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いつかの「終わり」があるから「今」が輝く/Liella! 2nd AL『Second Sparkle』レビュー

『星屑クルージング』にどうしてこんなにも自分の気持ちを重ねたくなるのでしょうか?

それはスクールアイドルをやりたいという夢を掲げ、上海からやってきて、Liella!として日々を駆け抜けつつも、結果が出なければ上海に帰国しなければならない問題を抱えていた可可ちゃんの姿を自然と重ねたくなるのは間違いないと思います。

でも、それは可可ちゃんの姿を重ねている「だけ」なんでしょうか?少なくとも、僕自身は、Liella!を追いかける自分の気持ちを自然と寄せ添わせてしまうからと思っています。

Liella!と出会ってから毎日が楽しくて、それ以前の生活で何を楽しみにしていたのか思い出せなくなるくらいにこの日々は輝いている。その一方、でずっと何かしらの不安を抱えていることは否定できません。3期生を迎えると言うことはいつかは1期生&3年生がいなくなってしまうのではないかという憶測だったり、しばらく先の未来を想像した時に気持ちが離れてしまうというような余計な心配だったりと、Liella!が大好きな分、そう言う不安と葛藤する場面も増えた気がします。

正直なところ、いつかの事なんて考える必要はないし、「Liella!は今を駆け抜けているのだからそういうネガティブな気持ちはどこかへ行ってしまえ!」とは思っているのですが、でも、そういう気持ちがあるからこそ、『星屑クルージング』はより魅力的に聴こえるのだと分かった所もあります。今回はその不安の向き合うことが出発点となりました。

まずはこの曲を考えていく上での視点を整えてみます。

タイトルに「クルージング」とあるように、この楽曲のモチーフは「船」です。Liella!を始めたきっかけであり、それと同時に上海への帰国問題を抱えていた可可ちゃんはきっとLiella!の誰よりも「始まり」と「終わり」を理解している。だからこそ、「出発点」があって「終着点」がある「クルージング」を題材に選んだのは改めて凄いなと感じました。Liella!として駆け抜けた可可ちゃんの日々を映すかのように「船」は「終わり」へと進んでいきます。具体的に言うなら、その「終着点」は結ヶ丘を卒業して、Liella!を離れる瞬間だと思います。

でも、それは彼女に限った話ではなくて、僕たち私たちも同じようにクルージングしているんです。言うなら、「Liella!」という大きな船に乗っている。そんな「船」の今の進路としては、3期生加入と4thライブという目的地を目指していて、その先の「終着点」はまだ見えていません。

あえてその「終着点」を言うとしたら、Liella!というグループが何らかの形で活動を終えること(そんなことはあって欲しくないし、想像はしたくないけど)、あるいはそれぞれの事情があってLiella!を追いかけられなくなった場合がある種の「終わり」だと思います。後者に関しては、これからの話ではなくて、これまでの活動の中でそれぞれに思うところがあってこの「船」から降りてしまった方もいたのかなと考えています。

それぞれの形で終わりがあるように、スタート地点もバラバラです。

個人的な話で言うなら、2022年の2期生加入、MTVアンプラグドライブからLiella!を追いかけることになりました。あの時からずっとこの大きな「船」に乗って、Liella!との思い出を作ってきたし、色んな方と交流を続けながらLiella!と同じ時間を進み続けています。その人なりのきっかけでLiella!との時間が始まっていくと言う意味で、デビューシングルの『始まりは君の空』だと思っているし、僕自身の話で言えば、昨年のMTVアンプラグドライブで衝撃を受けたのが『始まりは君の空』だったのは何かの縁かなと思っています。(ちょっと脱線しますが、Liella!にとっての変わらない「出発点」であり、いつかの「終着点」に向けてLiella!は常に前を向いているから、9人、そして11人になったとしても『始まりは君の空』は披露されないのかなとも考えてます。)

そういう「クルージング」「船」という視点を作った上で、この『星屑クルージング』を聴き直してみると、いつか来るであろう「終着点」が明確ではないにしろ、至る所にそれを予感させるポイントがあると思います。その中で、個人的に注目したい歌詞のポイントを挙げてみます。

くるりと振り向いたら
目が合う夜よ、続け!
いつかは朝が来ると
知ってる 知ってる 
だけど

(注1)

どんな終わりが来るかは分からないけれど、「朝が来る」=「何かが終わってしまうこと」を予感させる。その上で冒頭の「くるりと振り向いた」というフレーズに戻ると、いつか来る「朝」に向けてここまで歩いてきたことが分かるし、それはもう戻れない歩みであることも感じさせます。そして、そんな歩みは戻れない代わりに確かな思い出になっていく。

もー!なんて素敵
ちちんぷい魔法かけよう
思い出にならないように
そんなのムリだね
知ってる 知ってる
だけど ねえ

(注2)

思い出になるという事は確かにその時間は過ぎ去ってしまったことになる。そんなことにならないように魔法をかけようとするけれど、そんな魔法はあっさり解けてしまう。特に、3行目から4行目で魔法をかけようとしているのに、そんな自分を「ムリだね」とあっさり否定してしまう部分に切なさを感じます。分かっているとはいえ、願ってしまう自分を割り切ろうとする想いに胸が痛くなるのかもしれません。

また、上記で取り上げた2つのパートは、どちらもいつか来るであろう終わりが分かっていることを「知っている」という言葉で感じさせるのも大きいです。そして、極めつけは冒頭とラストを飾るこのフレーズです。

ずっと一緒に ずっといてよ

(注3)

ずっと一緒に ずっといたい

(注4)

「ずっと一緒にいようね!」とか「ずっと一緒だよ!」と確認するような言葉ではなくて、一方的な願望になっているところに胸がギュッと締め付けられる思いがします。それは、過ぎ去ってしまう時間を止められないことは分かっているけれど、その上での願いとも言えるかもしれません。そして、この『星屑クルージング』をLiella!ではなく、結ヶ丘でスクールアイドルという夢を実現させつつ、上海への帰国というタイムリミットを抱えていた可可ちゃんの歌である事を重ねると、「ずっと一緒にいたい」という切なさが加速していきます。

また、これは僕らにも重ねてみたくなる部分があると思います。

9人になっての初のツアーだった 3rdライブツアーは14公演もあったのに、気付けばファイナルの埼玉公演からもう2ヶ月も経っている。あの時Liella!と交わした「また会おうね」の約束は4thライブツアーへと確かに続いているけれど、もう3rdライブツアーの時間は戻ってこない。ずっと一緒にいたいんだけれど、「ずっと」は続かないんです。「また3rdライブツアーをやって欲しい!」「あの空間に戻りたい」とついつい口に出してしまうけれど、時間を巻き戻せないことはもう十分に分かっている。少なくとも、僕はこの「ずっと一緒にいたい」というフレーズを聞く度に、 3rdライブツアーの楽しい思い出とは別に、もう戻れないという事実を改めて受け入れていくような感覚で受け取っています。残酷かもしれないけれど、どんなに願ったとしてもいつかは楽しかったその瞬間を過去という思い出に変えて、前へ前へと進み続けるしかないのです。

これまで書いてきたように、自分の気持ちを言葉にした上で『星屑クルージング』を振り返った時に、可可ちゃん、Liella!と一緒に僕らが進み続けているこの日々が確かにこの曲には記録されているから、こんなにも気持ちを寄り添わせたくなるんです。この曲を聴く度に、Liella!と歩んできたこれまでがふっと込み上げてくるんです。

これを書きながら、いつかをやってくるであろう「終着点」を思ってめちゃくちゃ悲しくなってしまったけれど、でも、そんないつかを迎えた時に「Liella!と過ごしてきた時間って楽しかったな!」「良い思い出しかないね!」と真っ直ぐな気持ちで受け止めたい。そして、終着点を迎えた先でこの曲を聴いた時に今を駆け抜けている自分の気持ち、Liella!と作ってきた思い出を鮮明に思い出せると良いなと思っています。ただ、そんな未来はまだまだ先だし、迎えるつもりは全くないから変わらず可可ちゃん、そして、Liella!と今この瞬間を進んでいきたいです。少しでも長くLiella!といられますように。

▼注釈
注1〜注4 Liella! 『星屑クルージング』作詞 宮嶋淳子


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