2019.12.27:今日の記事3本

今日の記事3本は

「村上臣 個の時代に必要なのは、軽いフットワークと面白がる力」

「ネット広告が台頭してもテレビCMが終わらない理由」

「ロールモデル:やりたい仕事にたどり着く、川下り型キャリアとは」

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「村上臣 個の時代に必要なのは、軽いフットワークと面白がる力」

リモートワークを可能にするチャットツールやタスク管理アプリなど、テクノロジーの進化によって、人々の働き方は変わり続けている。働く場所も方法も多様化する現代において、ビジネスの最先端で活躍する先駆者たちは、これからの働き方にどんな可能性を見ているのだろうか。「WorkHack! Interview」では、そんな先駆者たちが考えるこれからの働き方を探る。最初に登場するのは、2017年末に「リンクトイン」日本代表に就任した村上臣だ。学生時代の「電脳隊」からインターネットの普及に貢献し、ヤフーのモバイルシフトを牽引した後、40歳でリンクトインへ転職。そんな彼は、これからの働き方をどう考えるのか?
──多様化の時代において、働き方やキャリアを考えるうえで大切なことってなんでしょうか。
組織から個人へという明確な流れがあるなかで、会社員であっても自分自身のキャリアは自分で描かなければいけません。これからの時代、セルフブランディングとまではいかなくても、自分のスキルや人となりをある程度発信し、ネットワークを築いていかないと、市場で埋もれてしまうわけです。ただ、日本人はオフラインで人とのつながりを作ることには慣れていますが、オンラインでつながり、協業するためのスキルが少ない。狭い範囲に企業や人が集中している日本では、ミーティングといえば会うものだという商習慣がありますが、欧米ではそもそも距離がありすぎて、リモートでのコミュニケーションが当たり前だったわけです。リンクトインのアカウントはまさにそのツールですが、個として発信することで、オンラインでのつながりから予期せぬ声がかかるなど、オープンイノベーションも起こりやすくなります。最近、ビジョン・ミッションの策定に注力する会社が多いのも、個々の社員が社を代表して語れるようになってほしいという思いがあるわけで、組織における「個」の重要性はどんどん大きくなっていくでしょう。
──個がつながる時代に合った組織とは、どんなものでしょう?
プロジェクトを支えるさまざまなコラボレーションツールが存在するなかで、チームに合ったサービスを適切に選べるかどうか。社内外の多様なメンバーと協業し、パフォーマンスを最大化するためのツールの選択能力は、これからの経営者やリーダーに求められるのではないでしょうか
──では、変化の激しい時代に働き方や生き方を“軽く”するために、村上さん個人が心がけていることは?
「フットワークを軽くする」ことですね。考え込むより先に会いに行ったり、わからないことを聞いてみたりすることで、自分だけでは気がつかなかったような視点が持てて、議論が膨らむ。お互いが理解し合ったうえで、「何をどう面白くできるのか」と考えるスタンスは、業種や職種を問わず、これからのオープンイノベーションの時代では絶対に求められるようになります。そういう意味では、フットワークを軽くするための「面白がり力」みたいな力も必要ですよね。これが簡単そうで、実は難しい。身につけるためには、身体的にも精神的にも、筋トレが必要です。動き回るための体力と、自分の専門領域の外の話を面白いと感じるために、常に情報をアップデートし、教養を身につけること。ビジネスの領域でもリベラルアーツの重要性が叫ばれていますが、それって要するに多様な人の感性を「面白がる」ためだと思うんです。自分自身の強みを知り、発信し、その領域の外へと軽やかに行き来することができれば、これからのビジネスにつながるアイデアや人脈を引き寄せられるんじゃないでしょうか

「ロールモデル:やりたい仕事にたどり着く、川下り型キャリアとは」

コンサルタントからお茶カフェの業界へ転身した木川瑞季氏、未経験から大ヒットを生み出したゲームプロデューサー奥井麻矢氏をゲストに招き、今の仕事と自分のやりたいことに距離を感じる人、これからどうやって働いていくのがいいか模索する人と一緒に、「仕事を自分ごと化する」ヒントを探る。モデレーターを務めたのは、女性向けの転職支援を行うLiB代表取締役の松本洋介氏。20代から30代の働く女性と向き合う中で見つけた共通の悩みとその解決法を、ゲストとの対話からひもといた。

◎やりたいことが見つかっていない、「will迷子」の人たち

私は、「CanはWillに進化します」「ノイズを減らしましょう」というアドバイスです。前提として、やりたいこと(=Will)は突然降ってくるものではありません。できることや得意なこと(=Can)を積み重ねていくと、それが結果的にやりたいことにつながっていきます。なので「やりたいことが分からない」という状況は、何も不自然ではありません。つまり、悩んでいる時間(=ノイズ)が増えたところで、急にやりたいことが見つかることもありません。悩んでいる時間は仕事に集中できないものですから、悩めば悩むほど、やりたいことが見つかるまでの期間が長くなっていきます。逆説的に感じるかもしれませんが、やりたいことを見つけるには、悩むのではなく、目の前の仕事に集中して取り組む方が効果的なのです。
奥井さんは“川下り型”でキャリアをつくられてきたのですね。キャリアの話になると、多くの人が“登山型”を志向します。Willに向かって進むキャリアを想像してしまうのです。しかし、登山型のキャリアを歩める人は稀有(けう)です。そもそもWillは変化していくものですから、最初に描いたWillにたどり着く人はそう多くありません。奥井さんの川下り型のキャリアは、目の前のことに集中し、できることや得意なことを増やして、苦手なことや嫌なことを避けていくもの。川下り型のキャリアの特徴は、その都度の価値観で主体的な選択ができることです。川下りは、到着点が決まっていませんよね。瞬時の判断で石を避けながら、予想できないルートを通り、ゴールを目指します。川下り型のキャリアは、想像していたゴールとは違っても、最終的に川下にたどり着くことができます。都度自分の感情に従って意思決定をするので、たどり着いたゴールは、自分で望んだ結果になります。そもそも「キャリア」の語源は、「車輪の通った跡」。つまり、後ろを振り返ったときに見える足跡です。ですから、「未来を見据えるキャリアプラン」というのは、矛盾しています。スティーブ・ジョブズも“Connecting TheDots(点と点をつなげ)”という有名な言葉を残しています。キャリアに悩むみなさんには、「キャリアとは、振り返ったときに初めてつながるものだ」ということを認識していただければと思います。
さて、お2人に最後の質問です。この不確実性の 高く、不安の尽きない時代に、明日の景色を変え るヒントをお伺いさせてください。
木川 : 目の前にある選択肢で、成功体験を積む ことが大事だと思います。成功体験があると、や りたいことや好きなことが目の前に現れたとき に、そこに飛び込む自信がつくからです。大きな 成功を得る必要はないので、自信を持てるよう、 目の前のことに打ち込んでください。
奥井 : 先ほどの川下りの話でいうと、いろんな 石が置かれている川に身を置くことが大事だと思 います。その環境で、小さくとも、「成し遂げる 経験」を積み重ねてください。すると、自然に視 野が開けてくると思います。
松本 : お2人の話を聞き、改めて「CanはWillに 進化する」ことを確信しました。木川さんのおっ しゃるように「成功体験を積む」努力をしていれ ば、Canが増え、機会を手繰り寄せるチャンスが 増えていきます。そして、Canを増やすには、ノイズを減らして目 の前のことに集中することが大切です。青い鳥探 しをするのではなく、目の前のことからキャリア をつくっていく思考を持てれば、明日の景色が変 わっていくのではないでしょうか。