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What’s KYODAN?〜リコリスが迫る日本基督教団(後編)〜

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■はじめに

クルミ「お~いお前ら、教団の歴史についてのデータが必要なんだろ?持ってきてやったぞ」

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千束「あー、なんていうかそのー、もうこっちでどんな内容を話すかは準備したし、なんならデータはすでにインプット済みっちゅーか・・・」

たきな「こう見えて抜かりないですもんね千束は」

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千束「ちょ~ちょちょちょちょ!!!た~き~な~。まだ私の能力を疑っておるな?そんな奴はこうだー!!(こちょこちょこちょ)」

たきな「ちょwwwwwwくすぐったいwwwwや、やめてくださいwwwwwwww」

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クルミ「おいお前ら、イチャついてないでさっさと話を始めろ!どうやら僕は用無しみたいだから適当に聞き流しておいてやるよ。」

千束「おっけ~!ほんじゃ早速今日は教団の歴史から行ってみよう!」

■日本基督教団の歴史

千束「前回は教団の概要や社会への影響力などについて話したね。日本のプロテスタントの教団としてはとびぬけて大きな組織だということが分かったと思う。で、たきなも疑問に思っていたみたいだけど、そもそもなぜこれほど大きい教団ができたのか?っていうことを、その歴史から見ていくよ。」

たきな「よろしくお願いします。」

千束「日本基督教団が成立したのは、戦時中の1941年のこと。当時は国のあらゆる組織が戦争に協力するための体制を取らなければならなかったの。宗教団体も例外ではなく、当時の政府が宗教団体への統制を目的とした『宗教団体法』という法律を作り、それをもとに日本のプロテスタントの33教派が強制的に合同させられて一つの教団になった。これが日本基督教団の始まりなの。」

たきな「国が強制的に組織させたってことですか。じゃあ教派や教団同士が何らかの意図をもって協力するために一緒になったわけではないと。」

千束「そういうことだね。こうしてできた日本基督教団は、『公会主義』をとる日本で唯一のキリスト教団体になったというわけ。」

たきな「公会主義?」

千束「公会主義というのは、いかなる教派にも属さないという考え方のこと。この考え方を持つのは現在でも教団が唯一なの。」

たきな「プロテスタントって元々考え方の違いで無数に教派や教団が分裂していったんですよね?それが一緒になるってなかなか難しいのではないですか?」

千束「それは考えるまでもなくわかるよね。そもそも成立の過程からしていろんな遺恨を生みそうだし。事実、敗戦後は宗教団体法も無効になって、いくつもの教派教団が日本基督教団から離脱していったんだよ。」

たきな「それらの教団は今も残ってるんですか?」

千束「現在の日本福音ルーテル教会、日本バプテスト連盟、日本バプテスト同盟、救世軍などが離脱グループの代表的な面々だね。残ってる教団は多いよ。」

たきな「なるほど。でも離脱せず教団に残ったグループが多いから、未だに日本最大のプロテスタント教団であり続けているわけですね。」

千束「そうゆ~こと~」

■教団の特徴

千束「というわけで、日本基督教団はさまざまな教派が合同してできた教団(合同教会という)ということがわかったね。ここで現在の日本基督教団がどのような特徴を持っているのか見ていこう!」

千束「日本基督教団はいわゆる『メインライン(主流派)』に属する教団。メインラインっていうのは昔からの伝統的な教派で、キリスト教全体の中で最も数の多い勢力。神学的にいうと『自由主義神学』をベースにしており、『リベラル』とも呼ばれているね。」

たきな「リベラルってよく福音派と対立関係にあるとか言われてませんでしたっけ?そもそも福音派との違いもよくわからないんですが・・・」

千束「リベラルと福音派の違いについてはいずれこのnoteでもやりたいんだけど、まあ簡単に言えば、聖書に対してリベラルはゆるやか、福音派は厳格、みたいにイメージしてくれればいいかな。」

たきな「なるほど。でも日本基督教団っていろんな教派が合同してできた教団なんだから、リベラルに対して異を唱える勢力もあったりするのでは?」

千束「たきな、鋭いね!実はそうなの。教団は基本的にはリベラルなんだけど、中には保守派といって福音派に近い考えを持つグループもいるの。具体的に言うとホーリネスの群れ聖霊刷新協議会といったグループだね。」

たきな「じゃあそれ以外のグループはどんなものがあるのですか?」

千束「大きく分けて組合系、改革長老系、メソジスト系の3つの勢力があるよ。前回の神学部の話とリンクするんだけど、組合系は同志社大学神学部、改革長老系は東京神学大学神学部、メソジスト系は関西学院大学神学部と結びつきが強い。」

たきな「ということは、たとえば組合系の教会の牧師は同志社大学出身者が多いということですか?」

千束「ご名答!まあこのあたりは緩やかで、同志社出身者が改革長老系の教会の牧師をしていたり、東京神学大出身者がメソジスト系の教会の牧師をすることもある。同じ教団内だからね。でも傾向としてはそれそれの学校と結びつきの強い系列の教会に行くことが多いんだけどね。要するにアラン機関の人間がDAに配属されてても特段何も言われないのと同じってこと!」

たきな「その例えって果たして適切なんでしょうか・・・」

■教団の課題

千束「ここまで教団の特徴を見てきたけど、そのうえで教団が抱える課題も見ていくよ。」

たきな「やはり合同教会という組織だと色々問題もありそうですよね。」

千束「そうだね。最も課題となっているのは教会派と社会派の対立だろうね。」

たきな「リベラルと保守の関係とはまた違うのですか?」

千束「全く違う、というわけではないけど・・・これは教会をどのようなものとしてとらえているかという『教会観』の違いによるところが大きいの。」

たきな「教会観?」

千束「教会派は教会が聖書の教えに基づき、キリストの福音を社会に延べ伝えていくことが第一と考える、いわば昔からの伝統重視のグループ。それに対し、社会派は教会は社会問題に対して積極的に取り組むべきだと主張するグループのことなの。」

たきな「教会派はまさにキリスト教のイメージそのままといった感じですが、社会派に関してはいまいちよくわかりませんね。」

千束「社会派は、たとえば沖縄の米軍基地の問題だったり、日本の戦争責任に対する問題、憲法改正に反対する活動など、俗にいう『左翼的』な活動を推進しているグループのことを指すの。」

たきな「たしかにキリスト教に限らず、宗教団体でそう言った活動をしている人達はいますよね。そもそも教会派と社会派はなぜ対立しているのですか?」

千束「きっかけは1970年に行われた大阪万博『キリスト教館』を出展することを、NCC(主流派プロテスタントのグループ)とカトリック教会が決定したことに対して、社会派が反発したこと。『反万博闘争』と言われるこの争いで、教団内の会合では暴力事件に発展し、東京神学大学での暴動では機動隊が出動するほどの事件になったの。」

たきな「機動隊が!?」

千束「びっくりするよね!」

たきな「そりゃしますよ。私達リコリスが出動すればそんな争い一瞬にして鎮圧できるというのに・・・」

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千束「お~い、たきなさん?狂犬モードに入っちゃってるよ~?とにかくこの事件以来、教会派と社会派の対立は『教団紛争』と呼ばれて深刻なものとなっていくの。代表的な対立の一つに『聖餐論争』があるね。」

たきな「聖餐とは聖餐式のことですか?」

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典型的なプロテスタント教会の聖餐式

千束「そう。日本基督教団の教憲(教団の規則)では、洗礼を受けていない人は聖餐に与れない(パンと葡萄酒を飲み食いしてはいけない)となっているの。」

たきな「ちょっと待ってください、それって教憲云々ではなく、キリスト教全体でダメなのでは?」

千束「カトリックや正教会などでは明確に『未信者は聖体拝領できない』とされているけど、プロテスタントは教会によってまちまちなんだ。牧師によっては神学的にも『信者じゃなくても聖餐に与ってOK』と考えている人もいる。

たきな「教会の自主性を重んじるプロテスタントらしいといえばらしいですが・・・」

千束「それで、ある社会派の牧師が『フリー聖餐(未信者も聖餐に与ってOK)』を行ったことが問題視され、最終的にその牧師は戒規処分となってしまったの。」

たきな「教憲を破ったんだから当然なのでは?」

千束「でも、日本基督教団は合同教会であり、様々な多様性を認めてきた教団なのだから、フリー聖餐も許容するべきだ、という意見もあるんだよ。主にフリー聖餐を主張しているのは社会派の人達で、それに対して批判的なのが教会派の人達なの。それでこの牧師の処遇を巡って社会派と教会派の対立が激化してしまう事態になったの。」

たきな「難しい問題ですね・・・組織としての規則と、多様性の尊重、どちらをとるか。これはキリスト教だけでなく現代社会全般の課題かもしれません。」

■おわりに~教団はどうあるべきか?~

千束「というわけで、教団の歴史と特徴、そして課題について見てきたわけだけど、たきな、どうだった?」

たきな「なんというか、本当に深刻な事態だなあと・・・ここまで対立が深刻ならば、いっそ合同教会なんかやめて、それぞれのグループが独立すればいいのでは?と思っちゃいますよ。」

千束「確かにね。カトリックだったら意見の対立などがあっても、最終的には最高指導者であるローマ教皇が決定したことに皆従うことになる。でもプロテスタントは教皇のような存在がいないから教団の組織としての結束力が弱いという欠点はあるね。」

たきな「やはり考えが近い者同士で組織を組みなおせばいいと思いますが、千束はどう思います?」

千束「合同教会は悪い面もあるけど、良い面もあると思う。組織が大きければ影響力も大きいし、多様性の尊重という視点に立てば、これからの時代においても果たす役割は大きいと思うし。まずはお互いの違いを認め合い、話し合うことだね。そして妥協して落としどころを見つけていくこと。これが求められていると思うな。少なくとも反万博闘争みたいな暴力は絶対にダメ!だよね。」

たきな「まあ、いざとなったら私達リコリスが銃の腕前を駆使して鎮圧しますけどね。暴力には暴力で・・・・」

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千束「お~い、たきな~?また狂犬になっちゃってるよ~?狂犬になんかららないで、教憲を尊重できる人になろう!なんちゃって。」

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クルミ「誰が上手いことを言えといったんだ?」

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おわり



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