『もぐら本2』完成に寄せて

2020年5月から【もぐら会】に入会している。
【もぐら会】はエッセイストの紫原明子さんが主宰する、オフラインサロンだ。

主な活動である月に一度の「お話会」はもともと東京都内で定期的に開かれていたが、コロナ禍でオンラインでも開催されるようになり、地方在住の自分も参加できるようになった。

「お話会」では、その場に集まった15名ほどの「お話」を順番にきいていき、自分も話す。

たったそれだけのことを、定点観測のように毎月続けている。

会員数が多いので毎回メンバーの顔ぶれは異なるが、回数を重ねると徐々に顔見知りの人も増えてきて、どんどんおもしろくなってきているし、ぜんぜん飽きない。

まったく見ず知らずの大勢の他人の前で、軽い相づち以外は肯定も否定も分析もされず、途中で遮られもせず、ただただ自分の話を黙ってきいてもらうことなんて、他ではなかなか出来ない体験だろう。

そこは「ただのありのままの自分で居てもいい」場所なのだ、と最近になって気がついた。

良いも悪いもなく、誰かの役に立つ必要もなく、何かの役割を背負うこともなく、ただそこに居るだけでいい。

自分にとって【もぐら会】はそんな場所になっている。

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その【もぐら会】の有志が集って作った本『もぐらの鉱物採集2 インターネットの外側で拾いあつめた言葉たち 二〇〇〇ー二〇二〇』が完成した。

17人の語り手の生活史を17人の聞き手が聞き書きした、17編のインタビュー集だ。

いちおう2000年から2020年までの二十年史ということになってはいるが、時系列には特にこだわっていない。

「う~ん」とか「えーっと」など、ふつうは省かれてしまうつなぎ目のような言葉も削ることなくそのままに、とある人の人生の断片が少しだけ切り取られて、むき出しで並べられている。

その生々しさと実在感を、ぜひ沢山の人に感じてほしいと思う。

自分は聞き手のひとりとして参加しています。
語り手さんのお話はどれも興味深く、キラキラした言葉の一粒一粒にわくわくしながら原稿をまとめる作業は本当に楽しかった。
読めばきっと、あなたの隣の人のお話を聞いてみたくなったり、誰かにお話を聞いてもらいたくなりますよ。

編集長・エミコさんによる序章


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