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特異なもの

“Peculiar”, Compañía Ana Morales

2022年にパリで発表された作品の再演。

異なるもの、特別なもの、独特で、奇妙で、一般的な特徴に当てはまらないものから、さまざまな特徴をもつキャラクターが出現する。異なる人格が交錯するところに秘められた無限の可能性を追求してみたいという、意欲的な作品である。

フラメンコの現在・過去・未来が交差する芸術祭の舞台作品は、いわゆるコンテンポラリが多い。なかでもこちらはだいぶ右翼。
時代とともに変化し、舞台の上でアート作品として作り上げられるとき、「フラメンコという方法」はかなり幅広い。現地の観客は「今」をちゃんと生きていて、オーセンティックなものだけにすがりすぎることなく、こうした作品もそれなりに受け入れているように思う。

ただ、アナ・モラーレスのこの作品そのものについて言うならば、難解でやや疲れた。
英語の歌を含めて言葉を多用し、プロジェクションで煙草を燻らせるアナ自身を投影してみせ、シャーマンのようなカンテに狂ったように踊り、自身を捧げもののように担がせ、天井から降臨する美しいグリーンのバタ・デ・コーラにその身を投じる。
あえて伝統的なものから離れ、自らを解放するためのいくつかの儀式が供されるが、特に物語として繋がっているわけではないために、”時折挿入されるフラメンコ”(例えば男性舞踏手El Choroの踊りなど)以外では、好き嫌いが分かれるに違いない。

興味深かったのは音楽で、ギターも演奏されたが舞台上にはその姿を見せることなく、主役を演じたのはフラメンコハープ(Alpa flamenco)。
この日の音楽を担当したアナ・クリスマンのライブがフェスティバルの一環として前日に開催された(残念ながら観てはいないが)。彼女はフラメンコのジャンルで初めて、ハープのアルバム『Arpaora』を発表している。
優しく透き通る響き、ギターとはひと味もふた味も異なる魅力をもたらした。ハープに乗せたアナのソレアはとても美しい。タンボールやタンバリンを伴ってのフォルクロア(レブリーハのセビジャーナス)とは見事に対角線が引かれていた。

Festival de Jerez, 29.02.2024, Teatro Villamarta


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