心臓血管外科手術記録2020/12/14

66歳女性のA型解離に対する緊急トータルアーチ

2020年12月14日朝8時発症のA型解離。搬送時には右手のmarperfusionを認めていた。造影CTでIMH型のDebakey1型であり、neck vesselは3本とも解離、BCAの狭小化が右手のmarperfusionの原因と考えられた。頸部分枝が解離しており、緊急のトータルアーチが必要と判断した。

ICUでCV Aline(左手)を挿入。手術室で全身麻酔導入、TEEを挿入、心機能は良かったが解離が基部まで進展しており、ARはmild認めていた。

左鎖骨下動脈及び右大腿動脈を露出、BMI30とobesityが強く剥離にかなり難渋した。ヘミカラーで皮膚を切開し胸骨正中切開、静脈圧が高くかなりの出血傾向、頸横静脈は結紮した。無名静脈をテーピングして、心膜解放前に送血路を確保することとした。ヘパリンを投与してまずは右大腿動脈に18Fr送血管を挿入して、側枝から血圧を出しておいた。左鎖骨下動脈に9mm人工血管を吻合し2本の送血路を確保した。心膜を解放、血性心囊液が中等量廃液されたが、血圧の上昇はわずかであった。心膜を吊り上げ右房に脱血管を挿入してCPBを開始、corecoolingを開始した。RtuPVからLVベントを挿入した。

頸部3分枝をテーピング。BCA ,LCCAはCT通りbovineとなっていたので、transectionは予定通りLCCAとLSCAの間で行うこととした。LSCAのテーピングはケリーを使うとやりやすかった。27度で左鎖骨下の9mm人工血管を脳分離回路に接続し循環停止、LSCA中枢を3重結紮した。BCA ,LCCAはislandでトリミングしそれぞれ脳分離ヲッ開始した。冠動脈に選択的に心筋保護液を投与して心停止を得た。

transection、外膜の同定は可能であった。エントリーはLSCAの小腕側に存在したため、transecitonはその奥まで進め、エントリー切除を行った。4-0BBフェルト付きで4点固定してから血栓を除去し、バイオグルを塗布して外膜を固定した。FETは27mm*9cmを11cmほそ挿入し、transecitonと同じ位置でトリミングして4−0をかけた。内側に24mm人工血管を2重に折りたたんだ状態で入れ、外内で縫合して結紮、その後内外で90度ずつ運針し、結紮した。バイオグルを多めに塗布した。

足の送血管を抜去して側枝送血を再開、32度まで加温、中枢の吻合も同様に24mm人工血管を折りたたんで使用した。交連部ギリギリまで切り込み、3点ともう一点の4点を吊り上げ、偽腔の血栓をしっかり除去してバイオグルを入れARを制御するように吊り上げて吻合した。graftーgraft吻合後に基部からベントを挿入してhotshotを行い遮断解除した。36度まで加温、程なく自己脈が出現した。BCA ,LCCAの順にトリミングを行い5−0で吻合、BCAは全周性に解離しておりnative内外で吻合した。左鎖骨下の人工血管を胸腔内を通して縦隔に誘導し側枝と吻合した。その際静脈の枝を一部損傷した。全ての吻合部からの出血傾向が見られたためバイオグル、ボルヒールを塗布した。

人工心肺からの離脱は問題なし、RVにペーシングを挿入。ベント抜去部、脱血管挿入部はフェルト付きで補強した。graft-graft吻合部から出血を認めていたため人工血管を用いてはちまきのように巻いた。鎖骨下静脈の枝から一部出血したが、圧迫+ボルヒールで止血した。心膜を半閉鎖、ドレーンは3本挿入、胸骨閉鎖はBMI30のためワイヤー4本+胸骨プレート3つを用いた。皮下ドレーンを挿入して2−0PDS、3−0PDSを用いて皮膚を閉鎖。鎖骨下、大体も同様に閉鎖して手術を終了した。術後のTEEではARは焼失していた。

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