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ゲーム音楽演奏の許諾問題

※一部追記済み

少し(?)思うところあった結果なので、取り留めもなくつらつら書いたものではあるが、興味ある方は是非一読いただきたい。

リトルジャックさんのこと

先日ゲーム音楽の演奏団体としてはかなり老舗のリトルジャックオーケストラさんが、演奏会チケットがすごい勢いでお申し込みがありチケットサイトが大変だったようだ。そもそもの老舗。ファンも多い。そこに加えて人気タイトルを演奏する。それはもう、大盛況だった。

が、熱心なファン(リトルジャックさんのファンか、ゲームタイトルのファンか、はいったん置いておく)の方々の中には、チケットが取れなかったことへの苦言を呈している方もいた。まぁ気持ちはわかる。行きたかった。取れなかった。くやしい。それはそうだろう。
その中で「有料でもいいから聴かせてほしかった」という反応があり、そこに「このコンサートは許可をとっていないから有料で演奏できない」というコメントがみられた。

そうじゃない。許可をとっていても無料で演奏会が開催されることもある。そして、「ゲーム音楽のアマチュア演奏会」は殊更その傾向が強いのである。
Libra Notesの代表としても、そもそも前身の屋号の時も、私自身ゲーム音楽の演奏をする現場をそこそこな数を経験している。
奏者だった時もあるし、主催していた時もある。スタッフだった時もある。単純に勤め先でゲーム音楽を扱うこともあった。ここ10年ほどは特にこのジャンルの演奏会をすることが多かったので、あまりの衝撃に…個人アカウントでお気持ちを表明してしまった。

権利元を探るところから

上記ツイートのツリーでも記載した通り、JASRACやNexToneのような著作権管理団体で管理されていない楽曲が多い「ゲーム音楽」という分野の曲を演奏することは、権利元との連絡窓口を探すところから始まる。多くはメーカーに問い合わせる。昔はメーカーの総合問い合わせに連絡して、そこから法務や許諾周りの部署につないでもらって…というものもあったが、最近は専用のフォームが作られていたり、コンテンツの利用について公式サイトに記載があったり、とだいぶ分かりやすくなった。

とはいえ、JASRACのような楽曲検索のサイトがあるわけでもないし、連絡すれば良きように使用料を算出して、どうすればいいか教えてくれるわけでもない。一個ずつ、ちゃんと確認していかねばならない。
サウンドトラックが出ているものなら、曲名がわかる。曲名がわからない楽曲は?どうするのか?というところにも躓く。何せ、冒頭でも書いたように全ての楽曲には基本的に著作権がある。一般的に曲名がないものだって、著作権は発生するのだ。

そうやって、少しずつ「どの曲なら演奏できるのか」を確認し、楽団の運営さん達はプログラムを作っていく。

※ちょっと追記① (2022.6.28)
許諾が降りるかどうか自体、結構流動的、というのもまた難しい問題。
OKの時期とNGの時期があったりする。なので、他の団体が演奏したから絶対にできるとは限らない。そう。問い合わせてみないとわからない。ムズカシイネ。
(たとえば会社組織が変わったから規定が変わった、もありうるし、公式が実はイベントを企画してたからお客の取り合いを防ぎたかった、等さまざまな理由があり得るので、一概にどういう理由でNGになるよ、とは言えない)

無料で演奏する理由、有料で演奏できない理由

ではなぜゲーム音楽の演奏会で有料のものと無料のものがあるのか。
実は無料公演にすることで、許諾料がかわったりホール代がかわったりする。これはゲーム音楽に限らず、基本的にはJASRAC等に管理されている楽曲でも「自分で作曲した曲」以外は許諾料が変わってくることが多い。そしてホールの利用代金は「入場料がいくらか」で大幅に変わってくることが多い。

そして、ゲーム音楽の場合有料公演だと許諾が出ない曲もある。これは権利者の意向にもよるもので、「営利が目的の場合は許可しない」と定めているものもある。

さて、アマチュアのゲーム音楽公演の場合、基本的には団員から団費を募り、限られたお金の中で演奏会を企画している。
演奏会開催には、当然ながら演奏会当日のホール代・リハーサル代(会場代や楽器レンタル料等いろいろ)・人件費等、さまざまなお金がかかる。ゲーム音楽は楽譜が存在しないことも多く、そうすると編曲費等もかかってくる。莫大なお金がかかるのだ。無料公演にすることで、許諾料やホール代を下げるのか、有料公演でチケット代を収入とし、その収入でホール代等の代金が上がった分を賄うのか…という選択になる。

さて…あなたなら、どうする?
(ちなみに私は、10年弱の経験上できることなら無料公演でやりたい…いや、収益上げていいよってなるなら、メーカーにも演奏者にも作編曲者にも大いに還元したいし有料でやりたい気持ちはあるものの、現状金銭的リスクが高すぎるんですよね…)

許諾のことは知らない、を減らしたい

演奏会の作り方、著作権処理なんか知らない。
それはそう。演奏会を開催する側、演奏する側は知っていても、お客さんとして来てくれる人たちがみんな著作権周りのことを知っているわけではない。

ここ10年くらいで、ゲーム音楽を演奏する、という文化は大きく成長した。昔はもしかしたら今より許諾がグレーだった部分もあったかもしれない。なぜなら今よりさらに分かりづらかったし、どこに連絡したらいいかも不透明だったからだ。それでも先人達はこの10年で許諾面含めゲーム音楽演奏の分野を大きくしてくれた。

市場が大きくなればなるほど、ライトな層も出てくる。それはどの分野だって同じである。
古参でコアな層がゲーム音楽の著作権周りが複雑なことに対して「そんなことも知らないのか」と言うのは簡単だが、知られていない現実もある。個人的には、暗黙の了解で許諾をとった状態で進めるのではなく明確にしておく必要もあるのかなぁ。と今回の件で痛感した。
もちろんこの件は各団の方針もあることなので、このジャンル全員で同じ方向を向いている必要はないが、それでも少しずつ権利周りが明確になってきたタイミングで、使う側の不透明さも少しずつ無くしていきたいなぁと考えている。

今後も本ブログでも、少しずつ演奏会の創り方や権利周りなどなど、お伝えできる部分は記載していきたい。という決意を置いて今日の思考は終わりにします。

※ちょっと追記② (2022.6.28)
上記は「ゲーム音楽」に限った話、ではない。メーカーに確認するかどうか、はともかく全ての楽曲には著作権がある。つまり「誰か」にはお伺いが必要になる可能性がある。そして、お伺いが必要ない曲もある。パブリックドメイン(著作権が消滅した曲)も存在するからである。ただし!著作隣接権は存在したりする…!!!のでいずれにしても他人の作ったものを使わせていただく以上、そのあたりはきちんと調べる&作曲作詞の権利者に敬意を払いましょうね。

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