心臓血管外科手術記録 2020/12/08

亜急性大動脈解離、偽腔拡大のある51才男性

9月25日発症の急性大動脈解離Ⅲb retro type、上行大動脈は血栓閉塞しており偽腔径は7−8mm程度、entryはLSCA直下にあり、large entry small rentryの典型で真腔の狭小化を認め大動脈分岐部付近まで解離していた。ひとまずB型解離に準じてICUで経過観察を行っていたが、経過中に偽腔径が徐々に拡大したため、一旦退院したのち予定手術を行う方針に。若年者であることと、entryがLSCA分岐部にかなり近く TEVARではlandingが取れないこと、また上行大動脈の血栓化があったためトータルアーチの方針に。open stentを用いて治療する計画を立てた。自己血は1600ml貯血した。

手術は左鎖骨下動脈、右大腿動脈を露出してから胸骨正中切開。無名静脈をテーピングしてからヘパリン化し、左鎖骨下動脈に9mm人工血管を吻合して送血管を接続した。右大腿動脈は18Fr送血管を挿入。右房に糸をかけて脱血管を挿入してポンプオン。右上肺静脈からベントを挿入してクーリングを開始した。無名静脈を2箇所テーピングして頭側に引き、頸部3分枝のテーピングを行った。LSCAのテーピングは深かったが可能だった。27度になった時点で、まずはLSCAに繋いだ人工血管を脳分離回路に切り替えた。ついでLSCAのテーピング部分を結紮した。循環停止として上行大動脈を開き、BCA ,LCCAの順に脳分離回路を接続して1000ml/minで送血開始した。選択的冠還流を行い心停止を得た。

末梢側をCCAとSCAの間でトリミング、亜急性大動脈解離のため外膜の癒着が強く難しかったが、なんとか外膜を同定してトランザクション。4−0BBフェルト付きで4点外内で固定した。エントリーはトランザクションから1cmの距離に2/3周に渡り存在した。(TEVARでの治療はかなり難しいことがわかった。)27mm9cmのオープンステントを11cm挿入した。偽腔からのバックフローが増加した。OSGにも外内で針を通して、24mm4分枝付きを2重に折りたたんだもの挿入し外内でかけてひだの内側で結紮した。そのまま内外で90度運針し、隣の糸と結紮をそれぞれ繰り返した。意図が緩んでいる箇所のみフェルト付きで補強してからバイオグルをかけた。分枝から循環再開して32度まで加温した。CCAと人工血管を5−0で吻合、その後中枢側吻合へ。中枢側のトリミングを行い、こちらも癒着がひどく剥離が難しかったが、外膜の肥厚があったため4点固定はせずにフェルトでrunningで吻合した。バイオグルを塗布した。ルートからベントを挿入してhotshot後に遮断解除、ベントをルートに付け替えてサクションした。BCAの再建を行い、最後にLSCAに吻合した人工血管を胸腔内を通して縦隔に誘導して9mm人工血管と吻合した。人工心肺の離脱は問題なく、出血も対してなかった。

閉胸はワイヤーを6本用いたが、補強のために胸骨プレートを使用した。ドレーンを3本、PMワイヤーを追加して終了。

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