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DTMにミニPC!良い?悪い?【Minisforum UM780 XTX】

皆様ごきげんよう。
LLSY music & V chのレーシーです。

突然ですが私は昔ネットゲーマーでした。
なのでデスクトップPCを自作したり色々してたのですがその後航海士に就職。1年の1/3ほどしか家に帰ってこれないということでマイニング全盛期にグラボ含めケースの中身を売却、最小構成だけ残してドスパラのノートPCを購入していました。

intelのホワイトブックだったようで2019年発売でi7-9750HにRTX2070Q Max、メモリは今だと少し少なさを感じますが当時は割と標準的だった16GBで13万を切る価格。
SSDはQLCだったりコストダウンの跡は見えますが、ディスプレイは144Hzだったりバランスの取れたマシンだったとは思います。
DTMを始めてからDドライブ用SSDを増設したりメモリを64GBに換装したりしていましたが、配信も始めたりしたことでさすがにCPUのパワー不足を感じるようになってきて乗り換えを検討し始めました。

ケースは残っているけどフルタワーデスクトップはケースがでかすぎて正直組み直したくない。しかもあと1年半は船に乗るので持ち運びできるものがいい、、
モバイルモニターもあるしMac miniって正直OSやワッパがどうこうとかじゃなくあのサイズ感が一番の売りだよなぁとかうらやましく見ていたのですが、どうやら最近のWindows ミニPCもなかなか良いみたい。
ということでえいやと買ってみました。
Minisforum UM780 XTX

謎の虎マークでだいぶ損してる気はするんですが、これはエッチングを挟み込んで天板のLEDを光らせているだけなので、何も挟まずBiosでオフにしてしまえばいいだけです。
メモリ次第ではベアボーンでもいいかなと思ったのですが、64GB+1T SSD構成で11万位なのでこの構成で買うことに。

はじめてのらいぜん

CPUはAMD Ryzen 7840HS
末尾SのZen4のノートPC向け省電力モデル
SDPは35Wでこれまでのノート向けCPUよりももう少し消費電力が小さくなっていて、ベース3.8Ghzの8コア。もはや一昔前のミドルクラスデスクトップ用CPUと遜色ない性能です。
以前使用していたノートのCore i7 9750Hがベース2.6GHzの6コアなので4年という期間がPCにとってはどれほど大きいものかがうかがえます。

ただし私の今使っているオーディオインターフェイスはThunderbolt3のみの動作。Thunderboltはintel主導の規格でAMDチップセットで対応しているMBはあまり多くないです。
とはいってもUSB4はThunderbolt3ベースで統合された規格。でも来年にはIFも買い替え予定だし、何とかならなかったらiFiのDACとTR-8SやAmperoでしのぐかと思ってはいました。これに関しては後述します。

GPUはRadeon 780M
GTX1060Ti→RTX2070Q-Max(mobile)と乗り継いできたのでGTX1650相当と呼ばれる本機はちょっとこれまでに比べると弱くなります。
ただ簡単な動画編集しかしないし、オンボードと考えるとちょっとすさまじいですね。
core i5 6600 + GTX1060で組んでた時は500W電源入れていましたが、付属の電源は120Wです。

厚手の紙箱でいい質感です

ということで届きました!コンパクトな箱です。

コンパクトエフェクター+αくらいのサイズ

本体。いい感じに小さいです。
前面?にUSB4 (40Gbps PDとPD Alt対応)に USB 3.2 Gen2 (10Gbps)が2つ、背面にUSB4, USB 3.2 Gen2が2つあります。
映像はDisplay portとHDMIが一つずつ、LANがふたつ
このサイズで!?
もうゲームや3DみたいにデッカイGPU長時間回すような用途じゃなければこんなんでいいんじゃないの?ってなってきますね、、

パネル前面。USB3.2 Gen2にUSB4 高速な規格で揃ってくれてるのはありがたいです。
背面。ヒートシンク部はしっかり開いていて、2.5GLANが二つ、HDMIにDisplyaPort、USB3.2 Gen2が二つにUSB4、M.2スロットを一つ使ってPCIe接続を引っ張ってこれるOCulink(付属のカードを差し込んで使う)があります。
サイドパネルは両側とも大きく空いた形。ケースファン一つで最大限冷やせるようなケースになっている。
旧ゲーミングPCのACアダプタ比較。230Wのアダプタはさすがにデカくて重かったですが120Wアダプタだとだいぶコンパクトになりました。

ということで早速立ち上げてドライバ類の更新をしていきます。
AMDはAMD Software adrenalineというやつでドライバ類の一括管理ができるみたいですね。
チップセットドライバなんかはMinisforumのホームページにまとめてあります。リリースノートを見るとしっかり最新版に更新してあるようです。

Dドライブの移植をしていきましょう。
天板はマグネットでくっついてるのでパコっと開けると、ネジ止めされた仕切りがもう一つ出てきます。
この部分がLEDライトになっていて、天板との間にエッチングを挟むことでケースに模様を浮き出させることができるみたいですね。

ケースファン用の4ピンが2本あるので勢いよく蓋を外してちぎらないようにしよう
こっちにももう一つ

外すとケースファンのコネクタが2本ついてるので外します。
メモリとSSDにアクセスできるようになっています。
NVMe SSDはKingston。SEQリード5000MB/sで変にケチってない今時って感じです。

メモリもKingston。32GBモデルだとCrucialの16x2だったという話もあるので容量やロットで手に入りやすいものを使ってるのかもしれません。Zen4はDDR5のみです。
上下階段状に取り付けられていますが、メモリの間にサーマルパッドを挟み込んでヒートシンクが取り付けてあります。

M.2スロットは一つ空きがあります。
ちなみに付属品にOculinkカードというものがあって、M.2の空きスロットを占有することで外部GPUを増設できる。ざっと斜め読みした感じはPCIeをそのまま外に引っ張り出してくるようなイメージのものみたい。

旧PCから引っ張り出してきたADATAの2TB SSDをそのまま移植。
去年のYMTC騒動で激安になってた時に買ったものでいわゆる闇鍋NANDなので早々にダメになっても泣かないとは思ってたんだけれど、1年以上音源格納用で使っても平気な顔してるのでほっと一息。

見えにくいですがM.2位置にアルミブロックがあってサーマルパッドが貼ってあり、ケースファンを半分ふさぐような形で取り付けられています。

ちなみにケース上面はM.2スロット位置にサーマルパッドが貼ってあってケースファンにぺったりくっついてる。
ケース横も完全に空いた構造になっていて、小さなスペースながらかなり冷却には気を使っているように見える。旧ノートPCだとM.2周りの冷却はケースにサーマルパッドが直付けされているだけで、時々Dドライブの速度が急低下することがありました。
やはりちゃんと冷却が考えられていることは、カタログスペック以上に大切です。

旧ノートPCのM.2スロット。ケース側には申し訳程度にサーマルパッドが貼ってあったが上のケースファンは右上を這ってるヒートシンクを冷やすためのもの。

ということでプラグイン等の移行に入っていきます。
丸二日かかったのですが書き出すとあまりにも大変なので飛ばします。。
みんなはちゃんとライセンス類はリストにして管理しておこうね。
ちなみに私の使っているDAWのBitwig Studioはプラグインが行方不明でもプロジェクトは立ち上がってくれるので、そこから逆に辿っていきました。

へえへえ言いながら移行作業を終え色々プロジェクトを立ち上げてみます。
私は上の写真類を見てもらえばわかるように旧環境も今も内蔵SSD2つ(Dドライブは移植したので同じもの)を使っていて、プラグイン自体はCに、音源部分はDに格納しています。
私が好きでよく使うUVIのFalconのうち、Vintage Vaultはサンプリング音源なので各プリセットはDドライブから読み込んできます。

旧PCだとプリセットの読み込み時間は平均して3秒程度、熱対策が上記の感じだったのでサーマルスロットリングが発生していると思しき時には10秒かそれ以上程度かかっていました。

Cドライブベンチ

標準搭載のCドライブで、DAWでプロジェクト一つとブラウザを立ち上げている状態でのベンチ。しっかりはやい
ソフトやプラグインの立ち上げでもたつくことは全くありません。

Dドライブベンチ

Dドライブのベンチ。仕様はPCIe 3のでシーケンシャルリード公称2000Mbpsなのでシステムにするには心もとないですが、同状況で測ってみたところ2500Mbpsでています。
DTM中も40~48℃くらいで安定しています。あたり個体だったのかもしれません。この状態でランダム400Mbpsは出ているっぽそうなので、Vintage Vaultのプリセットだと1秒かからないくらいで呼び出してくれます。
この辺りはやはりM.2スロットに対する熱対策が効いていると思います。
サンプリング音源を多用する場合メモリもそうですがストレージの速度は非常に重要です。

Sandiskのあれ

こちらは2TBの外付けSSDをUSB3.2ポートに接続したときのベンチです。
外付けSSDとしては一番人気であろうSandiskのアレです。USB4ポートがベストでしょうけれど、私はオーディオインターフェイスとサブモニタで埋まってしまうのでTypeAポートに接続しています。ケーブルは付属のものなのでUSB3.2 Gen2で1000Mbpsでるという謳い文句でしたが実測は560Mbps程度。
Crystaldiskinfoで見ると転送モードがSATA600になっているのでこれを信じるなら560Mbpsは上々ですが、手持ちのケーブルをいくつか試してもこれなのでちょっとよくわかりません。
本体は樹脂っぽいのでアルミケースに比べると放熱性は劣りそうですが、2年程度使っていて特にサーマルスロットリングのような症状に遭遇したことがないのはさすがのSandiskコントローラーといったところでしょうか。


先ほどの画像。ケーズのネジを止めることによりSSDがサーマルパッドと密着し、アルミブロックを通ってファンにくっついているので実質SSD用のアクティブクーラーです。大容量のサンプルを出し入れするDTMにおいてはパーツスペック以上にストレージとメモリの冷却は重要。

CPU周りの比較をしてみます。
最近使っていたプロジェクトを一つ呼び出してみます。
20トラック位だけですが音源は立ち上げっぱなしでプラグインもそれなりに刺さってます。
マスターにはL316とGod Particleといういつも使ってる組み合わせを。GPU性能が効いてくるアナライザもおいてみます。
GodParticleがなかなか重量級です。

この状態で旧ノートPCだとDSPパフォーマンスグラフが数秒に一度スパイクで100%を叩きます。電源設定スタンダードでCPU使用率が80%前後、CPU温度は75℃近くまで上昇します。
新PCで同じプロジェクトを使用するとCPU使用率は45~50%前後、温度は47~50℃程度に収まります。
かなり小さな筐体でケースファンも小型のものが一つですが、しっかり熱対策をやってることとサイドも開けていることから思っていた以上に冷えます。
ノートPCだと素のスペックは悪くなくても、どうしてもファンの心もとなさや置き方の関係で負荷がかかってしまうと温度が上がって性能が維持できないということが多かったですが、実際背面を開けてもやはり「ゲーミング」というところに主軸を置いていてGPUをメインで冷やすような構造になっています(ゲーミングPCなので当たり前ですが)
どうしてもストレージやメモリ回りが後回しになってクリエイター用途としては若干合ってない感がありましたが、本機ではドライブからの読み出し回数が多いDTM(特にサンプリング音源)系との相性の良さを感じます。
ただスペースの関係から片面実装SSDのほうがいい感じはします。
最近だとYMTC製NANDでPCIe 4の片面実装4TBとかいうSSDも価格が低めで登場してきているので、サンプリング音源大量運用の方はこういったものでもいいかもしれません。

GPUはオンボードですがRadeon780m、GTX1650よりは少し下ということで、私が昔使っていたGTX1060Tiと同じくらいでしょうか(GPUメモリはだいぶ違うと思いますが)
さすがにゲームを、、となるとFullHDで設定を落として何とかというところでしょうけれど、簡単な動画編集やDTMのアナライザー程度ではビクともしません。

Minisforumというメーカーに関しては広告や依頼レビューで押していることもあり人によってはいろいろと感じる部分があるかもしれませんが、製品自体は実用性を考えた設計や初期レビューで散見された部分が改良されていたりと中国メーカーらしいフットワークの軽さが印象的です。
個人的にゲーム用途だと最低でもミニタワー以上で徹底して冷やす構造にしないとと思う部分はありますが、DTMという限定した用途でいくと常時高負荷なGPUをメインに考えるゲーミングPCだと少し嚙み合わない部分もあるのは事実です。

ゲームや動画編集、イラスト、写真編集用に向いたクリエイターPCは市場にたくさんありますが、基本的に求める性能がGPUに偏っており、DTM用としてほしいCPU性能を求めると結局高価なモデルに行かざるをえません。
そこからメモリ増設でプラスの出費。持て余してしまう高性能GPUは大電力&発熱で、限られたエアフローはGPUを冷やす方向に向きがちです。
しかし特にITBでのDTMで重要なのはCPU性能とメモリ・ストレージの容量と速度。大容量のサンプルを頻繁に出し入れするDTMにおいてはパーツスペック以上にストレージとメモリの冷却が重要です。
結局フルタワー・セミタワーで自作してしまうのが一番、とはいえDTMはPCからのノイズとの戦いです。広いデスクや足元スペースに大きなPCを置けるゲーム用途と違い、DTMは基本デスクスペースを圧迫するうえデスク上や機材の近くにPCを置くことは基本したくありません。置き場の問題であったりゲーム用途とはまた全然違う制約が出てきます。
ノートPCだと冷却性のバランスに難がでやすく、自作だとケースサイズとスペースが悩ましい。そんなわがままなDTMerにミニPCはぴったり合うのかなと思いました。

ちなみにDTM用途だと真っ先にMac Miniが候補としてあがると思いますが、Ryzen 7840HSをどんぶり勘定でM2とM2 proの間位だと考えると、
M2無印 Mac mini : メモリ24GB ストレージ1TBは20万
10コアM2 pro : メモリ32GB ストレージ1TBで27万
Ryzen 7840HS : メモリ64GB ストレージ1TB 11万
位の比較になります。
さすがに価格差が大きいような気もしますが、MacはDAWとしてはあまりにもコスパが良すぎるLogicがあるというところと、無印M2のMac miniの消費電力がアイドル時7W、最大で50Wというところ。メモリの帯域幅がアホほどでかいところ、さらにMacであるという事実によってDTM用途に限っては10万以上の差を覆してなお「Mac miniのがコスパいいかもな、、」と思わさせるだけのものがあります。
UM780TXTのDTM的な最大の利点は何度も繰り返すように、NVMeでSSDを1枚追加できて優れた冷却性能を持たせることができるというところです。
最近だと4TBでPCIe4のSSDが3万程度で買えてしまうというのも大きいです。安定して4000Mbps前後で読み込めるSSDがDドライブとしてあればサンプリング音源の扱いはものすごくやりやすくなると思います。
いくら高速なThunderboltインターフェイスに外付けSSDをつなげても、結局熱くなってしまえば元も子もありません。また最大メモリサイズがM2proだと32GBに制限されてしまうのも人によっては苦しいところかもしれません。

ちなみにこのシリーズには上位のUM790ProというのがあってRyzen 7940HSを搭載していますが、コアもスレッドも同じでベースクロックが3.8Ghzか4.0GHzになっています。
価格差が3万ほどあるので、ベースクロック5%の差にそこまで出すかどうかはなやみどころです。
UM780TXTにしておいて差額で高速なDドライブを入れたりディスプレイを買うというのもいい選択肢かもしれません。

パソコン買い換えはいつの時代も悩ましいですが、このミニPCはしっかり冷えるストレージに高性能なCPUと標準で64GBのメモリ。ちょっとした動画編集に困らないRadeon 680M。充実したインターフェイス。そしてこれがこの小さな筐体に詰まって電源も120Wと省電力&コンパクトなACアダプタ。
コスパ良くDTM用のPCがほしいならなかなかいい選択肢なのではないかなと思いました。
ちなみにゲーミングノートに慣れてるとめちゃくちゃ静かです。
デスクを組みなおすまでのつなぎとして買いましたが、十分メイン機としてやっていけそうです。


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