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NieRシリーズの「神」とは

こんにちは!
NieR考察ガチ勢のれいらです。

今回は、NieRシリーズにおいて重要な役割を持つ「神」について紹介していきたいと思います。

人類が「神」と呼んだ者は

NieRシリーズにおける「神」は、人類が「神」と呼んだ存在を拡大解釈し、一般化したものだと考えられます。

そのため最初に、人類はどのような者を「神」と呼んでいるかを解説していこうと思います。

私たちに身近な "神"

「神」という単語は、

宗教信仰の対象として尊崇・畏怖されるもの。

神-Wikipedia

を意味しますが、宗教に関する事柄を日常的に意識しない方にはどのようなものか、今ひとつピンと来ないと思います。

しかし、宗教以外の各分野で「神」と呼ばれている人なら、皆さんでもイメージしやすいのではないでしょうか?

大谷翔平選手、藤井聡太竜王名人など…

私が語ることのできる範囲だと、King Gnuの常田大希さんがこれに近い立ち位置です。
(「鬼才」と呼ばれる方が多い気がしますが…)

例えばカルティエとコラボしたこの動画では、

・作詞・作曲 ・ピアノ ・コントラバス
・チェロ ・ボーカル ・エレキベース
・ドラム ・エレキギター ・音声加工

を全部一人(!)でやっているのですが、

この動画のコメント欄には、

・音楽界の神。宝です。
・音楽の神様に選ばれて愛されてるんだろうな
・音楽の神を宿してるんじゃないかって思う

というコメントが寄せられていました。

このように、私たちの身の回りで「神」と呼ばれる人物は、恐るべき天賦の才能やカリスマ性を持った人物であることが多いです。

それは、宗教でも同じことがいえます。

宗教における "神"

キリスト教の創始者、イエスが生まれた場所では元々、唯一神との契約「律法」を守るユダヤ教が信じられていました。

しかし当時の人々は、その場所の支配者であるローマ帝国とユダヤの権力者に多額の納税を強いられており、「律法」など構ってられないような苦しい生活を送っていました。

そんな中イエスは、「律法」を守ることではなく、「神」を信じる全ての者が平等に救われる、という新たな教えを考案したのです。

イエスが数々の奇蹟を行いながら新たな福音(良い知らせ)を広めていくと、彼の人気は徐々に高まり、遠方からも教えを聞こうとする人がたくさん集まってくるようになりました。

つまりイエスは、既存の教えのアレンジで人々を救い、奇蹟を行うことができる「天賦の才能」を持っていました。

それが彼に「カリスマ性」を与えたため「神の子」として崇められ、彼を信じる人の集まりが新宗教「キリスト教」となっていったのです。

亡くなった親族・祖先

皆さんの中には、ご家庭内で神様や仏様を祀っている方もいらっしゃるかもしれません。

現に、私の家にも神棚と仏壇があります。

父方は神道で祀られている
母方の家は、神道・仏教双方を信じてきた

このように神棚や仏壇で祀っている「神」や「仏」は、亡くなった皆さんのご家族やご親族、ご先祖さまではないでしょうか?

人々にとって家族や親族は最も重要な人間関係のうちの一つであり、先祖も自分の上の代にとっては家族や親族に相当します。

そのような者の死の悲しみを乗り越えるため、いつしか死んだ家族や親族は「神」や「仏」になる、と言われるようになったのでしょう。

このように「神」は、宗教かそれ以外の分野かに関係なく、「尊い」─自分ではとても敵わないような、大切で敬うべき存在だといえます。

NieR特有の「神」

DOD・NieRの「神」は、そのシナリオ上悪役として扱われることが少なくありません。

しかし私は、本来的にはNieRの神も「尊い」存在であると考えています。

どうして悪役になってしまうのか─は後で解説するとして、まずはNieR特有の「神」の観念についてお話します。

死線に立っている「大切な人」

私たちの世界と違ってNieRの世界では、全てのキャラが死線に立っています。

NieRキャラの大半は戦争経験者ですし、そうでないキャラも何らかの形で常に、心身の安全が脅かされている状態にあります。

俗客の断章 一章より

このような境遇にあるとき、人は自らの心を支えるべく、同じ時を過ごす者に深く縋ります。

その結果、縋った者はみな家族・親族に相当する「大切な人」になるのです。

現にリィンカネでは、血の繋がっていない者同士を「家族」と呼ぶ描写が多く見られますし、

ReplicantやAutomataにも、同様のことを伺わせるような描写があります。

常に「死線」に立っている「家族」のような存在は、私たちにとって「亡くなった家族や親族」、つまり「神」に近い存在だといえるでしょう。

そのためNieRでは、全ての「大切な人」が「神」であると考えられます。

『太陽』の魂が「神」

他にもNieR特有の「神」の概念として、『太陽』の魂というものがあります。

『太陽』の魂とは、リィンカネの「太陽と月の物語」内においね、☆2衣装が白基調である以下の4キャラのことを表します。

プリエ、マリー、ユディル、陽那

「太陽と月の物語」内において、『太陽』の魂は『月』の魂と切っても切れない深い関係性にあります。

一概に良い悪いでは言い表せないような、これらの関係性は

『太陽』の魂:「神」
『月』の魂:「信者」

から成る「信仰」に近い関係性だと思います。

例えば、「紅緋の章」にも登場したサリュとプリエの場合は、以下のような関係性です。

『月』の魂は『太陽』の魂を信仰している理由は、月が光る仕組みにあります。

月の光は、太陽の光が反射したものです。

そのため月は、太陽が存在しなければ光り輝くことができません。

これと同様に『月』の魂も、『太陽』の魂が存在しないと輝くことができない存在なのです。

そのため、『月』の魂のキャラは『太陽』の魂のキャラを信仰しており、『太陽』の魂と生涯共にいることを願っているのです。

サリュとプリエの関係性は一見プリエ→サリュの感情の方が強いように見えますが、サリュの口癖ともいえる

私は……あの子を……
……探さなくちゃ……

や、祝宴サリュの杖のウェポンストーリーの

もし、ふたりで契約したら……三人の絆はどうなってしまうんだろう……

残花の棘杖 STORY4

という締めから、サリュ→プリエの感情も相当に強いと推測されます。

災いを増大・加速させる「神」

ではなぜNieRシリーズ内では、「神」が悪役とされてしまうのでしょうか?

「神」を信仰することは、自らを「盲目化」させて「神」に依存することです。

このことに無自覚だと「神」は災いの元となり、生んだ災いを増大・加速させてしまう存在となり得るのです。

「神格化」は自らを盲目にすること

例えば、「亡絆の壕」に登場した金髪の同僚は、命がけで民間人を救うような人格者であり、常に隊員の輪の中心にいるような青年でした。

隊員は彼を、

「さすがはエリートの家系だ!」
「まさに英雑だな!」

STORY2

と口々に賞賛し、とても可愛がっていました。

しかし、彼がラルスだけにひっそりと明かした

「戦うのが恐かった」
「だけど、家の期待に応えなければならなかった」

STORY4

これこそが、彼の本心だったのです。

つまり、彼を賞賛し可愛がっていた隊員たちは彼を「信仰」していたために、誰一人として「本当の彼」を見ていなかったのです。

このように特定のものに対して盲目になることは時に、大きな争いの引き金になります。

「翻弄の海」に登場する元船員の大船長が大切にしていたぬいぐるみは、特別な力などない、本当にただのぬいぐるみでした。

しかし、持ち主が異例の大昇進で船長となり、富も地位も手に入れたことで、このぬいぐるみには特別な力があるとされました。

そのため、このぬいぐるみは社会現象の引き金となり、私的暴行事件や数々の戦乱をも誘発してしまいました。

これは、ぬいぐるみの「神格化」が大衆を盲目にし、争いを引き起こした典型例です。

NieRは歴史モノの側面が強い作品ですが、歴史上でもこのような「神格化」によって盲目となった人々が、数え切れないほどの争いを起こしてきました。

信仰への依存がもたらす負の連鎖

誰か(何か)を信仰するということは、多かれ少なかれその対象に依存することです。

しかし、みんながみんな同じ対象を信仰しているわけではありません。

そのため信仰の規模が大きくなると、人や資源を巡って異なる信仰同士がぶつかり合い、争いを生み出します。

信仰によって生まれた数々の争いに、人々の不安は増していく一方ですが、争いで荒れ果てた社会に残されたものは信仰しかありません。

よって人々はますます、自らの信仰へと依存していき、無限に争いが続く負の連鎖が完成するのです…

現に世界のシステムが宗教に依存していた中世ヨーロッパでは、宗教が生んだ争い「宗教戦争」が多発していました。

「宗教戦争」も様々な背景を取り払ってざっくりと一般化すると、上の図のような構図をとっています。

そしてNieR世界においては、「死線に立っている大切な人は全て "神"」なので、上の図のような負の連鎖が大量発生します。

「親友」という "神" のため。
「仲間」という "神" のため。
"きょうだい" という "神" のため。
"親" という "神" のため…

耐えることのない争いの負の連鎖は、宗教を信じていていない皆さんにも決して無関係ではありません。

なので皆さんどうか、信仰による争いで不必要に気をすり減らすことのないよう、くれぐれもお気をつけください。(自戒)

宗教的モチーフが多い作品

このように「神」は、NieRシリーズにおいて重大なテーマとなっていると考えられます。

現に作中をよく見ると、宗教的なモチーフが多く描かれています。

例えば、アニメAutomata9話の「複製された街」には教会があったり、

リィンカネの「太陽と月の物語」の『檻』の扉にチベット仏教の文様があったり…

Twitter: @Leyla_9s2bより

さらに、Replicantに登場する死病「白塩化症候群」も、

「異世界の神の呪い」という裏設定が存在。神の呪いに抗しきれず、「世界を無に帰せ」という命令に身を任せた者は、契約の証としてレギオン化。命令に背いた者は白塩化して死亡する設定になっている。

GRIMOIRE NieR (Replicant設定資料集) P.206

と言われています…

今回の「神」に関する情報を踏まえれば、「白塩化症候群」の爆発的流行の理由も読み解けるのですが、赤目の皆さんも流石に疲れたと思いますのでまた今度。