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涙の役目

一滴一滴と

涙を零す。

一滴一滴と

そこから生まれい出来(いでき)た場所へと涙を還す。


一滴の涙で

一滴分、私たちは本来の自分へと還る。


生まれて今まで、一体何滴の涙を還してきただろうか。

いったい何滴分、元来た場所へ戻っただろうか。


私たちが元居た場所はきっと、大海原のようなところで、

この肉体を脱ぎ捨てたら、そのとき、

母なる海の一滴になっているのかもしれない。


人ひとりが一滴、

その一滴が集まって海となる。

きっとそれは恐ろしく多様な”透明”という色が集まった、

素晴らしく美しい海だろう。


きっと

満潮は、人が、こちらの世界へ来る時間。

そして引き潮は、

人があちらの世界へ戻る時間。


いやいや

こちらが元居た場所か、それともあちらか。

母なる海だろうか。

それとも母なる大地だろうか。

皆はどちらに安心を覚えるだろうか。


その心の指針が、答えへの道しるべ。

安心を覚える方が、貴方が出て来た場所。

ーあなたの故郷(ふるさと)




私は今日も故郷(ふるさと)に恋焦がれながら、

母なる大地の寛大さに守られて、

また一滴と涙を流す。