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人類学、言語学、日本史を統合し、日本語方言の形成史を解き明かします。 X(旧Twitter):https://twitter.com/LgAtGt

最近の記事

日本語の動詞活用形の起源を解明する

【骨子】 ・未然形:語幹-a ・連用形:語幹-je ・終止形:語幹-(r)u ・連体形:終止形-ru ・已然形:連体形-e ・命令形:連用形-lə ・子音語尾語幹:四段活用、-ar/-as付加で二段活用 ・母音語尾語幹:二段活用、-ar/-as付加で四段活用 はじめに 動詞活用形の起源については定説がないが、最も精緻な分析をしているのは、おそらく以下のブログであろう。 そのうちのファイナル版(以下)がおそらく最も真相に迫っていると思われるが、これを基に、若干の修正を加えた

    • イ段乙音は[wi]、エ段乙音は[we]である -上代日本語の故地は豊前宇佐⁉-

      はじめに上代日本語(上代大和言葉)では、イ段、エ段、オ段において、一部の行で2種類の書き分けが成されていたことから、イ段、エ段、オ段には2種類の音あったことが知られており、これらを甲音、乙音として区別する。(Wikipedia「上代特殊仮名遣」,「日琉祖語」の記事も参照されたい。) このうち、オ段甲音は[o]、オ段乙音は[ə]のような音とされ、この2母音は日琉祖語まで遡ると考えられている。また、イ段甲音は[i]、エ段甲音は[e]とする見方が一般的で(本稿もこれに従う)、こ

      • 日本語方言の発音から見る4つの基層/上層言語 ーA)縄文語、B)裏日本ウラル語、D)日琉祖語、C)近畿シナ系言語ー

        キーワード:日本語方言、発音、基層言語、数量化Ⅲ類、散布図 【要旨】 発音の差異が基層言語よって生じる事例は世界で多数報告されている。日本語の方言(琉球語含む)においても地域によって音変化等の発音の差異がみられるが、本稿ではこれを基層・上層言語に由来する特徴と考え、日本全国の方言の発音特徴と地理的分布を網羅的・統計的に分析し、見いだされた4つの極を基層(上層)言語の成分と捉え、各言語の祖型を推定した。結論として、日本語の方言には、渡来順に、A)縄文語(特徴:3母音体系、N型

        • 四国方言アクセントの3段階京阪化の歴史的背景 ー弘法大師と堺と大坂とー

          四国方言は主に京阪式系のアクセントと言われるが、詳細に見ていくと、地域的に様々な時代のものが混在している。金田一(1977)によると、四国の京阪式系のアクセントについては、以下のようになっている。 ・讃岐式アクセント・・・平安時代の京都アクセントが変化したもの ・徳島・高知のアクセント・・・室町時代の京阪アクセントに近い ・松山のアクセント・・・現代の京阪アクセントに近い この違いはどのように生じたのだろうか。 これを考える上での大前提として、日本語はもともと無ア

        日本語の動詞活用形の起源を解明する

        • イ段乙音は[wi]、エ段乙音は[we]である -上代日本語の故地は豊前宇佐⁉-

        • 日本語方言の発音から見る4つの基層/上層言語 ーA)縄文語、B)裏日本ウラル語、D)日琉祖語、C)近畿シナ系言語ー

        • 四国方言アクセントの3段階京阪化の歴史的背景 ー弘法大師と堺と大坂とー

          ズーズー弁の起源を解明① ーウラル語族に属す基層言語の母音調和に由来ー

          「ズーズー弁」(裏日本方言)とはズーズー弁とは、方言学的には音韻上「し」対「す」、「ち」対「つ」およびその濁音「じ」対「ず」(「ぢ」対「づ」)の区別がない方言である。また、「ズーズー弁」まではいかないものの、ズーズー弁的特徴を持つ方言の発音体系を「裏日本的発音」という。以下、裏日本的発音体系を持つ方言を「裏日本方言」と呼ぶ(金田一2005)。 裏日本方言の分布は、その名の通り、日本海側である。東北地方を中心に、北海道沿岸部や新潟県越後北部、関東北東部(茨城県・栃木県・千葉

          ズーズー弁の起源を解明① ーウラル語族に属す基層言語の母音調和に由来ー

          無アクセントの基層言語(固有起源)による「高低逆変換アクセント」の生成 —日本語方言東京式アクセント及び奈良田・蓮田アクセント形成に関する新仮説—

          要旨日本語方言諸アクセントの形成史は「京阪式からの内的な自律変化及び無アクセントへの崩壊」という見解が主流だが、無アクセントが基層として存在し、後から入ってきた京阪式アクセントと接触したことで東京式アクセント等が形成されたとする説も存在する。後者は世界各地の言語接触の事例や言語地理学的観点等から妥当性が高いと本稿では考えるが、無アクセントが関与する形での具体的なアクセント生成過程の推論が欠如していることが課題である。本稿では、無アクセント話者がアクセント習得の際に高低を逆に

          無アクセントの基層言語(固有起源)による「高低逆変換アクセント」の生成 —日本語方言東京式アクセント及び奈良田・蓮田アクセント形成に関する新仮説—