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行政法7回 行政行為の効力・行政裁量

問1と2は、YOUTUBE動画行政法7回と同内容です。この分野が苦手な方は、一番下に、司法試験の世界で定評のある行政法学者のエッセエンスを行政書士試験用に簡潔にまとめた「イメージ・記憶促進ノート」を作成しましたので、ぜひご活用ください。
出題傾向から入ります。
行政行為の効力と行政裁量の両方を合計すると、
過去10年で10回出題されています。毎年どっちかは出題される覚悟が必要です。特に行政裁量は、判例を簡単には覚えられない受験生が多いのですが、それすら気づいていない受験生も多いやっかいなテーマです

問1 行政行為の効力に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
ア 公定力とは、行政行為の瑕疵が重大かつ明白でも、権限ある行政庁又は
  裁判所から取り消されるまでは、有効な行政行為と扱われることをいう。
イ 執行力とは、行政行為により命じられた義務を相手方が履行しない場合
 に、行政庁が裁判所から確定判決等の債務名義を得て、行政庁が自ら強制
 執行を行うことをいう。
ウ 不可争力とは、一定期間が経過したときに、国民及び行政庁の両方から
 行政行為の効力を否定できなくなることをいう。
エ 審査請求に対して裁決をした行政庁は、その裁決を自ら変更することは
 できない。
オ 行政行為は、特別の規定がない限り、書面を発信したときに、効力を生
  じる。



問1の解答
エが最も適切
アは誤り
アの「公定力は、行政行為の瑕疵が重大かつ明白でも、権限ある行政庁又は裁判所から取り消されるまでは、有効な行政行為と扱われることをいう」という文章は誤り行政行為の瑕疵が重大かつ明白な場合、行政行為は無効であり、無効な行政行為には公定力は働かない

イは誤り
イの「執行力とは、行政行為により命じられた義務を相手方が履行しない場合に、行政庁が裁判所から確定判決等の債務名義を得て、行政庁が自ら強制
執行を行うことをいう」という文章は誤り執行力は、法律に基づき、裁判所を通さずに強制執行をすることができることをいう

ウは誤り
ウの「不可争力とは、一定期間が経過したときに、国民及び行政庁の両方から行政行為の効力を否定できなくなることをいう」という文章は誤り。不可争力により、一定期間経過後は、国民側からは争えなくなるが、行政庁は自ら行政行為を取消・撤回ができる

エが最も適切
エの「審査請求に対して裁決をした行政庁は、その裁決を自ら変更することはできない」という文章が最も適切。不可変更力が働く場面なので、基本的には正しい。

オは誤り
オの「行政行為は、特別の規定がない限り、書面を発信したときに、効力を生じる」という文章は誤り。行政行為は、書面の交付・送達等により、相手方がその内容を了知できる状態に置かれたときに効力を生じる。到達主義



問2 行政裁量に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
ア 行政裁量は、行政行為及び行政立法の領域で認められ、行政計画や行政
 契約の領域では認められない。
イ 法律で認められた行政庁の裁量権の範囲内にある場合、違法の問題は生
  じないが当不当の問題は生じうる。
ウ 自由裁量行為については、裁量権の逸脱・濫用の有無について、裁判所
  の審査はなされず、行政庁の処分が取り消されることもない。
エ 行政行為が、誤った事実認定を前提として行政庁からなされたが、法律
  の解釈自体は誤っていない場合、裁判所の審査は及ばない。
オ 比例原則は、裁量権の逸脱・濫用の判断基準にはならない。



問2の解答
イが最も適切
アは誤り
アの「行政裁量は、行政行為及び行政立法の領域で認められ、行政計画や行政契約の領域では認められない」という文章は誤り。行政裁量は、行政行為・行政立法・行政計画・行政契約の領域で認められる余地がある(櫻井敬子・橋本博之「行政法」)。

イは最も適切
イの「法律で認められた行政庁の裁量権の範囲内にある場合、違法の問題は生じないが、当不当の問題は生じうる」という文章は正しい。裁量権の範囲内にあれば、当不当の問題となることはあっても、適法・違法の問題にはならなず、司法審査は及ばない(櫻井敬子・橋本博之「行政法」)。

ウは誤り
ウの「自由裁量行為については、裁量権の逸脱・濫用の有無について、裁判所の審査はなされず、行政庁の処分が取り消されることもない」という文章は誤り。自由裁量行為でも、裁量権の逸脱・濫用があるかないかについて、裁判所の審査はなされ、裁判所が裁量権の逸脱・濫用があると判断すれば、行政庁の処分を取り消す場合がある(櫻井敬子・橋本博之「行政法」)。

エは誤り
エの「行政行為が、誤った事実認定を前提として行政庁からなされたが、法律の解釈自体は誤っていない場合、裁判所の審査は及ばない」という文章は誤り。重要な事実に誤認があったり、行政庁の判断がまったく事実の基礎を欠く場合であれば、その行政行為は違法となるので、裁判所の審査が及ぶ(櫻井敬子・橋本博之「行政法」、マクリーン事件や最判昭29・7・30等)。

オは誤り
オの「比例原則は、裁量権の逸脱・濫用の判断基準にはならない」という文章は誤り。比例原則等の行政法の一般原則も、裁量権の逸脱・濫用の判断基準となる(櫻井敬子・橋本博之「行政法」)。行政法の一般原則の説明は、このnote記事の行政法1回有料記事に詳しく掲載。


「行政行為の効力・行政裁量」のテーマで、知識の整理や記憶の定着に自信がないと感じている方は、「イメージ・記憶促進ノート」note記事をご活用ください。

イメージ・記憶促進ノート 「行政行為の効力・行政裁量」
目次

第1 さいしょに 
 
行政裁量の5段階区分を知らないと、過去問出題の判例も整理が困難
第2 行政行為の効力
1 公定力 
 🔴覚え方 短く頭の中でイメージ化
2 不可争力(形式的確定力ともいう)
 🔴覚え方 短く頭の中でイメージ化
  💣ひっかけ対策➀
  ❓受験生の疑問
   なぜ、行政行為が無効な場合には、不可争力は生じないのですか?
  👨回答
  💣ひっかけ対策➁ 
3 自力執行力
 🔴覚え方 短く頭の中でイメージ化
 ❓受験生の疑問➀
  行政法上、自力執行力がない債権は、行政機関はどうやって債権回収
   をするの?
 👨回答
 ❓受験生の疑問➁
  行政法上自力執行力がある債権は、行政機関は裁判をして勝訴判決をも
  らって裁判所の強制執行手続きを利用することはできないのですか?
 👨回答
4 不可変更力 
 🤔受験生が誤解しやすいポイント
 🔴覚え方 短く頭の中でイメージ化
 💣ひっかけ対策
第3 行政裁量 ~行政書士用の教材だけで理解できてますか?~
1 さいしょに
2 行政行為のどの段階に裁量が認められるかという時系列の視点
 🔴覚え方 行政庁の判断のプロセスを5段階でイメージ
 【行政庁の判断のプロセス】1⃣から5⃣ 
3 行政行為が裁量権を逸脱・濫用し違法か否かの判断基準には何があるか
 🔴覚え方➀
  膨大な判例を覚えきるのは大変なので、次の8個を公式として覚える。
 【イメトレ】 エホバの証人剣道不受講事件(最判平8・3・8)を引用
 「一般論の文章」か「事件にあてはめた結論」かをイメージする練習
  👨解説:「~の場合に、違法」という言い方に注目
第4 さいごに

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