エッセイ

晶文社で書かせてもらっているエッセイのようなものを更新してもらいました。

今回は二回目で「美味しいもの」です。

文章を書くことにいつも疑問がある。
文章だけでなく、話をすることにも。
読むのはいいし、他人の話を聞くのにはあまり疑問を持つことはない。
好き嫌いがあるだけで。

『声をかける』のあとに試しに書いてみた幾つかの文章を「こういうのってどうですか?」と編集者さんに見てもらって、もともとその名の通りスクラップブックだからと、いくつかの文章を掲載していただくことになった。
今回の「美味しいもの」はそれからまた手を入れたもの。

上のこととは全く関係ないけど、今まで意識の上では余計なものを取り除こうと努めてきた。
生活の中でしている余計なことをやめ、心身の余計な緊張を抜き……という具合に。
しかし、余計なことをやめるためや、余計な緊張を抜くために始めたことが、また余計なことかもしれなかったりする。
そんな感じで巡り巡って、今はいつかきっと捨てるだろうと思って余計かもしれないことを思い切ってするようになった。

文章を書くことは余計なことであるような気がして、いつも思い留まる。
それで書くのをやめながら好きな本を読む。そうするとまた思い浮かんで書きたくなる。
書いたものを見返してみて、また余計なものが見つかるので削っていったり、見方などを変えて書いたものを書き換えていく。

これでいいかなと思ったものも、なんか違うと思ったり、そもそも書かなくてよかったんじゃないかと思ったり、また更に時間が経つと、もうすっかり忘れていた頃の写真が出てきたときのように、その文体が醸し出す空気感にそうでしかありえなかったもの、もうそのように書こうと思っても書けないものを感じられたり。

この「美味しいもの」の中にも自分の過ぎていった感性みたいなものがある。
シンプルに言えば、特別なものを求めているというような。

もう少し、立ち止まるときは立ち止まり、動くときは動くということをそれぞれのときに専念できる気がしている。それはできないことをはっきりと露わにして、なにもしないときは本当になにもしないようにするというような。

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?