ミキサーの基本!AG03を使いこなそう!
皆様ごきげんよう、LLSY music & V ch.のレーシーです。
今回は今更過ぎるのですが大定番ストリーミング用ミキサーのAG03について書いていきます。
AGシリーズでなくともミキサーの基本にも触れていきますよ。
AGシリーズについてはあまりにも定番すぎてもう批判しか見かけないというか、確かにオーディオインターフェイスとしてみれば音質もいまいちだし、私の周りでもAG使ってるけど乗り換えたい!という人が多いです。
確かに歌を録音したりとかには心もとないですし、定番のAG03, AT2020の組み合わせとかだとパッと聞くだけで分かるくらい特徴的な音になってしまいます。
ただ配信用としてみれば、低価格高機能で非常に優秀なので、改めてどう使っていけばいいのか。どう考えればいいのかを知っていきましょう。
ゲインとボリューム
おそらく多くの人が迷いやすいのがここです。
AG03には音量を変化させるつまみがチャンネルゲイン、フェーダー、マスターボリュームと3つあります。
わかりにくい!が1ch.だけなのでそう思うだけで、通常のミキサーとしては最低限の仕様です。
ちなみに必ずではないんですが、音楽の世界でゲインといえばアンプ、つまり音を増幅する部分、ボリュームは抵抗、つまり音を小さくするものとして使い分けられることが多いです。
ミキサーのおしごとと音の流れ
まず一般的なミキサーを考えてみましょう。
いろいろな機能を持つミキサーも多いですが、シンプルに音を混ぜて出すだけのものを考えてみます。
同じヤマハのMG12というミキサーを例にとってみましょう。
左からチャンネルが1,2,3,4,ステレオで5/6,7/8,9/10,11/12と並んでいます。
何も知らずとも、たぶんこのそれぞれのチャンネルにマイクや楽器を繋いで音を混ぜるんだろうなぁ、、というのは想像できます。
こうしてみるとミキサーの1chというのは縦に長いものだということがわかります。
ミキサーのパネルは音の流れと連動しています。
奥(写真でいうと上)にマイクや楽器を繋いで、音はそのまま下に向かって流れます。
いろいろなつまみを経由して最終的に一番下のフェーダーまでたどり着きます。
このように多くのミキサーでは縦長のチャンネルが並んで構成されるので、この一連の流れをチャンネルストリップと呼びます。
SSL9000kの1chを抜き出した写真をReverbからお借りしました。
このように信号の流れは物理的な構造に沿ったものとなります。
余談ですがここから派生してマイクプリアンプ+EQやコンプのような複合機材のことをまとめてチャンネルストリップと呼ぶことも多いです。
AG03はマイクインプットが一つかつ非常にコンパクトなためわかりにくいですが、あらためて見ると基本的なミキサーのつくりをしていることがわかります。
紫で囲った部分が1~3chになります。
マイクはまずマイクプリアンプを通る。
マイクというのは非常に出力が小さいので、いわゆるラインレベルまで音を大きくしてあげないといけません。
そのためにマイクプリアンプという部分で音を大きくします。
AG03にももちろん、マイクを繋ぐことのできる機材には必ず内蔵されています。
マイク信号の増幅量は1000倍とか1600倍に上ることもあるので、音質にものすごく影響する部分でもあります。
1万円を切るようなオーディオインターフェイスに内蔵されているものから、マイクプリアンプ単体で50万60万するものまで存在します。
ミキサーに搭載されているものはヘッドアンプ、HAなどと呼ばれることもあります。マイクを繋ぐことができないラインアンプのチャンネルもありますからね。
私が以前書いたいまさら聞けない配信音声のゲイン編でも書いていますが、まず機器にはそれぞれが持つ固有のノイズが存在します(ノイズフロア)。
シグナルとノイズの差のことをS/Nといいますが、このS/Nが大きければ大きいほどその機器のノイズは小さいということになります。
https://note.com/leshy555/n/n7b16054183f2
そしてこの考えは音声でも同じになります。
できるだけ音声をクリアに保つためには、質の良いマイクプリアンプでマイクの信号をしっかり持ち上げてあげる必要があります。 なのでまずマイクプリのゲインを上げます。
本来ならここはメーターを見て確認したいところ。ただ残念ながらAG03にはインプットメーターがありません。
Peakというランプがありますが、ここで確認します。
自分が出すであろう一番デカい音を出して、ギリギリピークにかからないくらい。それがベストなゲインです。
DSPで音を作るかどうか
AG03にはDSPが搭載されていて、コンプレッサーやEQなどをかけることができます。
通常のミキサーの多くにもインプットの後ろにコンプやEQなどが搭載されているのは先ほどのチャンネルストリップで見ましたね。
AGはスペースがない関係でつまみが出てないですが、Comp/EQとEffectのスイッチがついています。
ちなみに歌ってみたの録音をするときは極力ここはバイパスして録ります。
設定はPCのソフト側でいじります。
特にコンプは入力された音声に対してスレッショルドを調節しないといけないので、ゲインの設定が終わってから取り掛かりましょう。
コンプレッサーについてはぜひ過去の記事を参考にしてみてください。
https://note.com/leshy555/n/n83cadb8b082f
AGのマイクプリアンプはゲイン量が低くて困っている人も多いかもしれませんが、このコンプレッサーのメイクアップゲインを使うとさらに音量を稼ぐことができます。
ただしデジタルトリムになるので、どうしてもマイクプリで持ち上げるのとは差が出てしまうことは考慮しましょう。
ゲイン(マイクプリアンプ)で音を持ち上げて、チャンネルストリップで音を作れば次に待っているのはフェーダーです。
ゆにてぃってなんだ?
多くのオーディオインターフェイスでは、マイクはプリアンプでゲインアップしたらPCに送っておしまい、となりますがAG03はあくまでミキサー。
その工程が終わった後にフェーダーが控えています。
フェーダーは複数のチャンネルの音量バランスをとっていくところで、後半に控えているこのタイプはポストフェーダーと呼ばれることもあります。
フェーダーには0となる値、ユニティゲインという部分が存在します。
フェーダーはボリュームですので抵抗です。
トリムで音量を少しだけ持ち上げることもできますが、基本は減らしていく方向。
ユニティというのは音を増やしも減らしもしない位置で、多くのフェーダーでは0の値が割り振られています。
AG03のフェーダーには目盛りはついていますが数字が振ってありません。
目盛りが一つだけ太い線になっていますが、その位置までフェーダーを立ち上げます。
これでチャンネルストリップを通ってきた信号は大きくも小さくもならずにその先へ送られることになります。
1chしか使わないときは基本ユニティにしておきましょう。
もし配信中なんかにとっさに音量を変えたいとき、ゲインを触ってしまうとDSPのゲートやコンプに影響が出てしまうのでフェーダーで調節するのがかしこいやり方です。
PCへの送り出し
PCへの送り出し方法は真ん中のスイッチで切り替えます。
印象的なのはDry Ch.1-2という部分。
説明書にはゲイン後の音を直接取り出して送るとあります。
つまりミキサー部分を無視してCh1.2に送られた信号をゲインの後ろ側、(おそらく)コンプ等FXに入る前で取り出して送ってくれるのですね。
つまりマイクプリアンプとゲインを備えたよくあるオーディオインターフェイスとしての機能となります。
つまりこの時PCに送られる音はフェーダーの影響を受けません。
録音時にはこの方法がいいでしょう。
Input Mixはステレオmixされた音を送るとあります。つまりフェーダーでとったバランスの影響を受けます。
通常のミキサーと同じ働きですね。
例えばマイクをch1に、ギターやキーボードなどを2,3chに入れた時はフェーダー(ch.2,3はつまみですが)でバランスをとって、そのままPCに送れます。
マイク一本しか使わない場合このモードに意味はあるの?と思うかもしれませんが、AG03を手元に置いている場合ゲインやチャンネルストリップの設定を崩すことなくフェーダーのみで送り出し量を変えられます。
例えばOBSや通話に送る音量を上げたり下げたり、、ということがフェーダーで直感的に行えますね。
LoupbackはPCの再生音とAG03の音をミックスして送ります。
この時音量バランスは、下段真ん中のPCの絵が描いてあるつまみでループバックの音量を、マイクの音量をフェーダーでとることができます。
AG03をミキサー的な使い方してみる
AG03は名前の通り3chミキサーです。 改めて各セクションを色付けしてみたので見てみましょう。
紫で囲った部分は音が入ってくる部分。
マイクプリは1chのみ、2,3chはステレオチャンネルです。
ただし2chには入り口が二つあります。
ギターなどハイインピーダンスの楽器は所謂Inst入力に切り替える必要があります。
キーボードマークがついている側はラインインです。
マイク入力が2chにはありませんので、ギターやベースからDIを経由して入力することはできません。
ちょっと外れたところにあるヘッドセットのマイク入力はCh1と共用です。
自分の手持ちの機材に合わせて繋いでねというやつですね。
ヘッドセットが接続できるオーディオインターフェイスというのはかなり珍しいです。
実はAG03にはもう2ch入力があって、それがAUXです。AG03登場時はまだPC内部で完全にルーティングを完結したりするのが難しかったので、ここにスマホや音楽プレーヤーを繋いでBGMを掛けたりなんかに使われたと思います。
AUXはステレオミニプラグの受けになって、トリム等はないので繋ぐ先の機器で音量調節が必要です。
うまく使えばドラムパートやオケを流しながらマイクとギターを入れることとかもできますね。
緑はループバックです。つまみが一つでシンプル。
こうしてみると左下のフェーダー、その隣の2,3chのボリュームノブ、ループバックのボリュームノブの3つで音のバランスをとっていく、基本的なミキサーのレイアウトと同じだということがわかりますね。
残りは出力。オレンジで囲ったSPはスピーカー、つまり2系統のモニター出力です。
オーディオインターフェイスでRCA端子を備えているものは珍しいですが、小型のPCスピーカーなどはRCA端子が多いです。
必ずしもスピーカーに繋がなくとも、ライン受けの機器に繋ぐこともできます。
青のHPはヘッドホン。
普通のTRSと3.5mmミニプラグ(ヘッドセットのところにある)の2つがあります。
右下のマスターボリュームで音量を調節します。
ヘッドホンもスピーカーも端子が2種類ずつありますが、2系統あるわけではなくて1系統の出口が2種類の端子に分かれているという感じですね。
つまみや端子がたくさんあって面喰いそうになりますが、実際はかなりシンプルで最低限の機能を持ったミキサーになっていることがわかります。
mk2になって何が変わったの?
ずいぶんと長寿だったAG03ですが2022年にmk2が登場しました。
一番大きな変化はAUXが4極になったことでしょう。 これ実はかなりすごい進化なんですね。マイク付きの有線イヤホンみたいにスマホに音声を送れるということです。
デジタルではPC一台にしか繋げないですが、アナログでもう1台別のデバイスにつなげられるということ。
PCとスマホで同時配信をしたり、電話やLine等で通話に参加してもらうことができます。
今までこれができたのってTascamのModelシリーズくらいじゃないですかね、、
Chミュートがついたのもありがたいですね。
今までなかったの!?という感じですが、、
AG03のいいところ、よくないところ
いいところ
何といってもこの値段で複数の機器をまとめてPCに送れるところ。
mk2になってスマホ配信の幅が広がったのも大きいと思います。
よくないところ
マイクプリの質、ADDAの質、つまりシンプルに音質。
初代AG03の発売は2015年、もう10年近く前で、基本設計は当時の配信向けに仕上がっています。
今では特にYoutubeをメインにしたVtuber活動などでは、ハイパワーなマシンを使ってPC内部で音声のルーティングが完結することが当たり前になっています。
そういった環境で、AGの持つ多彩な機能を使わずマイクを1本立てるだけではあまり上手な使い方とは言えないなという感じになってきてしまいました。
特にマイクプリアンプが弱いのがかなりの泣き所です。
質もですがそもそものゲイン幅が低すぎてダイナミックマイクが使えず、低価格なラージのコンデンサマイクを使わざるを得ない。
よってコンデンサマイクのおいしい特性も使えず、環境音を拾いやすくノイズも大きいという事態に陥りがちです。
AGが悪いというよりは、設計と環境が合わなくなってきたといえるでしょう。
以前は性能的にも、ソフト的にもPC内でのみというのは難しかったように思われます。
なので外部の音楽プレーヤーからBGMを取り込めるAUX端子であったり、パネル上でミックスバランスをとれるレイアウトであったりが優先されたように思います。
現在はOBSをミキサーとして、複数信号受けてそちらでバランスを取るのが当たり前で、フィジカルでバランスを取るとなるとPC上のミキサーソフトを操作して行うというのが普通になってきました。(AG08やBridgecastがこのタイプです。ADDAを通る回数も減るし、音質、柔軟性ともに有利です。)
色々と要因はありましたが、ここ数年で低価格帯のオーディオインターフェイスは大きく様変わりしました。
元々オーディオインターフェイスはミュージシャンやスタジオのためのもの。
それがここ数年で配信向けの機能が盛り込まれていることが当たり前となってきました。
また"高音質"を謳う製品が増えたのも印象的です。
競争が激しくなることで限られたバジェットを単機能につぎ込む一芸に秀でた製品も多くなりました。(どうせマイク1本しか使わないんだろう、ということでインプットを1つに絞ったモデルまであります。限られた予算の中で極力高音質を目指そうと考えると、確かに合理的ですね)
PCでの配信に特化したモデルだと、後発のAG08やRolandのBridge Cast, PreSonusのRevelator ioなどの方が現代のPC配信環境にははるかにマッチしています。
ミキサー機能を備えるならTascamのModel12やZoomのLivetrackなんかはレコーダーやMTR機能まで兼用したごつ盛り仕様。特にlivetrackはネットでも活動するバンドマンにとっては必携になってきています。
逆にスマートフォンやタブレットを使って配信するよという方であれば、AGはかなり有力な選択肢になるでしょう。
ただ手軽という点ではAustrian audioのMi CreatorのようなUSBマイクや、DJIのような動画収録用のワイヤレスマイクもあるので、以前ほど「AG一人勝ち」ではなくなってきました。
そんな今だからこそ出来ること、苦手なことを知って上手な選び方をしたいですね。
今回は主に、すでにAG03を使っていて不満があったりうまく使えないな方を対象にした記事になりました。
どうしてもネガティブな印象になってしまいましたが、配信メインで考えた時には便利な機材であることに間違いはありません。
今一度AG03をしっかり理解して、使い続けるのか、別の製品に移るのか、ステップアップするのかを考えてみてもいいのかもしれません。
また、ミキサーを通して音の流れ、特にゲインステージングを考えることは音声を扱う限り必須ともいえるので、ぜひしっかりと考えてみてください。
次回はAG03とAKG C214という定番の組み合わせで録音した歌ってみたをミックスしてみる記事の予定です。
LLSY music
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