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託したバトンのその先にはお客様がいることを忘れない

「これ全部やり直しや! 順番通りに並べて回してくれるか! バラバラだとチェックできないわ! 次に見る人のこと考えて仕事しろ!! 」

これまでの仕事の経験を活かせる部署に転勤になった二日目、上司の雷が落ちました。

全店の業務を一手に引き受ける事務の専門部署への転勤は、仕事とは? の考え方を大きく変える機会になりました。

これまでは店頭営業、顧客対応や書類作成をする側でしたが、今度はその書類を受付し事務処理をしていく部署です。

得意分野の仕事なので、知識的には問題ないものの、全店の処理を受け持つため、圧倒的な事務量に驚きました。

とにかく早く、膨大な数の書類を息つく暇もない勢いで捌いていかなければなりません。

丁寧にゆっくりと、とは、いかず、不馴れな中で必死に回した結果、「やり直しや!」と怒られたのでした。

足りなかったこと、それは相手に対する気配りの気持ちでした。

営業店から送られてくる書類にはスムーズに処理できるもの、些細なことにいちいち引っ掛かって処理に手間取るもの、があります。
何が違うか? というと、丁寧に下ごしらえをして書類を回しているか? です。
いい加減な書類は、受け取った相手にとても大きな手間をかけてしまいます。

私が怒られたのも正にそのせいでした。

私の仕事は営業店から来た書類を確認し上司にチェックしてもらう中継の立ち位置です。
丁寧かつ迅速な対応をしなければ、全体の流れを止めてしまいます。
とにかく早く提出しないといけないという焦りから、作った書類を相手が見やすいようにリスト通りに並べ替えるひと手間をやらずに大量の書類を回しました。

その結果、「こんなバラバラなもの、いちいち並べ替えなんてできるか! 次に見る人のことも考えて仕事しろ!」

新入社員みたいな基本的なことを指摘されてしまいました。

結局、急いで作って削った時間の何倍もの時間をかけてやり直しをする羽目になり、能率は上がらず反省材料となりました。

私のところに来る書類の山も、担当者によって下ごしらえできているもの、できていないもの、その差はバラバラで、次に関わる人のことを考えていない書類は、何かを書き加えたり、並べ直したり、大変手間がかかるのです。

上司に言われたことは、私がこれまで深く考えずに回していた仕事のいい加減さを指摘するものでした。
今までは、お客様から頂いたものを送り出す側の立場、それが転勤で受け取る側になって初めて、自分が雑な仕事をしていたことに気付きました。

わからないものはそのままに、要らない資料も選別することなく送り付ける、そんないい加減な仕事をしていたその先で、そのいい加減な仕事の面倒を黙って見てくれている人がいることなんて考えたことがありませんでした。

上司は、そんな私の仕事への向き合い方の悪さに気付かせるために厳しく叱責してくれたのだと思います。

仕事は、一人一人がどんなに速くても、次に繋ぐときに手間がかかってしまってはスムーズにいきません。

陸上競技のリレーと同じで、バトンパスが上手くいかないと時間がかかってしまい、良い結果は期待できません。

陸上の日本代表が2016年のリオデジャネイロオリンピックの100m×4のリレーで銀メダルを獲得したことを覚えている人も多いと思いますが、勝因はパトンパスの技術の高さでした。
日本のバトンパス技術は、次のランナーが全力でスタートするのを邪魔しない世界最高レベルと評価されました。
高いレベルの選手のベストな走りの前に、高次元のバトンパスが繋がった結果があったからこそ、好記録が生まれたのでした。

仕事も同じです。
一人一人がなんとなくやっていては良い仕事にはなりません。

やるべきことを正確にやって、次の人が困らないだけの準備をして次に繋いでいくからこそ、質の高い仕事が出来上がるのです。

そのために必要なことは、バトンを託す相手を尊重し、相手の立場になって考えることです。

まあいいか、適当でいいか、そう思うことは誰にでもありますし、目の前はそれで過ぎていくことも多いです。

しかし、それでは良いパスを繋ぐことはできません。
その結果を受ける側になってみると、いかにひとつひとつの丁寧さが必要か、ということを痛感します。

仕事は、一人では完結しません。
受け取りやすいバトンをパスし続けて繋いでいかないと、良い結果は出ないのです。

あなたのやった仕事の結果は、バトンを受け取る次の人が背負います。
託す相手が全力を出せるように、丁寧に仕事を回せているでしょうか?

相手を思い、良いバトンパスを意識するためには、自分の事だけに囚われず、全体を見渡す目線が必要です。
全体を見渡す事ができるようになれば、繋がりを大切にした仕事ができるようになります。

出来てなかったな、と感じたなら、大きく変わるチャンスです。
今から直していきましょう。

上司からの叱責のおかげで、今いる部署はお客様との直接の接点は無いけれど、この仕事だってお客様の満足に繋がるものなんだ、ということを意識するきっかけになりました。

どんな仕事をしていても、託したバトンの先にはいつもお客様がいることを忘れずにいたいですね。

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