一般にワクチンmRNAでは省略されているのだろうか?
7. エクソソームとマイクロRNA
8. DNA修復の障害と適応免疫
9. 水痘・帯状疱疹の再活性化
10. 免疫性血小板減少症
11. PPAR-α、スルファチド、肝疾患
12. Guillain Barré症候群と神経損傷症候群
13. ベル麻痺
14. 心筋炎
15. ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に関する留意点
16. 結論


1−8まではmRNAワクチンの特徴と、それによる免疫システムへの影響が書かれています。例えば2のがんサーベイランスを中心とした概説を引用します。

過去30年間、効果的で安全な核酸治療ツールの開発を目的としたmRNA技術プラットフォームは、コード化された製品の不安定性、圧倒的な自然免疫原性、および送達方法論に関する深刻な障害を克服したと言われています(Pardi et al.、2018年)。遺伝子ワクチン接種ツールとしてのmRNA利用の大きな成功例の1つは、がんに対する強固な免疫の導入に関するものです(Van Lintら、2015)。さらに、ファブリー病のような希少な遺伝的代謝障害の場合、様々な種類のタンパク質を復元または置換するmRNAの可能性は、他の薬物が成功しないことが証明された大きな潜在的治療代替手段を提供しています(Martini and Guey, 2019)。しかし、感染症に対する遺伝子ワクチンとしてのmRNAの使用の場合、予備的な安全性調査は、一般集団における世界的な使用には時期尚早であると思われた(Pardiら、2018;Doulberisら、2021)。

2. インターフェロン:がんサーベイランスを中心とした概説 より

これはつまり、遺伝子治療を目的として開発されたmRNA技術を感染症に対する遺伝子ワクチンとして使用するには時期尚早ですよ。ということです。
他にも、3では、

むしろ予言的に、ForniとMantovaniによる広範なレビュー(2021)は、mRNA SARS-CoV-2遺伝子ワクチン接種による自然免疫の発達について、深刻な疑問を投げかけている。著者たちが宣言しているように "短い開発期間と採用された技術の新規性により、これらのワクチンは、時間の経過のみが解明を可能にするいくつかの未解決の問題とともに展開されるであろう。"と宣言している。

3. mRNA ワクチンの設計における考慮点 より

つまり、設計としてはよくできているが、採用された技術の新規性は、未解決の問題が多すぎる。ということです。さらに4では、

最近の早期リリース研究で、COVID-19ワクチンのmRNAは、ワクチン投与後長い間、二次リンパ組織の胚中心に存在し、ワクチン接種後少なくとも60日までスパイク糖タンパク質を合成し続けることがわかった(Röltgenら、2022年)。このことは、腕の筋肉にmRNAを取り込んだ免疫細胞が、B細胞やT細胞を毒性抗原にさらすために、おそらくリンパ系に移動してリンパ節に至ることを示唆している。リンパ節にmRNAが残存し、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質を持続的に合成することは、上記のようにmRNA技術に関わる巧妙なエンジニアリングを反映したものである。

結局、ナノ脂質と高度なmRNA技術によって、外来RNAに対する通常の免疫反応を回避し、外来RNAウイルスに対する強力な抗体反応を作り出すことができるのである。

4. ワクチンmRNAにおけるGCエンリッチメントと潜在的なG4(pG4)構造 より

ここはめちゃ難しいのですが、高度なmRNA技術として、①シュードウリジン、と②GCエンリッチメントという2つの技術を解説したいと思います。

①シュードウリジン
生体内にある私たちのmRNAはDNAから作られ、さらにこのmRNAを元にタンパク質を作ります。通常mRNAは1つのタンパク質ごとに作られ、タンパク質が作られたらスッと消えてなくなります。mRNAワクチンはスパイクタンパク質を作るmRNAなのですが、スパイクタンパク質を作ってすぐに消えてもらっては困るので、細胞内で安定的に存在できる(長くスパイクタンパク質を作り続けることができる)ために通常のmRNAに細工がしてあります。mRNAの構成成分で通常はU(ウラシル)という塩基が使われているのですが、これをシュードウリジンに変換することで、細胞内での安定性が保たれることが2011年に発見されました。

②GCエンリッチメント
mRNAからタンパク質を作る過程で、コドンという言葉が出てきます。これはmRNAの塩基配列3つの組みのことで、この3つに対してアミノ酸が1つ並びます。タンパク質はアミノ酸の連結集合体なので、コドンの種類によって並ぶアミノ酸が選ばれ、それが連結してタンパク質が作られる仕組みになってます。ただコドンとアミノ酸は1:1の関係ではなく、一つのアミノ酸に対して1-4つくらいのコドンがあります。mRNAの塩基はA,G,U,Cの4種類あって、そのなかの3つの塩基の並び順でコドンが決まるのですが、例えばバリンというアミノ酸は、GUU、GUC、GUA、GUGという4つのコドンがあります。そしてなぜかわかりませんがGとCを含む塩基配列が多い方がmRNAが長期間存在することがわかっています。このためバリンを表現するためにはGUU、GUAよりGUC、GUGの配列を使った方がmRNAが長持ちするので、スパイクタンパクを表現するmRNAの塩基配列ではこのようにG、Cを意図的に多く含むコドンを使って塩基配列を作っているため、通常の生体内に存在するmRNAより長期間存在できるのです。

9−14まではそれぞれの副反応の病名の章立てで、副反応が起きるメカニズムが書かれていました。最後に論文全体の概要と16の結論を載せておきます。


概要
SARS-CoV-2のmRNAワクチンは、Covid-19の公衆衛生危機に対応して市場に導入された。感染症の文脈でmRNAワクチンを活用することは、前例がない。ワクチンmRNAの多くの改変は、mRNAを細胞防御から隠し、生物学的半減期の延長とスパイクタンパク質の大量生産を促進します。しかし、このワクチンに対する免疫反応は、SARS-CoV-2感染に対する免疫反応とは大きく異なる。本論文では、ワクチン接種がI型インターフェロンのシグナル伝達に重大な障害を引き起こし、それがヒトの健康に多様な悪影響を及ぼすという証拠を提示する。ワクチンのナノ粒子を取り込んだ免疫細胞は、重要なマイクロRNAとともにスパイクタンパク質を含むエクソソームを大量に循環放出し、離れた部位の受容細胞においてシグナル伝達反応を誘導する。さらに、タンパク質合成とがん監視の制御における深刻な障害の可能性も明らかにした。これらの障害は、神経変性疾患、心筋炎、免疫性血小板減少症、ベル麻痺、肝臓疾患、適応免疫の障害、DNA損傷反応の障害、腫瘍形成と因果関係がある可能性がある。我々は、VAERSデータベースから我々の仮説を支持する証拠を示している。我々は、mRNAワクチンの包括的なリスク/ベネフィット評価は、公衆衛生に積極的に貢献するものであると信じています。

16. 結論
SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン接種の安全性と有効性については、米国および世界中の公衆衛生装置から揺るぎないメッセージが発信されてきた。Günter Kampfが最近Lancet Regional Healthに寄せた手紙(2021b)に示されるように、その有効性はますます疑わしくなってきている。Kampfは、ワクチン接種者がワクチン未接種者と同じように病気を広げる可能性が出てきたことを示すデータを提供した。彼はこう結論づけた。"公衆衛生管理策について決定する際に、ワクチン接種者を可能かつ関連性のある感染源として無視することは、重大な過失であると思われる。" さらに、mRNA遺伝子ワクチンの中期および長期の副作用を評価するための第I、II、III相試験が不十分であったため、被接種者の自然免疫に対する抑制的な影響について誤解を招いた可能性がある。

いかがでしたでしょうか?難しい言葉がたくさん出てきますが、全てを理解する必要はありませんし、私も理解しておりません。私がこの論文で最も強調したいことは、最新の技術を使ってmRNAが長期間存在してしまうことで、スパイクタンパクが大量に生成され、それにより思っていた以上に自然免疫が抑制されてしまう。ということです。そして、遺伝子治療を目的として開発されたmRNA技術を感染症に対する遺伝子ワクチンとして使用するには時期尚早ですよ。ということだと思います。今後このワクチンに関する様々な検証が行われると思いますが、しっかり情報を追っていきたいと思います。


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