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愛する文具が廃盤になったことを知って

その機能美に惚れて、ずっと使い続けようと心に決めたモノ。

そんなモノに出会ったことはありますか?

私はあります。

一生、これだ! と、決めて使い続けていたものが、ボールペンです。

新入社員だった平成5年からずっと、このボールペンだけを使い続けてきました。

武骨なデザインと、先端に使われている金属パーツが高級感を醸し出していて、何よりも書きやすさが突出していると感じた、PILOTのスーパーグリップ、0.5ミリ。

これが、知らない間に、もう二年近くも前に廃盤になっていたことを知りました。


私が新入社員だった頃、まだまだ手書きの書類が多く、細かな字でたくさんの文字を書かなければならない書類ばかりでした。

水性ボールペンでは滲んでしまう、太い芯のボールペンだと小さな字が書けない。

そこで見つけたのが0.5ミリの油性ボールペン。
極細と言われる部類です。
他のメーカーからも出ているのですが、0.5ミリだと、たくさん書いているうちにインクが詰まってかすれたりするのです。

しかし、このボールペンはとてもタフで、そんなことは起こりません。

油性ボールペン特有の、インクのヌルッ、とした感覚があるにも関わらず、書き味は軽快でかすれない安心感があり、先端の金属のお陰で重心が先にあるため持ちやすく、大変書きやすいのです。

私はこれをずっと、27年にわたり愛用してきました。

丁寧に使っていたので、本体ごと買い換えることは少なく、替芯を使って一本を永く愛用してきたので、廃盤にも気付かなかったのでした。

最近は、仕事はほとんどがパソコンで、文字を書く機会はぐんと減りましたから、一本が長持ちするようになりました。

そろそろ芯を用意しておこうか、と文具店に行ったのです。
ズラリと並ぶボールペンに書いてある替芯の番号を見て替芯を探そうとしたところ、売り場にこのボールペンが無いことに気付きました。

「ありゃ。ここには置いてないのか」と、違う文具店にも行ってみましたが、やはり置いていません。

これまで、大きな文具店でスーパーグリップが置いていない所などありませんでしたから、「まさか、廃盤になったのか?」と、パニックになりました。

不安は的中、PILOTのホームページを調べると、商品一覧にこのボールペンはありませんでした。

あれこれ調べてみると、すでに廃盤になっていること、後継はこれだ、ということがわかりました。

確かに、後継のボールペンは目の前にありましたが、違うんです。

見た目から持った感じから、何から何まで違うんです。


もう、私が愛して止まないスーパーグリップは売ってない。

その事実を知って、なんとも言えない深い悲しみと、大切な相棒を失った喪失感に襲われ、しばらく呆然としてしまいました。

今使っているものが手元に二本だけ。

これが無くなったら、もう触れることさえできなくなるんです。

一生、このボールペンを使い続けようと決めていたのに、余りにも突然でした。

もう、すでに存在しないなんて……

大好きなのに、もう会えない。
最愛の人を突然事故で亡くしたかのように、ぽっかりと心に穴が開いてしまいました。

せめて、同じ芯を使ったボールペンを使おう。

それなら、書ける文字は同じはずだ。

そうするしか手がなく、仕方なく同じ芯を使う別のボールペンを買ったのですが、やはり違います。

書き味は同じなのですが、握った感じも違うし、質感も違うと、慣れ親しんだ指先の感覚は「これは違うものだ」と感じてしまうのでした。

この、芯は同じでも違うボールペンをこれからの相棒として使っていけるのだろうか。

とても不安です。

なぜ廃盤にしたのか?
恐らくはコストです。

100円ボールペンなのに金属パーツを使っている、先端と軸とお尻の芯を止めるパーツの3つで構成されていますが、これがきっとコストがかかるので、生産中止となったのでしょう。


私は、気に入ったものはずっと永く使い続けたいと思うのですが、このボールペンだけは、特に愛着があり、ずっと同じものを使い続けています。

仕事では27年間、他のボールペンは使ったことがないくらいスーパーグリップ一筋でした。

一番気に入っている文具はなんだ? と聞かれたら、間違いなくこのボールペンを挙げるでしょう。

それほど気に入っていたんです。

先端の金属パーツによるどっしりとした安定した書き味がたまらないPILOTのスーパーグリップでした。

幸い、替芯はまだ売っているし、ボールペン自体も二本あります。

まだまだ、ゴムが悪くなるまでは使い続けていきます。


もしどこかで、まだ在庫があって、偶然出会うことがあったなら、ぜひ一度手に取って書いてみてください。

きっと、こんなにも書きやすいのか♪ と思うはずです。

愛して止まないスーパーグリップ、私の仕事をずっとずっと支えてくれました。
今まで本当にありがとう。

手元にある二本がダメになるまで、使い続けます。

せめて、退職するその日まで。

とはいえ、あと15年は無理かなぁ。


一日も永く、相棒でいてください。


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