インターネットカフェのやべー客のお話


本記事は某鯖のアドベントカレンダー企画の1つとして寄稿した記事となります。

インターネットカフェ、通称ネカフェ。皆さん使われたことはありますでしょうか。
3,000円くらいで宿代わりに泊まれて飲み物も漫画も読み放題。コスパにおいてネカフェの右に並ぶものはそうそうありません。

自分もそんなネカフェに昨年9月からおよそ半年間夜勤スタッフとして働いておりました。なんとなくご存知の方もいらっしゃると思いますが、深夜のネカフェはその安さも相まって客層がひどいものです。最底辺と言ってもいいと思います。

2,3日に1回の未払いの発生は当たり前。話が通じない酔っ払いの相手、酔っ払いが出すアレの始末は日常茶飯事。

そんな最悪な民度の深夜のネカフェ。とにかく来るお客さんは色々と強烈な人ばかり。働いてみないと意外と分からないこのやばさ。自分が働いていて「特に強烈だった客」のエピソードと共に深夜のネカフェの実態を知っていただけたらと思います。

勤務中のお話が100%になるので写真などは1枚もないです。また、文を書くことに不慣れなので見苦しい内容になるかと思います。お許しください。


盗癖の聾お兄さん


自分が勤めてた期間の最後3ヶ月くらいに常連入りした人です。聾、つまり聴覚の障がい者の方です。

この人はとにかく色々持ち帰ります。この人が帰った後ブースのティッシュは100%盗まれています。ドリンクバーのおしぼりも絶対空ですしガムシロップなども心なしか減ってます。法律は詳しくないのですが一応セーフなんでしょうかね。
この人が来るようになってからトイレットペーパーの予備がよくなくなってるのも偶然なのでしょうか。

まあこれはかわいいもので、この人は店員が他の客の対応をしてる時もお構いなしに自分の要望を通そうと話しかけ(筆談)てきます。聾なことは承知してますけどそこに関しては流石に看過できないなぁと思ったり…
生理的嫌悪感はないのでこんな人もマシな部類です。



店内上裸徘徊


何故か個人じゃなくて別の個体として定期的に発生します。なんなんでしょうね

50を超えたおじさんが100%です。注意しても悪態つかれることはなく大体気さくなおっさんです。流れでカニカマ貰ったこともあります(捨てました)。

酔った勢いで自宅と同じテンションになってしまうのかもしれませんが、店員としては女性のお客様から本気のクレームが来て謝罪しなきゃいけないので勘弁してほしいです…



料理注文したことを忘れて始めてしまう男


定期的に発生する繋がりでこの人達も。

自分が働いていたネカフェはアダルトコンテンツ無料!ティッシュも全ブースにしっかり完備!それ故にそういったことをする客は結構いました。
慣れてるのでそこはいいのですが、何故か料理を注文して届くまでの数分に我慢できず始めてしまう人が後を絶ちませんでした。平均して月一回はやられるのでたまったものじゃないです。

ネカフェでそういったことをするのは店員も大体分かってくれてるので止めはしませんが、人に見えないようにだけ気を遣ってくださいね…



陰謀論おじさん


出勤しようとしたら数名の警察が店の前に。

事情を聞けば、入店したおじさんが入口に置き忘れた鞄を盗まれたそうで。
結果として事件ではなく、入れ違いで退店したお客様が落とし物として警察に届けてくれていたようです。ですがその事実が判明するまでは店内でひたすら大声で騒がれ続けました。

防犯カメラには鞄が持ち去られる瞬間も映っていたみたいですが、警察のルール的に防犯カメラの映像って簡単には見せちゃいけないみたいですね。
そのせいで頑なに映像を見せてもらえないおじさん。鬱憤が溜まったのか警察がいなくなった後に従業員専用エリアまで来て僕に愚痴をこぼしに

「今の日本はすべて監視されている。お兄ちゃんも気を付けろ。警察もグルだから信用するな。」
滑舌が悪くあんまり聞き取れなかったのですが大体こんなことをずっと言っていました。20分くらい。

気持ちは分かるんですけど1時間以上店内で騒がれ、あげく店員を拘束されるとただの迷惑客です。なんだかなぁ…



自称占い師


ある日トイレの清掃に行った際に歯を磨いてるおじさんと遭遇。話しかけてきたと思えば占いをやっているとのことで遠くからはるばる来たそう。

従業員である手前蔑ろに対応できずにいたところ、気に入られてしまったのか手作り感満載の占い半額券をくれました。無料ではないんだなぁ…(捨てました)。

そんな自称占い師のおじさんは翌日まで利用していて、利用時間が24時間に差し掛かりました。ウチのルールとして24時間を超えた場合は一度精算をしてもらってから再度入店手続きをしてもらう。というわけでおじさんのいるブースに声をかけに。

職業と占い券の件でなんとなく察してはいたのですが案の定持ち合わせがないそう。ウチとしては数日後払いに来てくれれば事を大きくするつもりはなかったのですが、おじさんは「このままではまずい」と思ったのでしょう。

「私がちゃんと支払う人間であることを証明してもらいます。」
そう言いながらスマートフォンの連絡先から1人に電話をかけ始めました。

時刻は深夜1時過ぎ。普通に考えて一般人は寝ている時間です。勿論出てくれるわけもなく、コールは留守番電話サービスへ移行。「やっぱり出なかったかな?」そう思い書類手続きの案内を続けようとしたらおじさんはすぐさま2人目にコールを開始…

ドン引きしてしまい何も言えずにいたらコール人数は4人目に。バンドマンとして頑張っている女性に繋がりました。
「(…?妹さんとかかな…?)」呆気に取られていた自分を気にも留めず、お姉さんと話し始めるおじさん
「今ちょっと困ってて、お金を貸してほしいんだけど…」
「(ああ、この人はヤバい人だ…)」そう自分が確信したと同時に電話先のお姉さんから
「あー、そういう面倒ごとに関わらせないでください。というか時間考えてください。」そう告げられ電話が切られてしまいました。

バッサリと切ってくれたお姉さんを見てハッと気付かされた自分
「このままだとこの人は無差別に電話をかけ続けるだろう。止められるのは自分しかいない…」
5人目にコールしようとするおじさんを半ば強引にストップ。するとおじさんは
「分かりました…親に電話します…」

最初にするべき相手なのでは…?そう思いつつも、親であれば1番話はできるだろう。そう思いコールを許しました。
コールしてすぐに出てくれたお母さん。おじさんが状況を説明する前からすごい怒鳴り声が…
母に気圧され話ができずにいるおじさん。埒が明かないと感じ、おじさんから電話をもらい交代。

事情を説明し泣き崩れるお母さん。警察沙汰にするつもりはないことも告げ、「すぐに息子の口座に振り込みます」と聞けたので電話は終了。電話を終えた自分におじさんが最初に言ってきた言葉は
「うるさい人でしょ?嫌ですよね」
その発言に流石にカチンと来てしまった自分
「いいえ、家族想いの素敵なお母さんだと思います。これからはご心配をかけないよう大切にしてあげてください。」
思わず口走ってしまいました。何故僕は二回りも歳上のおじさんに説教じみたことをしているのでしょうか。

翌日ちゃんと支払いに来てくれたようで無事解決したそうです。
「母を大切にしよう…」ふとそう感じた自分は帰りにスーパーでちょっとしたスイーツを2人分買って帰りました。



大荷物のネカフェ難民


持ち合わせがない人繋がりでこの人も。
ブース内は自室かのように鞄や服など荷物が散乱。通路には物がはみ出てなかったので問題なし。良客の部類です。
常連というわけではなかったのですが1週間近く継続して利用していただいていた客です。

そんなお兄さんがある日24時間を超過しても店内に不在。致し方ないので一度レシートを切り次の入店へ変更。
翌日お兄さんは店に顔を出してくれて、現在持ち合わせがないことも律儀に伝えてくれました。しかしルールはルール。支払えない人の継続利用は却下です。店長の命令で強制退店させることに。

そこで問題となるのがブース内に山ほどある荷物。勿論全部持ち出してもらわなければいけません。量としてはボストンバッグ4つとキャリーケース1つ分くらいでしょうか。実際はもっと持ち運びにくいケースや箱に入れていたので更に大変です。

早朝4時過ぎ、無情にも大量の荷物と共に街へ放り出されたお兄さん。
8時にシフトが終わった自分が、帰ろうと店から出たら店の横で呆然と立ち尽くしていました。その後お店で顔を合わせることもなかったのであの日あの後どうしたのかは知る由もありません。

ネカフェはちゃんと予算を用意してからご利用しましょう。



異臭のおばさん


常連です。本当に最悪でした。
ちゃんと支払いはしてくれるし利用方法もいたって問題はありません。ですが本当に嫌なお客様でした。
利用したブースが尿の臭いで必ず満たされています。
また、定期的にトイレへ向かう姿を見かけるのですが、まるで足跡のようにおばさんが通った場所には水滴の跡が…

ブースの清掃をする際、基本はアルコールスプレーをかけてダスターで拭くだけです。ダスターは相当汚れるまでは使い続けます。
(自分は正直この清掃ルールを知った時点でネカフェを使うのをやめようと思いました。)

自分はこの人の利用したブースを清掃する時だけは使い捨てのペーパーを何枚も使って清掃をしていました。しかし、このおばさんが帰る時間は丁度自分のシフトが終わる間際なのです。
自分が退勤した後におばさんが退店した場合、おばさんのブースを清掃する人は次のシフトの人です。
自分のように使い捨てのペーパーで掃除している保証はありません。
おばさんのブースを拭いたダスターでそのまま他のブースも拭いてる可能性の方が高いです。

自分はよく「ネカフェを使うのはオススメしない」と言っています。その理由の多くはこの清掃ルールと実態を知っているからです。

今後ネカフェを利用される方、利用しているそのブースは本当に綺麗なものでしょうか…



マーキングおじさん


後にも先にも「この仕事やめようかな…」と自分に思わせたのはこの人だけです。

ブース清掃が終わり従業員専用エリアに戻ろうとした時、そのおじさんは入口から入ってすぐの場所にいました。
「場所が分からないから案内して」

よくある要望です。入店レシートを預かりブースへ案内
「こちらの番号がお客様のブースです」

そう伝えるとその人はブース番号に顔を近づけ、舌でブース番号をペロリ──。

身の毛のよだつ行動に悪寒を覚えながらも必死に利用方法を説明。
「泊まりで使いたかったんだけどよく分からなくてね。ありがとう。シャワーも浴びたいから使い方教えて。」
恐怖に怯えながらシャワーの利用方法も説明する自分
「バーコードをこちらのリーダーにかざせばドアのロックが解除されます」

リーダーをペロリ──。

「へー、トイレはどこ?」
「お手洗いはこちらになります」

トイレの男子マークをペロリ──。

理由は分かりません。ことあるごとにこの人は舌でマーキングをします。四角いもの、赤いもの、金属製のものは特に舐める。数分の接客で分かりました。
利用に際しての説明があらかた終わった頃、おじさんはまたお願いをしてきました。
「もう帰るからお店から出る方法教えてよ」
よかった…。すぐに帰ってくれるみたいだ…。
最後の気力を振り絞り退店処理を手伝う自分。
おじさんは液晶画面をペロリ──。

無事に精算も完了。おじさんは退店。
「ありがとうございました。」お辞儀をして見送りする自分。
「またお越しください。」なんてとても言えませんでした。

自分の働いていたネカフェは地下一階に入口があり、店を出たら一階まで階段で上がる必要があります。
お辞儀から顔を上げると、階段の手すりを舐めながら上がっていくおじさんの姿が…

「とりあえず舐めてたところをアルコール消毒しよう…」そう思い、清掃道具を手に取った自分の頭をおじさんが言ったある言葉がよぎりました。

「泊まりで使いたかったんだけどよく分からなくてね。ありがとう。」

どうしてすぐに帰ったんだ…?



おわりに


以上です。いかがだったでしょうか?

酔っ払いなんてかわいいくらいに色んな人が客として利用していくネカフェ、少しはそのやばさが伝わったでしょうか。
列挙してないお客さんもまだまだありますが、おおよそこんなことが毎晩起きています。

色んなものの耐性を持っていないとキツイ仕事ではありますが、ウチの店はワンオペで営業を行っていたこともあって基本的に暇な時間は何してても怒ってくる人はいません。スマホは触り放題です。
働いていた期間としてはたった半年ですが、結構面白い経験ができる仕事だとは思います。2度とやりたくはありませんけど…

これからネカフェを利用される方へ。店員さんはこんな日々を過ごしながら頑張っている人です。清掃が少しでも楽になるよう、面倒ごとに巻き込まないように使っていただけると自分も嬉しいです。
でもやっぱり自分は使うことをオススメできないです…

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