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しょこたん⑦
"あの人誰?""しょこたんの彼氏""しょこたんベルト外されたの?""自慢してたよね""彼氏にプレゼントされたってヤツ?"
入院患者もいるようだ。
しょこたんは下を向いてニヤニヤしてる。
お母さんに手を引かれ、ピアノの横にやってきた。
「翔子、大丈夫?人が来ちゃったからもう終わりに…」
[私の彼氏が私の歌、歌ってくれるの。私は彼女だよ]
集まった人達の方を見ながら、しょこたんが話す。
曲を作りながら歌うなんて、俺に出来るだろうか?
イメージだ、誰がいる?綾戸さんだ!
![](https://assets.st-note.com/img/1698614914520-tSNPS5eE66.png?width=1200)
綾戸さんみたいにメロディーと交互に歌えば、いけるはず!
「お騒がせします。1曲だけ、【可愛い翔子】歌います。聴いてください」
"色が白くて真っ黒なボブ ぷにった姿はパンダのよう 黙っていても人が集まる 少し内気な女の子 ちょこちょこ歩いてニヤリと笑う 明日を夢見る女の子…"
![](https://assets.st-note.com/img/1698614800102-DVreKJi3ni.jpg?width=1200)
看護師さんに誘導され、患者さん達は出て行った。
しょこたんも看護師さんと一緒に病棟に帰ることになった。
これが最後だとわかった。
「しょこたん、ありがとう!元気になってね。今日でお別れなんだ、ごめんね」
しょこたんの目は上を向いていた。
看護師さんに手をとられると、振り向くことなく歩き出した。
「元気になって、いい彼氏見つけてね!」
お母さんに頭を下げ、僕は病院の外に出た。
お母さんも僕に頭を下げてくれた。
なんて無責任なんだろう。
許されない恋は、やっぱり許されなかった。
無力で無責任な自分に泣くしかなかった。
2日後、しょこたんは山間部にある、完全閉鎖型病棟の病院に移った。
音楽療法で高齢者施設に行くと、イベントカレンダーの隅に小さな写真がいくつか貼ってあるのを見つけた。
「この写真、いつ撮ったんですか?」
『あぁ、だいぶ前に辞めた人が撮ってたみたい。しょこたんだ、思い出した』
施設を出るときに靴を履く、僕の写真だった。
--了--
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