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令和5年行政書士試験合格発表を受けて

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https://youtu.be/4H1UeTxTstQ

 令和5年の本試験は残念な結果でしたが、まだ法律の学習が十分でない方にとっては、長い目で見ると、良い結果なのかもしれません。

 法律科目を十分に学習する機会がないまま合格してしまうと、法律知識の基礎がしっかりと頭に定着していないにもかかわらず、その後じっくりと法律を学習する機会を失ってしまう方もいます。例えば、初学者が800時間程度の学習しかしていないのに、本試験の問題の相性などの幸運に恵まれて合格できたような場合と、5000時間位かけて合格したような場合とでは、当然5000時間かけて合格した人の方が、法律知識の基礎の定着がしっかりしていて、法律知識を忘れにくいわけです。

 つまり、長時間じっくりと勉強して合格した人の方が、合格後に仕事や日常生活で法律知識を使える能力が高いのです。行政書士の短期合格者の中には法律知識が十分でない方もいらっしゃって、近い将来実務の世界に進むまでに、法律知識を補充しないと仕事や日常生活のどこかで失敗してしまうのではないかと思うことがありました。例えば、「帰化に関する処分」は行政不服審査法の審査請求ができると勘違いしていたり、成年被後見人は遺言ができないとして遺言ができる場合を説明せずに完全否定したり、消滅時効期間が経過すれば援用しなくても消滅時効の効果が生じると説明していたり、金銭消費貸借契約書で遅延損害金と記載すべきところを利息と表現してしまう短期合格者が過去にいました。受験生のうちは、それでも合格してしまえば笑い話ですみます。しかし、法律知識が不足しているのに、短期合格してしまった方は、その後法律知識を一生懸命勉強しなくなる傾向にあり、そのまま法律知識の補充をしないで、実務や日常生活の場面で同じようなミスをしてしまうと、今度は依頼者や親族・知人から信頼を失ってしまいますし、場合によっては依頼者や親族・知人に損害を与えてしまいます。

 このように考えると、じっくりと学習時間をとって合格した人の方が、実務や仕事、日常生活で法律知識を間違えずに使える可能性が高く、長い目で見るとその方が良いのではないかと思えるのです。

 もし、来年受験されるお気持ちになったのならば、今年は今までより深い学習を意識し、今度こそ苦手科目をじっくりと学習してみてください。
 毎年出題数の少ない憲法は、過去問だけでは全然足りませんので、条文1つ1つの意味と趣旨、そして、重要判例1つ1つの、事案・争点・理由・結論を、腰を据えて学習してみてください。

 民法も、毎年出題数が少なく、過去問だけでは全然足りませんので、不足分は行政書士用の予備校教材より1まわり範囲の広いテキストで補う必要があります。事例が豊富な教材を使い、どんな事例で、どんな要件をみたすと、どんな条文が適用されて、どんな効果が生まれ、誰がどんな請求ができるのか、丁寧に整理していきましょう。
 行政法は、前半(総論部分)は、抽象的な用語の整理・記憶の徹底が必要で、後半の手続法は手続きの全体像を掴んでから、1つ1つの重要条文や判例を押さえ、それらが過去問でどのように出題されているかを吟味する流れが必要です。行政法がもっとも抽象的で記憶しにくいため、記憶が定着しない方は、記憶の仕方まで工夫しておく必要があります。

 詳しい勉強法は、当チャンネルの勉強法動画を、よろしければご視聴ください。
 ということで、今回お伝えしたかったことは、長い目で見たら、悪いことは悪くないということです。令和6年1月31日の合格発表時点での自分の努力の成果は通過点であって、本当に大事なことは、合格後の未来に法律知識を実際に使う場面になって、自分や家族や依頼者の利益を守れることが最終目標なのです。

 ということで、受験生ではなかなか気づけない、実務家の視点で、今日はお話をさせていただきました。
 
 また、気持ちの整理ができて、再受験してみたいという気持ちになったら、ぜひ当チャンネルにお立ち寄りください。受験や実務で有益な情報を今後も提供していきます。
 

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