[.LIVE PV] 太陽系デスコ の技術解説

太陽系デスコ

1.はじめに

 こちらは、先日投稿した「[.LIVE PV]太陽系デスコ」 の技術解説になります。ニコニコYoutubeに上げているので、未視聴の方は是非見てください。この作品では、MMD × モーショングラフィックスという珍しい組み合わせを実験的にやってみたので、その辺りを中心に解説します。また、一部小ネタなどもいくつか紹介するつもりです。一応画像など載せるので権利表記しますね… (C)Appland, Inc. (c)Siro YouTuber (c)Virtual YouTuber ©App Land ©KLabGames モーションは粉吹きスティック様です。

2.モーショングラフィックスって何?

 ニコニコのコメント見たりTwitter見てたらあまりモーショングラフィックスのことを分かってない人が多いので、説明します。モーショングラフィックスとはグラフィックをモーションすることです。だから基本的にはCGが動いてたらモーショングラフィックスです。また、狭義的ではありますが、幾何学的な図形や文字が動くことを特にモーショングラフィックスと呼ぶ傾向が強いです。またもう少し専門的な話になりますが、今回のPVのような文字モーションをキネティックタイポグラフィ、略してキネポと呼びます。

3.使用ソフト

 モデルとモーションをMMD、ほとんどの背景アニメーションをAfterEffectsでやっています。後は冒頭のタイトルが出てくるところの中心の星みたいなのはAviutlのgetcolor、周りのアイコンを切り抜くのにGIMP、「ナーナーナー」のところのキャラクターと一部タイポグラフィにIllastratorを使っています。そしてキモとなる一部カメラデータの同期にMMD2AEを使用しています。ちなみにラスサビ前のシロちゃんのシーンはAE PluginのParticularです…

4.MMDとAEの連携について

 前置きがけっこう長くなりましたが、皆さんが気になるであろう本題に入ります。先にネタ晴らしをしておきますが、MMDモデルと文字・星オブジェクトは同一3D空間上にはありません。そういう風にみえるように工夫しているだけです。では、カメラの説明してから、3つの方法を書いていきたいと思います。

4.1.カメラについての予備知識

いろいろ説明する前に、カメラについての説明を一つ。MMDを触っている方、Aviutlのpararellcameraというscriptを入れている方ならわかるんですが、カメラの動きかたには2種類あります。一つは、目標を中心にカメラを動かす「中心点移動」、もう一つはカメラ自体を平行に動かす「平行移動」の二種類です。AEでいうところの「1ノードカメラ」と「2ノードカメラ」ですね。今回の映像では、このカメラの動きかたで全然作業が変わります。

キャプチャ

4.2.カメラがXY平面上で平行移動する場合

 これは簡単です。MMDでカメラを正面で撮ったものを出力して、これをAEの3D空間上に置くだけです。そう実はこのカメラの動きならば、奥行きが0でもけっこう騙せますし、AE側でカメラモーションを作れます。以下の画像見ればわかりますがこうなってます。このぐらいなら誰でもできるし、そんなにむずかしくないです。右のナゾの枠はカメラです。

画像3

4.3.カメラをXZ、YZ平面上で平行移動する場合

これはあの斜めのシーンを作るときの解説です。これもそんなにむずかしくないです。MMDで任意の角度でカメラを傾けて出力し、AE側のカメラでもその角度にしています。MMD動画素材とカメラが平行であれば、問題はないんです。

画像4

4.4.カメラを目標点移動する場合

 これが今回のキモです。この目標点移動では、MMD動画素材とカメラの角度が1フレーム毎に変わるので、4.2.のやり方ではできません。そこで、MMD上でカメラワークを作成し、そのカメラデータをAEに同期させて疑似的にAEの空間上にMMDモデルがあるように見せています。そこで使用するのがこの「MMD2AE」(sm9866414)というツールです。これはMMDのカメラモーションデータをAEのscriptに変換するソフトで、このscriptをAEで実行することでMMDカメラと同じモーションをするカメラが作成されます。これを元にアニメーションを作り、上からMMD動画素材を置いています。なのでこの場合はMMD動画素材は3D空間上にはありません。

画像5

 「じゃあこの方法で全部やればよくない?」と思うかもしれませんが、なかなかそうもいかないです。4.2.の方法だと、カメラワークをAE側で作れるのでとても楽なんですが、この方法はMMD上でカメラワークを作らなきゃいけないので、AEで作る段階になって「もう少しカメラ近づいてほしいな」ってなったらもう一回出力しなきゃならないのです。ラスサビの「二人の銀河で綺羅めいた 星ッ!」のところはそれが上手くいかなくて5回くらい出力しなおしています。あと一つ書き忘れてましたが、カメラがZ軸上を平行移動する場合もこの方法を使わないとちょっと違和感が生まれます。

ちなみに、この方法Aviutlじゃできないじゃん!っていう方いると思うんですが、一応方法はあります。ティムさんのこちらのスクリプト(sm16630776)を使えばできます。ただ相当前に試してみたんですけどけっこう重いのがキツイところですね。

5.その他小ネタ

ここでは動画内の小ネタや、制作中の諸事情を書いていこうと思います。こういうの書きたかった!

今回のメンバーカラーは僕のオリジナルです。.LIVE全員にオリジナルカラーがあることは知ってたんですけど、配色上の理由だったり、色のバラツキなどの理由で僕のオリジナルになっています。

ラスサビのところの星配置は星座をもとにしています。アイドル部各メンバーはそれぞれの星座、メリーさんは「13番目の星座」の蛇つかい座、シロちゃんはいるか座(調べてみたらあったw)、「星ッ!」の前のシロちゃんと馬のところはペガサス座です。星の大きさとか位置はデザイン上ちょっと変えたりしています。これニコニコの星座詳しい兄貴とか指摘してくれるかなーと思ってたんですけど誰も言ってませんでしたねw

・ラスサビ後の「オーオオー」のところは年末動画の組み合わせです。流石にこれは気づいてくれている方多かったですね。

・メンバーが出てくる順番にはある程度メッセージ性があります。正確には「あった」ですが。「誰がどこに出るのか」や「どの順番で出るのか」はある程度はメッセージ性がありました。完成版ではいろいろと崩れましたが。その理由は最後までこのnoteを見ると分かります。

MMDのエフェクトは、Ray-MMDとDippenを使用しています。これ作る以前はMMDのエフェクトは全く勉強していなかったのでなかなか苦労しました。色をあまりばらつかせたくなったので、陰と輪郭線にメンバーカラーを入れることで色の統一感を強調しています。

ラスサビのスピード感はMMDではたぶんできません。これは、MMDの補完曲線、Aviutlのベジエ軌道を使ったことがある方なら理解できる話だと思います。カメラのイージング、つまり緩急はこうしてAEでもGraphEditorという機能を使って制御するんですが、今回の映像では従来のベジエ軌道と違って、3点で制御しているところが多いんです。普通2点で制御するところを3点でやることによってイージングの自由度を向上させています。なので、MMDではありえないような急なイージングもこのようにして可能にしています。ただ、逆に言うと調整しなきゃいけないハンドルが2倍になるのでそれだけ手間になるんですけどね…w。MotionGraphicerはこういうところでものすごく凝るんです。

キャプチャ

・ラスサビのナゾのヌルヌル感はカメラワークを工夫しています。ラスサビの二言ぐらいの歌詞で次に切り替わっていくところは、カメラ移動の方向を切り替える前と後で同じにすることでスッと切り替わるようになっています。最初はなんかトランジションいれようかなと思っていたんですけど、これやってみたら意外といい感じになったので良かったです。

・パーティクルが舞ってシロちゃんが一人で踊るシーン、実はけっこう凝ってます。シロちゃんがだんだん鮮やかさをフェードインさせるんですけど、あそこは輝度情報をもとに彩度0のMMD動画素材をマスクすることで、暗い部分からだんだん現れていくようになっています。と言ってもちょっと分かりにくい?MMDではできない表現ではあります。

・カメラの速度は盛り上がりを意識して速度を考えています。落ち着いたところではゆっくりと、サビは早めに、とけっこう考えてますね。

・文字の組立アニメーションは脳筋です。めめめのところとかちえりちゃんの「全」とかは組み立ててます。これ「どうやってやるんだろう」って言われれることあるんですが、脳筋です。一画、一部分、全部パスを整理して作っています。まぁAviUtlで全部マスクするよりはいくらかやりやすくなった方なんですが。でもこのぐらいの作るのはけっこう楽しいので個人的には好きですw。めめめの部分をキャラクター&カメラ無しのものを貼っておきます。参考になれば。

・シーンが切り替わってフェードインしてくるところ、各メンバーの個性に合わせた特徴的なものになっています。例えばあずきちだったらなんか虫っぽいものをw。一瞬なのでよく見えないかもしれませんが、ナゾの凝りかたをしています。これをやるのに3レイヤーぐらい使ってけっこう複雑なんですが、こういうの考えるのけっこう楽しいw

キャプチャ

・AEの色調補正はすごいぞ!。MMDで出力した動画素材をAEでカラーグレーディングしてるんですが、AEの色調補正はめちゃくちゃすごい。デフォルトの機能だけでこのぐらいまでできます。5万円くらいの「looks」っていうプラグイン買うともっとすごいらしいんですが、流石に手は伸びません…。1枚目が補正前、2枚目は補正後です。グロウエフェクトに「DeepGlow」という有料プラグイン使ってますが、ほとんどはデフォルトの「Lumitri カラー」で調整しています。

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・MMD動画素材の管理が大変! 上のMMDとAEの連携方法見ればわかるんですが、カメラのモーションによって毎回書き出さなきゃならないんですよね。それをフレーム単位で管理して書き出すのでけっこうめんどくさかったです。ちなみに基本的に3940×2160の4K画質の未圧縮Aviで出力する(カメラ近づけた時に画質が悪くならないように)ので、容量がヤバくなります。下の画像は他の動画のMMD動画素材も入ってるんですが、このファイルだけで1TBぐらい食ってますね。そろそろ消しますが...

キャプチャ

6.最後に

 最後になりますが、今回の作品を作ろうと思ったきっかけ、というか映像を勉強しようと思ったきっかけの一つなんですがこちらの作品を紹介します。それはMAOさんの「【A】diction」(sm33775496)です。この作品を見て、「自分もこういうの作ってみたいな」という思いができ、そこから一年ほど映像を勉強してこのようなものが作れました。しかし、今回のPV、個人的な満足度としてはそこまで高くないです。9,10月の技術で作ったものに後から雰囲気を変えずに付け足しているので、少し縛られている感はあります。もう一度一から作るとするならもっと変わったものになると思います。まぁ作りませんが...。何が言いたいかっていうと、次回作にご期待ください!っていう話です!

7.追記

こちらのリンクにて、この作品のプロトタイプを限定公開しています。ご興味ある方はご視聴ください。伝えたいことはこの動画の説明欄にあります。9,10月に制作していたっていうことは当然この二人の分もあるわけで、どうしてもお蔵入りというわけにもいかなかったのでこういうことにしました。ホントは2/10の数日前に完成版を公開、そして2/10にこのプロトタイプを公開っていう形を取りたかったんですけど、進捗がなかなか進まなくてギリギリになってしまったのが大きなミスかなと...



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