新・港村CAFÉ LIVE2011

喧騒ざわめくカフェ。ある時そこにアーティストがやって来る。艶やかな音色を奏で、優美に踊り、煌びやかなひとときを人々に与える。彼らは私たちに一瞬の夢を降り蒔いて、そして去ってゆく。それは映画「ラスト・タンゴ・イン・パリス」のワンシーン。

 舞台は新・港村Dゾーン。昼間は生のままの港湾の風景を、夜は遠くの仄かな港の灯りを借景としたカフェテリア。その空間には、有名建築家が設計しBankARTのスタッフが施工した未来の住宅が軒を連ねる。新・港村を訪れた人々にとっての憩いの場所。そこに13組ものアーティストがやって来て、奏で、歌い、踊り、私たちを魅了した。

 心血漲る技を見せつけ、震災を憂い、原発事故の怒りを詞に込め、恥かしげも無く自身を吐露し、我と彼に遊び戯れ、有無を言わさずに誰をも熱狂させ、我々を思考の淵に突き落とし、記憶への憧れを喚起し、優美な安らぎを与える。観客はそんなアーティストの姿を目撃し、ライヴの余韻の中で感じた何かを誰かと語り合う。それはかけがえの無い、一夜限りの夢の時間。

 こんなワンシーンがあった。off-Nibrollのリハーサルでのこと。一般営業の時間にリハーサルは進行。当然来場者の目線が気になるところだ。矢内原美邦さんが100もあろうかという小さな写真立てをアクティングエリアに並べているところに、一人の小さな女の子が彼女を手伝い始めた。彼女はその子と一緒にアルバムを並べ、一緒にリハーサルを進行した。アーティストがこの空間と対話し、咀嚼し、ここでしか生まれ得ない何かを創造する、というCAFÉ LIVEの精神が見えた瞬間だった。

日常の中にも芸術があり、非日常の中にも人生がある。13組のアーティストが繰り広げた夢の余韻、どうぞそのままに。

2012/3/14


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