年金問題の現状を正しく認識する

●解説
OECD各国の年金制度を評価する資料に、マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキングがあります。2019年版で日本は調査対象37カ国中31位です。日本は持続性について特に問題があり、平均寿命が伸び続けていることから年金受給開始年齢を引き上げる必要性などが指摘されています。現役世代は公的年金をあてにせず、老後資金は自助努力で賄うことが必要です。

・マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング
世界人口の約3分の2をカバーする37か国の年金制度をランク付けします。 年金システムが退職後の個人の財政状態の改善につながるか、持続可能かどうか、国民に信頼されているかを評価するものです。 対象は、公的・私的年金制度の積み立てや個人貯蓄などの年金資産など。40項目以上の検証項目をもとに「十分(Adequacy)」、「持続性(Sustainability)」、「健全性(Integrity)」の観点から評価を実施します。それぞれについて、Aランク~Eランクのグレードに応じた指数化をおこなって総合指数を算出します。

・日本は31位
日本は31位で、Dとランク付けされました。これは、「対処する必要のある重要な弱点および・または不備」があるとされるグレードです。調査対象国でEランクは存在しないため、実質的に最低ランクに位置します。持続性について特に問題があるとされ、平均寿命が伸び続けていることから年金受給開始年齢を引き上げる必要性などが指摘されました。

・上位国の特徴
上位のオランダ、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーなどの国々は近年、続々と年金制度改革を実行してきました。日本が採用する修正賦課方式(現役世代の年金保険料が年金世代の受給へ回される方式)から、積立方式の年金制度への移行を急いでいます。修正賦課方式のメリットとしてインフレに強いことを日本政府はアピールしますが、積立方式でもリスク性資産のウェイトを高めればインフレ耐性は強化できます。日本が修正賦課方式にこだわる理由は、過去の失政を認めることができないからです。

・年金受給開始年齢は段階的に引上げの方向
高齢問題の研究者らでつくる日本老年学会などは2017年に、65歳以上とされている「高齢者」の定義を75歳以上に見直し、前期高齢者の65-74歳は「准高齢者」として社会の支え手と捉え直すよう求める提言を発表しています。これは現在65歳に設定されている年金受給開始年齢が75歳に引き上げられる可能性を示唆しています。

・老後資金は自助努力で賄う
日本の年金制度を考慮すると、公的年金主体ではなく、自助努力年金(個人での資産形成)をメインに、公的年金は補完的なものと捉える必要があります。正しい商品、かつ可能な限り早く自助努力年金の積立を開始することが重要です。

●根拠となるニュース
世界の年金システムをランク付け-オランダ1位、日本31位
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-21/PZPLH7DWRGG101
MELBOURNE MERCER GLOBAL PENSION INDEX
https://info.mercer.com/rs/521-DEV-513/images/MMGPI%202019%20Full%20Report.pdf
「高齢者」は75歳以上 日本老年学会など提言、65~74歳は社会の支え手
https://www.sankei.com/life/news/170105/lif1701050032-n1.html
※ディスクレーマー※

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