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[1年目 05/02 A.M.12:00 NHKニュース速報]
 本日午前11時56分ごろ、関東地方で強い地震を観測。震源地は東京都心部、震源の深さは約50km、マグニチュードは8以上。主な各地の震度は以下の通り。
 ▽震度六強:東京都中央区/千代田区
 ▽震度六弱:港区/新宿区/文京区/台東区/墨田区/江東区/品川区

[P.M.03:11 大阪よみうりテレビ特別報道番組]
「続報です、政府対策室は先程、最大震度を7に変更しました。震度7、激震です。マグニチュードは不明。被害は首都圏全域に及び、特に都心で広がる火災の被害は甚大……あ、今、東京の報道センターと繋がった模様です。映像は……出ない? 音声は……」

[05/03 ネットに流布した個人撮影の映像]
「ねえ、ヤバいよもう、そこまで火が……」
「お、か……おかあさあんっ……うあああんっ」
「逃げよう、な、ずっとここで持ってても……」
「いやあっ……やだああっ! うあああんっ」

[05/04 毎日新聞社説]
 東京都心部局地地震の被害は、調査が進むにつれ拡大の一途を辿っている。死者総数は現時点で7000人を突破。最終的には2万人を超える見通しで、被害総額は30兆円にも及ぶ。全国から集められた救急消防車両やレスキューチームも、倒壊した陸橋によって寸断された道路の前に手も足も出せない有様である。

[05/05 共同通信]
 アメリカからの救援物資を在日米軍が都内へ搬入する中、イギリス、ドイツ、フランス、ロシアらも食料や医療品をはじめとする支援を決定した。

[05/06 八王子市上恩方町掲示板]
 経営上の問題により、上恩方精神サナトリウムは本日をもって閉鎖されました。

[05/14 フジテレビ深夜ニュース]
「実に10日以上を瓦礫の下で耐え抜いた少年が今、救い出されました! 憔悴していますが無事なようです。お帰りなさい、松永君! よく無事で……あっ、今、ご家族の……妹さんでしょうか、彼の元へ駆け寄っていきます!」

[05/30 政府公報]
 今回の災害を「首都圏大震災」と呼称する事が閣議で口頭了解された。同日、政府は首都機能再生推進室を設置。総力を挙げて復興に当たることとなる。

[06/15 内閣官房長官談話]
「今回、複雑に入り組んだ狭い道路や陸橋が救援活動において著しい障害となったのは明らかで、これを期に東京は最先端のメトロポリスに生まれ変わるべきと考えます。水道や電気等、ライフラインを復旧させる過程で東京が新しい姿へ生まれ変わるための布石を打ち、最終的には、共同溝の拡大と徹底的な区画整理の実現を目指すものであります」

[??/?? 噂話]
「廃ビル街にね、天使が飛んでるの。光る翼が背中に生えてて……いやマジ、マジで見たんだって」

[10/31 週刊現代]
 未曾有の大災害からおよそ半年、今なお東京は傷ついた姿のまま我々の眼前に横たわる──。果たして帝都は蘇るのか? 政府が発表した首都再生法案要綱、通称[フェニックス計画]を徹底検証する!

[03/15 NHK報道特集の被災者インタビュー]
「家族で田舎に帰った人、多いねェ。俺ぁ生まれも育ちも下町だし、行くとこないんだよねェ。仮設住宅が撤去された後がさ、今から心配でねェ」
「それより、ご両親がいなくなった子供さん。学校にも行かず、ギャングみたいなことしてるって……」
「闇市ですよ。戦後の。あれと一緒。酷いよねェ」


[2年目 05/04 東京新聞夕刊]
 都内で建築ラッシュが始まったミッション系の全寮制私立学校は、両親を亡くした子供たちの受け皿にもなる。中でも、建築中の聖メリッサ女子学院は中高一貫教育の私立校として最大規模になるだろう。同校の理事長を務めることになるイネス恵愛修道会のシスター、美澄祐子さんに話を伺った。

[09/20 読売新聞]
 ○株価持ち直す 震災前日の水準を突破
 ○「復興成った」政府発表に否定と肯定
 ○サクラチル 都在住の受験生が抱える苦難
 ○中央環状が全線開通 進み続ける都市計画
 ○都は共同溝整備を優先 地下街の放置なお続く

[01/07 中古車情報誌 Goo WORLD]
 フォルクスワーゲン・ビートル(54年式)車体色ルビーレッド、フルレストア済。価格は要応談。
 ㈲ガレージツジサキ/東京都檜原村風張峠手前

[04/19 毎日新聞]
 ○フェニックス計画 世界的にも高い評価
 ○サミット共同声明 日本の復興を祝福する
 ○米国務長官「震災の支援は無償のもの」
 ○東京メトロついに復活 全線の営業を再開
 ○廃墟・丸の内 ビル街のホームレスたち


[3年目 05/02 朝日放送ニュースワイド]
「えー、話は変わって、首都圏大震災。今日であの悪夢の日から丸2年を経た訳ですが、あの地震は阪神淡路や中越とどう違ったのか、どうしてここまで迅速な復興が可能であったのか。その辺を包括、検証しました。特集です」

[11/11 日本テレビ深夜バラエティ]
「いやでも、ホンマびっくりしたで。首都圏大震災」
「あれ、兄さん被災してましたっけ?」
「してるで、モロや。ホテルにおってな、前の日にしこたま飲んでてん。ものごっつい二日酔いよ」
「うわ、それでよう生きてましたなァ」
「いやでも、これはヤバいと思たら底力出るわ。いきなり頭がシャキーッとしてな、避難先で一息つくまで平気やってん。頭痛も吐き気も一切ナシで」
「そういや、知り合いのDにも阪神淡路と首都圏の両方で被災した奴がいてますわ。尼崎と赤坂で」
「……それお前、生還率ゼロやろ、普通」
「そいつ、なんか勘がいいんですよ。どっちの地震も始まる前に虫の知らせがあって、なんかヤバいんちゃうかて思てるうちに揺れ始めたとか」
「ああ、避難先でもそんな話よう聞いたで。死んだおかんが夢に出てきて〝逃げぇー!!〟ゆうたとか」
「ある奴はあるらしいですねえ。何でしょね」
「あれや、人間って多分あんねんで、超能力。退化した野生とか本能とか、なんかそんなヤツ」
「あーもう、虚弱体質の僕とは縁遠い世界ですわ。頭の先まで現代文明にドップリやもん、ライフライン止まってエアコン止まったら一緒にポックリ」
「カーッ、大和川のフナくらいしぶとそうな顔しといてよう言うわ!」

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